「一酸化炭素中毒」を発症するとどのような「後遺症」が残るかご存知ですか?

「一酸化炭素中毒」を発症するとどのような「後遺症」が残るかご存知ですか?

一酸化炭素中毒は、一酸化炭素を多く吸い込むことでおきる中毒症状です。血液中のヘモグロビンと結合して、正常な酸素運搬ができなくなります。

冬場で利用が増える暖房器具などが原因で、一酸化炭素中毒がおこりやすくなります。何気なく使っているものですが、危険が潜んでいるので注意が必要です。

今回は、一酸化炭素中毒の後遺症から危険性、症状などを紹介していきます。後遺症や危険性を理解することで、予防する意識を高めることも可能です。ご自身や家族の健康と安全に直結することなので、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

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監修医師:
松本 学(きだ呼吸器・リハビリクリニック)

兵庫医科大学医学部卒業 。専門は呼吸器外科・内科・呼吸器リハビリテーション科。現在は「きだ呼吸器・リハビリクリニック」院長。日本外科学会専門医。日本医師会認定産業医。

一酸化炭素中毒は後遺症が残る?

一酸化炭素中毒で後遺症が残る可能性はありますか?

一酸化炭素中毒は後遺症が残る可能性があります。一酸化炭素中毒の後遺症は、中毒の重症度や、どのくらいの時間一酸化炭素にさらされたかによって異なります。
すぐに現れた症状がいったん改善しても、数週間後に意欲の低下や認知機能障害、歩行障害などが現れることがあります。このように遅れて症状が現れるものを間歇(かんけつ)型一酸化炭素中毒と呼び、死亡を免れても遅れて精神神経障害の後遺症を残す場合があります。

一酸化炭素中毒ではどのような後遺症がみられますか?

重度の一酸化炭素中毒は、多くの場合死に至ります。死を免れてた場合に、回復してから数週間後に現れることがある症状は以下のものがあります。

記憶障害

運動障害

協調運動障害

抑うつ

遅発性の精神神経症状

後遺症が確認された後には、社会復帰に向けたリハビリテーションが行われ、症状の改善が図られます。間歇型一酸化炭素中毒の場合は、社会復帰は難しいとされる疾患です。一例ではありますが、重篤な意識障害にも関わらず、社会復帰できたという報告もあります。すべての患者さんが同じように回復するわけではありません。

一酸化炭素中毒で死亡する危険性は高いですか?

一酸化炭素は少量でも危険です。一酸化炭素は無色・無臭なのでとても気付きにくく、毒性は強力なため、少量でも危険です。一酸化炭素中毒の軽度の症状は、風邪に似ていて気付くのが遅れることがあります。
重症になると、脳細胞が破壊されたり、意識不明になったりなどして、死に至ることもあります。暖房器具使用時の換気が不十分で、新鮮な空気が不足した場合は、一酸化炭素中毒が死亡事故につながることがあるのです。
一酸化炭素の濃度と吸入時間によって、死に至るまでの時間は以下の内容となります。

0.04%:1~2時間で前頭痛や吐き気、2.5~3.5時間で後頭痛

0.16%:20分で頭痛やめまい、吐き気、2時間で死亡

0.32%:5~10分で頭痛やめまい、30分で死亡

1.28%:1~3分で死亡

標準的な浴室に2リットルのペットボトル1本分の一酸化炭素を混ぜた濃度が0.04%です。一酸化炭素は、それだけでも吐き気が起きる程毒性の強い気体です。暖房器具使用時に体調に異変を感じた時は、真っ先に一酸化炭素中毒を疑いましょう。

一酸化炭素中毒とはどのような状態ですか?

一酸化炭素中毒とは、一酸化炭素を吸い込むことで、血液中の酸素運搬能力が低下し、全身の組織に十分な酸素がいきわたらなくなる状態です。
火災や暖房器具、練炭などの不完全燃焼によって発生する一酸化炭素(CO)を多く吸い込むことで、血液中のヘモグロビンと結合して酸素の運搬ができなくなります。一酸化炭素は、血液中のヘモグロビンと酸素よりも200倍結合しやすく、一酸化炭素を多く吸い込むことで酸素と結合したヘモグロビンが減少し、全身の組織は低酸素状態になります。
一酸化炭素は無色無臭で極めて毒性が強く、発生にも気がつかず、知らない間に中毒症状が進んでしまう危険な気体です。空気中における濃度が0.02%(200ppm)に上昇すると頭痛などが起こり、さらに濃度が上昇すると吐き気、めまいなどの中毒症状が進みます。
最悪の場合は、死に至ることもあるとても恐ろしい中毒症状です。

一酸化炭素中毒の症状を教えてください。

一酸化炭素の初期症状でとても多くみられるのが頭痛です。その後、一酸化炭素の濃度が上昇するにしたがって、以下の症状が現れてきます。

0.02~0.03%:1~2分後に頭痛や耳鳴り

0.03~0.06%:1~1.5時間後に激しい頭痛や吐き気、めまい、視力の障害

0.11~0.15%:1.5~3時間後に痙攣、意識の障害

0.16~0.30%:4~5時間後に血圧の低下、時に死亡

0.50~1.00%:5~6時間後に呼吸ができなくなり死亡

一酸化炭素中毒の初期症状は、風邪の症状と似ているため、一酸化炭素中毒と気付かず悪化するケースが少なくありません。悪化すると、意識があっても身体が動かなくなり、昏睡などが起きます。一酸化炭素中毒と気付かず処置が遅れると、最終的には死亡することもあり、とても危険なものです。
暖房器具の使用中に気分が悪くなった場合は、風邪と判断せずに、真っ先に一酸化炭素中毒を疑いましょう。

一酸化炭素中毒の応急手当・治療方法

一酸化炭素中毒になったときの応急手当を教えてください。

一酸化炭素中毒が起きた場合は、すぐ新鮮な空気を吸えるようにしてください。一酸化炭素中毒の応急処置は、以下の対処があります。

落ち着いて室内を換気する

暖房器具などを止める

新鮮な空気を吸える場所に移動する

身体を保温する

医療機関に受診する

意識がないなどの緊急性がみられる場合は、迷わず119番通報して救急車を呼んでください。一酸化炭素濃度が高いことで発生する中毒症状なので、すぐに換気や移動を行い、新鮮な空気を吸わせることが大切です。

一酸化炭素中毒はどのように診断するのですか?

一酸化炭素中毒の診断は状況や症状と合わせて血液検査と脳の検査を行います。動脈血液分析により、一酸化炭素ヘモグロビン濃度(CO-hb濃度)を測定し、脳組織の障害を診断するために、CT検査やMRI検査を行います。最初にどの中毒なのかは、周辺の環境や状況からおおよその判断ができると思われますが、刺激臭や粘膜刺激があるかどうかが大きな判断材料として重要です。

一酸化炭素中毒の治療方法を教えてください。

一酸化炭素中毒は、症状が現れ始めた直後から、速やかな酸素投与が必要です。一酸化炭素中毒の治療方法は、以下の内容があります。

一酸化炭素が発生している場所から移動させて、酸素を吸わせる

重症に対しては人工呼吸で、高濃度酸素を吸わせる

気管挿管で100%酸素で人工呼吸を行う

速やかに酸素を吸わせ、継続的に酸素を取り込むようにすることで、症状の改善や後遺症軽減に有効であると考えられています。

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