SAKETIMES編集長とメトロミニッツ編集長が行く福島の酒蔵ツーリズム「いま、日本酒は福島がおもしろい」

SAKETIMES編集長とメトロミニッツ編集長が行く福島の酒蔵ツーリズム「いま、日本酒は福島がおもしろい」

知る人ぞ知る日本酒県、福島。全国新酒鑑評会で、史上初の9 回連続金賞受賞数日本一となるなど、個々の酒蔵がますます力をつけています。銘酒を求め、酒好き編集長2人が旅に出ました。

よい酒には
杜氏の物語あり

うまい酒は、その道のプロと飲むに限る。本誌編集長の古川が「SAKE TIMES」の小池編集長と連れ立って、1泊2日、銘酒巡りの旅に出ました。

はじめに訪れたのは、福島市内で唯一の酒蔵「金水晶酒造 四季の蔵」。2022年の福島県沖地震で甚大な被害を受けた蔵は、今年春に新しい拠点で酒造りを再開させたばかり。移転を機に、原料の米と水を福島県産に変え、より地元に根付いた酒造りに舵を切りました。

小池 「蔵の場所を変え、仕込み水も変える。一世一代の挑戦だったと思います。けれど蓋を開けてみれば、最初の酒の出来はとてもよかったそう。職人の努力の賜物ですね」

酒造りを支えるのは、ベテラン杜氏(酒造りの最高責任者)の存在。金水晶の杜氏は年に360日は蔵を訪れ、酒の味を見守っている、まさに酒の番人です。

古川 「福島市唯一の酒蔵として、市内の飲食店や家庭への流通になにより力を入れているところに心意気を感じました。そして地元での雇用に力を入れていることも。今年入社した2人の社員は、どちらも市内出身だそうです。昔からなじみの酒蔵で働くって、素敵なことだと思います」

続いては、同じ中通りエリアの「松崎酒造」へ。ここは小池編集長がずっと訪ねたかった蔵のひとつ。

小池 「蔵元杜氏の松崎さんは26歳の若さで跡を継ぎ、以来10回連続で全国新酒鑑評会の金賞を受賞した、日本酒界のエース。ちなみに清酒アカデミーの卒業生です」

古川 「清酒アカデミーって?」

小池 「県酒蔵組合が運営する、酒造りの技術や知識を学べる学校です。これまでに多くの職人がここで学び、それが福島の日本酒の質を上げたといっても過言じゃありません」

技術を学ぶだけでなく、清酒アカデミーを通じて生まれたのは、酒蔵間の交流。互いの蔵を見学し、ノウハウを共有し合う、職人の横のつながりも福島の日本酒を底上げしています。

小池 「代表銘柄の『廣戸川』は毎日でも飲みたい味わい。水のような骨格の酒と松崎さんは表現していましたが、洗練された甘みとうまみのバランスがよく、継ぎ目なくきれいにまとまっています。飲み飽きせずにすいすいと飲めてしまう、常にそばに置いておきたい酒です」

古川 「それほど人気があっても、やはり金水晶と同様に、地元での流通を第一に考えているそう。4合瓶より1升瓶の製造が多いのは、県内の飲食店や家庭に向けているからだと話していましたね。それから松崎さんは、酒造りのノウハウを社員たちに広めていくことに力を入れているのが印象的でした。感覚で酒を造るカリスマ杜氏が率いる酒蔵もあれば、データ化してチームに共有する酒蔵もある。杜氏それぞれが酒と向き合う物語にも興味が湧きます」

 

うまい酒蔵は
地元を大切にする

続いて会津若松市の「末廣酒造 嘉永蔵」へ。古きよき街並みになじむ、国の登録有形文化財にも指定された荘厳な建物からは、酒蔵の歴史を感じます。

小池 「ここは『山廃仕込み』という酒の製法のはじまりにかかわった蔵です。原料の米をすりつぶす『山おろし』という作業を撤廃し、発酵の力で米を溶かす独自の手法で、山おろしを撤廃したから『山廃』。これでできた酒はこくがしっかりあって、うまいんですよ」

古川 「小池さん、1升瓶を大人買いしてましたもんね。僕は蔵の一角に貯蔵されていた年代ものの日本酒コレクションにぐっときました。先代が酒の熟成を試みて、50年以上前から毎年の日本酒を保存し続けていたそう。自分が生まれた年の日本酒が飲めるなんてロマンを感じます」

小池 「今はもうひとつの酒蔵(博士蔵)が製造のメインで、この嘉永蔵は社長と若手職人数名が、新しい酒造りに挑戦する場でもあるとか。伝統を大事にしながらも、新しいものを造ろうという気合いを感じますね」

最後に訪れたのは、海沿いの浜通りにある「鈴木酒造店 浪江本蔵」。日本でいちばん港に近かった酒蔵は、東日本大震災の津波によって流出してしまいましたが、10年の時を経て再び、浪江町に新しい蔵をオープンしました。

小池 「ここ浪江本蔵で造られる酒は、原料のほとんどが浪江町産のコシヒカリ。酒米でなく飯米を使う酒は珍しいです。しかも自社で精米しているという手のかけよう。自分たちで精米するからこそ、米のうまみを引き出せるのだそうです」

浪江町産にこだわるのは、地元の米農家を応援したいという思いから。「浪江町産コシヒカリ使用」と原材料ラベルにうたった酒をより多くの人に飲んでほしいと、苦労の末に飯米の酒を造りあげました。


古川 「震災からの道のりは大変な苦労があったと想像しますが、逆境をバネに新しいことに次々挑戦している姿が素敵でした。これからは女性の造り手が増えるだろうと、製造現場を女性にも使いやすい設計に変えたり、AIを活かした食と酒のマリアージュを提案したり。思えば訪ねた4軒はどこもそんなチャレンジの精神があって、それは福島の酒蔵に共通する強さなのかもしれません。そして、しみじみいいなと思ったのは地元を大切にしているところ。日本酒は地酒、つまりはその地の人に愛される酒なんですね。目の前の人のために実直に造っているから、福島の酒はおいしいんだと、シンプルなことに気付きました」

小池 「わかります。だから日本酒には、やはりその地の柄みたいなものが表れるんですよね。この旅を通して、福島の酒だけじゃなく、福島がもっと好きになりました」

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