赤ちゃんの頭の形にまつわる【ウソ・ホント】に答えます!

第3回 気になる赤ちゃんの頭のかたち
「絶壁頭の人は歩き方が変になる」という噂をあちこちで耳にするけど、それって本当!? そこで、乳児の頭の変形の診断・治療を日本で早くから手掛けている「国立成育医療研究センター」副院長で、「形成外科・赤ちゃんの頭のかたち外来」の医師でもある金子剛先生を取材。頭の形にまつわる“ウソ・ホント”を聞いた!

●頭の形は一生変わらない?

頭の形は気になるけれど、大人になっても「向き癖がある」という話はあまり聞かないもの。頭の形はずっと同じなのだろうか。

「2013年にカナダで行われた調査では、赤ちゃんの45%に頭の変形があると言われています。 2012年のアメリカでの調査では、12-17歳の頃には頭の変形がある人は2%になるという結果が出ている。頭の形の左右差は徐々に目立たなくなるものなのです。ただし、頭の形は3歳くらいまでで一気に形作られるため、大きくなってから形を直すことは難しい。頭の形の変形の度合いが大きいと感じたら、できるだけ早めに受診することをおすすめします」(金子氏 以下同)

頭の形を良くしたいと思い、グッズに頼るママもいるだろう。向き癖対策といえば、有名なのが「ドーナツ枕」だ。赤ちゃんを一方向に寝かせないようにするグッズだが、金子先生いわく、「全然意味がない」とのこと。枕で赤ちゃんを固定するのは難しいようだ。

逆にあまり知られていないのは、”チャイルドシートに座りっぱなしだと向き癖がつきやすくなる”ということ。チャイルドシートと一体型のバギーも同様なので、気をつけてほしいという。頭の形をゆがませないためには、赤ちゃんを寝かせっぱなしにすることを控えた方が良さそうだ。

頭の形外来

●「まっすぐ歩けなくなる」は大ウソ! 正しい知識を学んで

「正しい情報に触れてほしい」と改めてメッセージを送る金子先生。

「今まで日本では赤ちゃんの頭の変形は普通のことと容認されていたので、医療者も保護者も赤ちゃんの頭の形に関してはそれほど細かくは見ていなかった。それが、米国から一気に頭の形に関する情報が入ってきて、今は正しい情報がどれなのかママたち自身では見分けがつかなくなっているようです」

だが、日頃ママが接する機会が多い小児科医にも変化が…。

「以前は、小児科医はそれほど小さい子どもを診ることはなかった。だが最近では、予防接種が低年齢化したことで、赤ちゃんの診察が増え、そこから頭の形を見る機会も増えており、早い段階から頭の形のゆがみに気付く環境ができてきました。気になったときはネットの情報ではなく、医療機関でぜひ聞いてみてください」

赤ちゃんの頭の形を治すヘルメット治療をすることで、ママにもいい影響があるという。

「今は、子どもの頭の向き癖を気にして、寝ずの番をして頭の位置を変えているママも少なくありません。治療を始めてから、『夜に寝られるようになった』と私に教えてくれるママはたくさんいます」

ママのストレスがひとつ少なくなるだけで、子育ても少し楽になるはずだ。そして、ママたちには様々な噂に惑わされないでほしいと金子先生はアドバイスする。

「『頭の形が悪いとまっすぐ歩けなくなる』とか、『斜視になる』、『噛み合わせが悪くなってしまう』とかいう噂は全部ウソです。まっすぐ歩けなくなるということはないし、斜視になるということもない。噛み合わせが悪くなる理由は他にも山ほどある。でも、外来を訪れたママが、『こういう情報をネットで見た』と言うんですね。正しい知識を得て、噂を真に受けてはいけません」

正しい知識があれば、赤ちゃんもママもきっと楽になれるはず! 「赤ちゃんの頭のかたち外来」や「ヘルメット治療」の存在を知っていれば、気になるわが子の頭の形とも上手に向き合っていけそうだ。

(取材・文/相馬留美)

お話をうかがった人

頭のかたち外来
金子剛
国立成育医療研究センター 副院長
国立成育医療研究センター・副院長(医療安全・感染防御担当/感覚器・形態外科部 部長/感覚器・形態外科部 形成外科 医長) 同センター・形成外科にて「赤ちゃんの頭のかたち外来」を創設。向きぐせによる頭の変形(斜頭、短頭)に対しては、その程度や時期に応じてヘルメットによる頭蓋形状誘導療法を行う。
国立成育医療研究センター・副院長(医療安全・感染防御担当/感覚器・形態外科部 部長/感覚器・形態外科部 形成外科 医長) 同センター・形成外科にて「赤ちゃんの頭のかたち外来」を創設。向きぐせによる頭の変形(斜頭、短頭)に対しては、その程度や時期に応じてヘルメットによる頭蓋形状誘導療法を行う。