産後太りからマイナス20㎏。そのビフォア・アフターの姿をツイートしたことで、Twitter(現在はX)で大人気となったかのまんさん。今年10月には新刊『自分を褒めまくることがダイエットへの近道でした』(原案 かのまん/漫画 あきばさやか)が登場。そこには、かのまんさんの人生がより赤裸々に綴られています。
その内容から、この記事では「産後」という点にフォーカスを当てていきましょう。
一般的に産後のママたちは、とても大変。赤ちゃんの世話に追われ、自分のことはほぼ後回し。睡眠、食事、なんならトイレすら気軽に行かれないことも、産後あるあるでしょう。そんな中で太る原因は、単純にカロリーオーバーではあるものの、根底にメンタルの問題が深くかかわってくるものです。同書で語られるかのまんさんの体験も、まさにそれ。当事者だけでなく、家族も知っておくべき「産後の話」を、お伺いしました。
産後うつから過食へ。「食べて自分を励ましていた」
――最初は手軽な楽しみのため、次第に中毒のように菓子パンがやめられなくなる経緯が、胸にせまりました
かのまん 産後は子どもの世話で寝不足になることに加えて、趣味や外のつながりが消えていき、自分の世界が狭まっていく感覚でしたね。そんな生活の中で、楽しみが食べることしかない。というか、食べて自分を励ましていた。孤独の中で、子どもの命を守らなくてはならないプレッシャーも、ストレスだったんでしょう。私はそうして菓子パンに走って太ったわけですが、同じような状況のお母さん方も多いと思います。食べてしまう自分がダメなんじゃなくて、そうやって自分を励まさないとやっていられない状態は誰にでもあるってことを、本を通して、お伝えしたいです。
――新刊では体型の話だけでなく、産後のセックスレスや過食に対する夫の無理解への苦しみも深く伝わってきました。かのまんさんはメンタルクリニックは受診しなかったそうですが、いわゆる「産後うつ」のような状況にあったそうですね
かのまん 「吐きそうになるくらいの大食いを何度も繰り返してしまう」くらいで、受診しようと思う発想がなく、受診はしませんでした。それは結局、自分のせいだと責めているだけで周りに助けを求められないということ。短期間で異常な太り方をしてしまうという時は、メンタルヘルスに問題が発生している場合が多いんです。私は結果的にジムのパーソナルトレーナーのカウンセリングや指導を受けて、スモールステップを繰り返すことでだいぶ時間をかけてメンタルを立て直すことができましたが、ちゃんと初期に受診していればまた違う道もあったかもしれない。そんな経験をふまえて、少しでも心が疲れている自覚症状があるなら、メンタルクリニックやカウンセリングを、気軽に頼るようアドバイスしています。
――ダイエットする際の心構えに加え、かのまんさんのプライベートも赤裸々に描かれていますが、2023年に離婚されていたことも明かされていますね。
かのまん この本を作っていた去年の夏、”離婚決まりそうです(笑笑笑)”みたいなメールを編集さんへ送ったので、まず、彼女が一番驚いたんじゃないでしょうか(笑)!! 2021年に最初の本が出たあと、たくさんのインタビューを受けたりしていた時、世間に求められる自分になろうという気持ちがどこかあったんですよね。だから、少し無理をしていた。ところが、ダイエットを続ける中で、自分を大切にする気持ちを突き詰めて行ったら……。もっと自分らしく生きていいのでは!と、決断できるようになりました。そして、離婚。産後のアレコレはねえ……、やっぱり大きいです。私が不満を抑え込みすぎたせいもあって、気持ちが夫から一億万メートル離れましたから! でも決して私の人生に夫が必要なくなったわけではないし、感謝している部分もたくさんあります。ですが、色々な形の家族があっていいかなと。人生の舵を自分でとっている今、すごく幸せです。
――ダイエットしてキレイになってゴール! ではなく、その先も常に人生を模索し、よりよい道を進んでいる姿も、とても励みになります。本に登場する「ぽっちゃり体型のために運動が苦手で、本気で取り組んでいても教師から真面目にやれと怒られた」という幼少期のエピソードも、とても興味深いものでした。
かのまん ダイエットは、ただ体重を減らすことではありません。自分の内面と向き合っていかないと、継続できないんですよね。そこで出会う壁が、幼少期のトラウマだったり、親からかけられてきた言葉だったりすることもある。私の体験で、そんな一例もお伝えできたかと思います。ダイエットは自分の育て直しでもあって、小さいころの自分が、誰しも心の中にいる。その子を抱きしめるように、自分を認めてあげてください。十分がんばった! 辛かったね! という気持ちを自分に対してもたないと、頑張れない時もある。できないことを責めるのではなく、励ますようなコーチになること。そしてそういう心の持ちようは、ダイエットだけでなく、子育てにも通じていくかもしれません。
ーーボディコントロールだけじゃなく、家族の関係性にまで影響があるとは深いです。
かのまん 例えばですが、自分に対する気持ちを、子供に対する気持ちと置き換えてみましょう。偏食があるお子さんがいたとします。そこでイライラ、カツカツしてしまうのは、根底にその人を大切に思っている気持ちがあるからですよね。健康になってほしい。ひいては幸せになってほしい。別に野菜を残したからといって、突然不幸になるわけではないけど、相手の健康を考えているからこそ、つい怒ってしまう……。そんな風に想像すると、叱るより励ましたほうが効果的じゃないですか? ダイエットは”体重を減らすため”ではなく、”自分を大切にして幸せになるため”。つまり、人生そのもの。その大事な目的を、しっかり頭に入れて、自分を励ましていきましょう」
――本を通じてかのまんさんが一番伝えたいことは?
かのまん ”あなたは大切な宝物”ということです。少なくとも私は、本や記事を読んでくれている読者やダイエットを一緒にがんばる仲間たちのことを愛していて、宝物だと思っています。その私の宝物を、大切にしてほしいです。もし自分のことを好きになれないという人がいたら、少なくともかのまんが自分を心配して大事に思ってくれている。だから、少し大事にしてみようかなって思ってもらえると嬉しいです。
ダイエットの伴走者であるかのまんさん。この本が、心と体が辛い時の処方箋になってくれそうです。
取材・文=木下頼子
配信: レタスクラブ
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