テープで貼られたバナナが1600万円!? カテランの「バナナ」は何がすごいのか
2019年12月に開催されたArt Basel Miamiという世界最高レベルのアートフェアで、なんと1600万円のバナナが購入に至りました(しかも売れたのはVIP先行プレビューの段階)。世界のアート…
今回はそんなアートにまつわるお金のイロハをお話しします。
“アートとお金” のプライマリーとセカンダリー
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まずアートマーケットの中で、作品の扱いが大きく分けて二つあります。それが「プライマリーマーケット」と「セカンダリーマーケット」。英語のそのままの意味ですが、第一次販売がプライマリー。そして二次販売がセカンダリーのこと。
分かりやすくいうと、現存作家のギャラリーでの展示などがプライマリーで、オークションなどがセカンダリーです。
多くの場合、現存作家(存命作家)の展示であることがほとんどで、間に入るギャラリーや百貨店などの場所で「作家から作品を購入する」のがプライマリー。
作家とギャラリーの関係や契約内容にもちろんよるところが大きいですが、ギャラリー展示では、販売価格の一部をマージンとしてギャラリーに支払うことが一般的です。
セカンダリーの多くはオークションでの販売が多いように思います。有名どころではサザビーズやクリスティーズなど。日本ではSBIオークション、毎日オークションなど美術作品を扱うオークションが存在します。
これはピカソやウォーホルなど、もうすでに亡くなった、教科書に出てきそうな有名な作家の作品なんかも購入することができます。
オークションで買える作品は一般的に「西洋絵画」などの名前で括られていて、日本では浮世絵や水墨画など、「古美術」という名前が当てられています。もちろん壺や茶器などもありますね。
セカンダリーというのは転売であることが多く、この仕組みが「アートが投資の対象になる理由」です。
過去の有名な作家の作品というのはもちろんですが、現存の作家でもオークションに出てきます。例えば日本でも、既に有名な20代の若い作家の作品でも、数百万円でオークションに出てきている作家は何人もいます。
あまり良いことではありませんが、去年制作された作品がもう今年オークションに出品されることだってあります。これはプライマリーの段階で、もう転売目的の購入であったことが丸わかりで、作家にとってはあまりいいことではありません。
上記の極端な転売は例外として、5年10年前の作品がオークションに出てくるということは、作家にとってある意味名誉なことでもあります。なぜかと言えばそれだけ知名度があって、入札され値段が競われるほどの資産価値、美術作品としての価値が見込まれているということの裏付けでもあるからです。
これまでセカンダリーは作家にとってあまり良いものとしてはされてきませんでした。なぜならプレミア値がどれ位ついたとしても、作家には1円も入らなかったからです。
つまり資産として転売した人だけが儲かる仕組みだったからです。ですが近年ヨーロッパを中心に現存作家(もしくは遺族)にもいくらかのパーセンテージが入るような仕組みを導入する法整備も進んでいます。(参照: It’s Not That Easy: Artist Resale Royalty Rights and The ART Act )
世界のアートマーケット
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有名なアートフェアは世界中にありますが、一番知名度があり最高峰との評価もあるアートフェアがスイス・バーゼルのArtBaselです。通称バーゼル・バーゼル。
アートフェアというのは、世界中のギャラリーが各ブースで作品を販売するイベントのこと。冒頭のカテランのバナナの作品は、このArtBaselのアメリカ・マイアミビーチで行われる通称バーゼル・マイアミで販売されました。ArtBaselは他にも香港とパリがあります。アートフェアは現代美術だけではなく、もちろんセカンダリーの作品も売買される場です。
そんなArtBaselとスイスの銀行UBSとの共同で、世界中のアートマーケットの市場調査が発表されています。(参照:The Art Basel & UBS Survey of Global Collecting 2024)
これによると、2023年の世界美術品市場の規模は650億ドル(約9兆7000億円) 市場の割合はアメリカが42%、中国が19%、UKが17%。そのあとはヨーロッパ諸国が続き、日本はわずか1%。
日本のアートマーケットの小ささが、数字で見るとはっきりとわかります。しかし、世界的にアートマーケットは、コロナ渦を除いて見ると右肩傾向にあり、これは日本も同様です。
大きい額の話だけに目が向けられる傾向にありますが、低価格帯の作品だとしても、もっと購入者が増え、アートマーケット全体が盛り上がっていくことが大切だと感じます。
配信: イロハニアート