気になる赤ちゃんの頭の形【頭のヘルメット】ってどんなもの?

第2回 気になる赤ちゃんの頭のかたち
「うちの子、どうやら頭がゆがんでいるみたい…でも、このくらいなら大丈夫なの? 自然に治るものなのかしら?」と悩んでしまうママもいるはず。治療が必要な度合いがどの程度なのか…自分で判断するのはなかなか難しいものだ。そこで、乳児の頭の変形の診断・治療を日本で早くから手掛けている「国立成育医療研究センター」副院長で、「形成外科・赤ちゃんの頭のかたち外来」の医師でもある金子剛先生を取材。治療を始めるべきか否かの詳しい基準を聞いた。

●頭の形を3つの基準で確認

頭の変形具合によって、赤ちゃんのヘルメット治療に進むというが、その重症度はどうやって判断するのだろうか。

「重症度は大きく3つの基準があります」(金子氏 以下同)。

1.見た目の重症度
まず、どの部分の形に問題があるのかによって、6段階でグレードをつける。グレードは高くなるほど重症度が高い。

グレード1:一側の後頭部の平坦化(向き癖があるほうの後頭部だけに変形が見られる)
グレード2:耳の位置の左右差
グレード3:ひたいの形の左右差
グレード4:顔面の左右差
グレード5:側頭または後頭部の隆起
グレード6:短頭(いわゆる絶壁頭)

上記のうち、グレード2からが治療の対象になる。

2.CA(Cranial Asymmetry)
非対称かどうかのチェック。
頭の中心の線から30度傾けた2つの対角線の差を指す。ゆがみが大きいほど非対称になり、CAは大きな値となる。CAが概ね15以上が治療の対象となる。

3.Cephalic index
長頭か短頭か、または絶壁度合いのチェック。頭の左右幅と前後長の比率を指す。3歳以下の日本人の標準値があり、これを参考に治療の対象を決める。

この3つの基準をもとに、総合的に判断して、ヘルメット治療をするかを決めるという。しかしこれより軽度でも、生活習慣の見直しや体位変換で改善できる場合もあるので、気軽に相談して欲しいとのことだ。

頭のかたち外来

●赤ちゃん用ヘルメットは、たった200グラムの重さ!

では、ヘルメット治療とは、具体的にはどんなことをするのだろうか。

「基準を満たした赤ちゃんには専用のヘルメットを作成し、平均して約5カ月くらい着用してもらいます」

ヘルメット治療に入ると、開始から1~2週間は短時間の着用をしてヘルメットに慣れるようにする。そのあと、1日23時間、お風呂に入るとき以外は着用していることになるそう。

「1歳くらいになると、自分でヘルメットを外せることができるようになります。だいたい5カ月くらいは着用しておきたいものですので、治療を開始するのは生後6カ月以下が望ましいですね」

「そんな小さな赤ちゃんにヘルメットなんてかわいそう!」というママもいるかもしれないので、実際のヘルメットを見せていただいた。その重さは、なんと約200g! とっても軽い素材で作られているのだ。触り心地は、樹脂のような硬い素材ではなく、発泡スチロールに近い。とはいえ、強度はあり、一度作ったらそのまま最後まで使えるという。

ヘルメットの形は、赤ちゃんの頭のサイズを計測し、さらに治療後の最終的な頭の形を想定してCAD/CAMで作り上げる完全オーダーメイド。ひとつひとつ日本の医師が専用のソフトウェアで設計し、米国技師がそのデータをもとに作り上げるという。

とは言え、動き回る赤ちゃんの頭を計測するのはなかなか難しそうだが…。
「LEDスキャナー を使って計測します。頭の全体を計測しても、2、3分で完了します」

測定から約10日で完成品が病院に届くという。

●治療にかかる費用は? 

今のところ、ヘルメットによる頭蓋形状誘導療法は自費診療となる。
費用は病院ごとに違うが、国立成育医療研究センターではヘルメット製作からメンテナンスまで含めて40万円と消費税がかかる。サイズ調整などはすべて病院で行うため、3~4週間ごとに通院する必要があるが、それ以外で親の負担はヘルメット内の消毒程度である。

なかなかお金はかかるが、はたしてその効果は? ヘルメットをつけた感想を赤ちゃんに聞くことはできないが、金子先生がヘルメット装着を始めた赤ちゃんを見ていると、楽に頭を動かして向きを変えられるようになっていくという。

「頭の形がゆがんでいると、赤ちゃん自身も重い頭のせいで体を思うように動かせず、けっこう苦労しているんですよ。丸いヘルメットをつけただけで頭が動かしやすくなるので、そりゃ本人も快適になっているはずですよ」

ヘルメットは、実は赤ちゃんにとってもウェルカムなものなのかもしれない。

(取材・文/相馬留美)

お話をうかがった人

頭のかたち外来
金子剛
国立成育医療研究センター 副院長
国立成育医療研究センター・副院長(医療安全・感染防御担当/感覚器・形態外科部 部長/感覚器・形態外科部 形成外科 医長) 同センター・形成外科にて「赤ちゃんの頭のかたち外来」を創設。向きぐせによる頭の変形(斜頭、短頭)に対しては、その程度や時期に応じてヘルメットによる頭蓋形状誘導療法を行う。
国立成育医療研究センター・副院長(医療安全・感染防御担当/感覚器・形態外科部 部長/感覚器・形態外科部 形成外科 医長) 同センター・形成外科にて「赤ちゃんの頭のかたち外来」を創設。向きぐせによる頭の変形(斜頭、短頭)に対しては、その程度や時期に応じてヘルメットによる頭蓋形状誘導療法を行う。