深山豆富店(岐阜県大野郡)は、縄で縛っても崩れない「石豆富」や、茹でた大豆をすり潰した「すったて」の他にも、おからを使ったスイーツを販売している。おから入りのキャロットケーキやクッキーを展開し、新商品では「おからのバスクチーズケーキ」を発売した。
飼料・肥料用で活用されることが多いおからだが、食用の用途をさらに広げるために、最近では他社と協働でクラウドファンディング(クラファン)の「おからdaおやつ」を実施した。全国の豆腐店、カフェ、パティシエ、デザイナーらを集めたプロジェクトとなる。
立ち上げの経緯について、同社の田口愛氏は2つの理由を挙げる。1つはおからを使ったスイーツのおいしさに感動したこと、もう1つはおからをとりまく課題を解決したいとの思いからだ。
「深山豆富店を運営するヒダカラは、豆腐作り未経験で店を引き継いだ。豆腐作りでできる大量のおからの活用を考えた際、おからを使ったスイーツに出会った。食べたところ、おいしくて感動した」と振り返る。おからは大豆の香りが強くないためスイーツに使いやすく、食物繊維やたん白質などの栄養素も含むのが特徴だ。
加えて、日本豆腐協会が2011年12月に実施した調査によると、おからは年間全国で約66万t作られ、食用で利用されたのは1%だったという。最も割合が高いのは飼料用で65%、次点は肥料用で25%だった。その他は10%を占め、5~9%は産業廃棄物となっている。
町の豆腐店が減っている中で、飼料などに使われがちなおからを上手く活用できれば、豆腐店が生き残るきっかけになると考えたという。
〈おいしさを知ってもらうことが第一歩、おからの食用利用率の向上へ〉
深山豆富店では現状、おからを使い切れているという。ただ、豆腐の製造量の増加に伴い、おからの生産量も増え、「これから課題が出てくると思う。おからを冷凍する場所も足りない。おからを活用する場合、設備投資もある程度必要になる」と話す。
さらに、おからは単価が低いことから、設備投資をした場合の採算面の問題もある。「おからを捨てるのにもお金がかかる。無料でもいいから、おからを持って行ってほしいと考える豆腐店もいるだろう」と見解を述べる。
クラファンを選んだのは、「社会的意義のある大事な活動になりそうだと思い、それなら応援してもらうのが一番だと考えた」と話す。他社も巻き込むことで、リターン品の種類や仲間を増やせることも理由の1つだ。とうふやたかはし(茨城県)、musubi-cafe(京都府)、はらからおから(宮城県)、OKARAT(宮崎県)、幸デザインスタジオ(徳島県)が参加した。
リターン品は、「Okaratのパーフェクトグラノーラ」、「深山豆富店のおキャロットケーキ」(写真)、「とうふやたかはし 日本一のおからドーナツ」、「はらからおから おからのほろほろクッキー」、「musubi-cafe 老舗京豆腐屋さんのしっとりおからと丹波黒豆の米粉パウンドケーキ」、「ユキフードスタジオ おからブラウニー2本入り×4個+おからバナナケーキ4個セット」などをそろえた。
同クラファンは85人の支援者により、総額44万6,600円の支援が集まった。集まったお金は、プロジェクト立ち上げに掛かった費用や商品代に充てる。
「おからスイーツのおいしさを知ってもらうことが第一歩だ。また買おう、自分で作ってみようと思ってもらうのが大切だ。一人でも多く体感してもらいたい」と語る。今後もさまざまな企画で、おからの食用利用率の向上を目指す。
〈大豆油糧日報2024年12月23日付〉
配信: 食品産業新聞社ニュースWEB