今回は、筆者の友人から聞いたお話を紹介します。「家事」を全部やってくれていた母親が、ある日を境に全ての家事を放棄してしまいました。しかしそれには【致し方ない事情】があって……!?
突然、家事を全くやらなくなってしまった母
これは約30年前、私が中学2年生だった時の話です。私は専業主婦の母とサラリーマンの父、そして高校生の姉という、ごく平凡な家庭で育ちました。
母は家事が得意で、他の家族が手伝わずとも、いつでも綺麗な部屋で美味しい手料理を食べることができました。
それが当たり前だと思って生きていたある日、母が私と姉に笑顔でこういったのです。
「今日からママやめるわ!」
そしてその日から、母は家事を全くやらなくなってしまいました。
私たちが「突然どうしたの?」と聞いたり、「ママのご飯食べたい!」とお願いしても、母はニコニコしながらソファでTVを見ながら寝ているだけ。
それどころか家を空けることが多くなり、時には次の日まで帰ってこないことすらありました。
その代わり、これまで全く家事をしなかった父が慣れない手つきで料理や掃除をするように。私と姉はわけもわからず、料理も掃除も下手な父と一緒に、不慣れな家事に毎日奮闘しました。
あっという間に3ヶ月が経ち、私達がそれなりに家事ができるようになってきた頃。初めて、母が難病にかかっていることを告げられたのです。
母が家事をしなくなったのは、私たちのためだった
これまでの母の外出や外泊は、通院のためでした。そして母は「これからしばらく入院するから家に帰って来られなくなる」と言ったのです。
母が家事をしなくなったのも、全く生活力のない私達が家事を覚えてきちんと生活できるようにするためでした。
「もっと幼い時から、しっかり家事を教えていたらよかったね。ごめんね」と謝る母。私たちも母に甘えっぱなしだったことを反省しました。
その後、母は入退院を繰り返しながら、父に支えられて少しずつ回復していきました。現在も、それなりに元気に暮らしています。一方、私も姉も今ではそれぞれ家庭を持ち、家事や育児に奮闘しています。
母には病気などせず元気なまま年を重ねてほしかったですが、私たちにとってこの出来事により気付かされることは多くありました。
「もし、あのままずっと優しい母に頼りっきりでいたら何もできないまま大人になっていたかもしれない。今こうして生活に不自由なく、幸せな家庭で家族と暮らせているのは、あの時家を守るということを身をもって体験できたからかもしれない」と思います。
私も年を重ねていく中で、もしもの時と将来のために自分の子供たちは一通りの家事ができるように育てています。
【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2024年11月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Hinano.N
不動産・金融関係のキャリアから、同ジャンルにまつわるエピソードを取材し、執筆するコラムニストに転身。特に様々な背景を持ち、金融投資をする女性の取材を得意としており、またその分野の女性の美容意識にも関心を持ち、日々インタビューを重ね、記事を執筆中。