「すべり症」の原因・症状はご存じですか? 若年層にも無関係ではないワケ【医師解説】

「すべり症」の原因・症状はご存じですか? 若年層にも無関係ではないワケ【医師解説】

「すべり症」というと、一般的には加齢を原因として発症することが多いというイメージがありますが、実は30代や40代の若い人にも起こることがあります。一体何が原因で起きるのか、どのような人がなりやすいのかなど、品川志匠会病院の須藤先生に詳しく聞かせてもらいました。

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監修医師:
須藤 梓(品川志匠会病院)

浜松医科大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院整形外科、関東労災病院、東京都立駒込病院、東京都立多摩総合医療センター、参宮橋脊椎外科病院整形外科部長などを経て、現在の品川志匠会病院整形外科部長に。日本専門医機構認定整形外科専門医、日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医、日本専門医機構認定脊椎脊髄外科専門医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医。

すべり症とは?

編集部

すべり症とはどのような疾患ですか?

須藤先生

主に腰の骨(腰椎)に起きる疾患で、文字通り、腰の骨が前後にすべることによって腰痛や下肢の痛み、しびれなどの症状が出現する状態のことをいいます。

編集部

どのような人が「すべり症」になりやすいのですか?

須藤先生

一般に、腰椎のすべり症は「腰椎変性すべり症」と「腰椎分離すべり症」の2つに分類されます。腰椎変性すべり症は加齢を原因として発症することが多く、特に、40歳以上の女性に見られることが多いとされています。一方、腰椎分離すべり症は発育期のスポーツなどが原因となり、成人後に発症することが多いとされています。

編集部

それぞれ原因が異なるのですね。

須藤先生

はい。腰椎変性すべり症は加齢とともに椎間板や靭帯などの組織が変性し、腰椎の安定性が失われることで腰の骨が前後にすべり、発症します。加齢のほか職業などによって、長期間にわたって腰に負荷がかかることが原因で発症することもあります。

編集部

腰椎分離すべり症はスポーツが原因とはどういうことでしょうか?

須藤先生

簡単にいうと、腰椎分離すべり症は「腰椎分離症」という疾患が原因となって発症します。腰椎分離症は、体が柔らかい中学生の頃などにジャンプや腰の回旋運動などを繰り返すことによって腰椎に負荷がかかり、腰椎の後方部分に亀裂が入ることで起こる疾患。椎弓という、骨の一部が分離してしまった状態です。若いうちは体幹の筋力があるので、椎弓の一部が分離しても筋力で背骨を支えることができますが、年齢が進むと少しずつ体幹の筋力が衰え、分離している骨が前方へ滑り始めます。こうした病態を、腰椎分離すべり症といいます。

腰椎分離すべり症の特徴と症状

編集部

腰椎分離すべり症は何歳くらいに多く見られるのですか?

須藤先生

一般的に、腰椎変性すべり症よりも発症の年齢は若く、30代でも見られることがあります。多くが中学生から高校生くらいの時期に、過度に腰に負担のかかるスポーツをしていた人たちで、腰椎分離症は10歳代で多く起こります。スポーツをしている腰痛患者の3〜4割が、腰椎分離症を発症しているという報告もあります。

編集部

腰椎変性すべり症と腰椎分離すべり症では、症状が異なるのですか?

須藤先生

いいえ、症状はどちらも似ています。変性すべり症は腰椎が前方や後方へ滑り出すことで、脊柱管のなかを走行している馬尾神経が圧迫され、腰や下肢の痛み、坐骨神経痛、下半身の麻痺やしびれなどの症状が出現します。分離すべり症は分離部で神経根が圧迫され、似たような症状が出現します。

編集部

いろいろな症状が出るのですね。

須藤先生

そのほかにも、すべり症に特徴的な症状として、間欠性跛行(はこう)というものもあります。これは、長い距離を歩くと足の痛みやしびれなどが出現し、少し休むと楽になるが、また歩き出すと症状が出るというもの。これを放置するとやがてロコモティブシンドロームの状態となり、運動能力やQOLの低下に至ることがあります。

編集部

放置すると危険ですね。

須藤先生

はい。進行すると歩行が困難になるだけでなく、排尿障害が起きるなど生活に大きな支障が及ぶようになります。症状が軽度なうちであれば手術をしなくても、保存治療で回復が期待できます。腰の痛みや下肢の痛み、しびれなどの症状が見られたら、早めに専門医に相談するようにしましょう。

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