●「インターフォンは押していない」という主張も
足立事件では、永田被告人らと1月20日午前11時ごろ、埼玉県草加市のコンビニの駐車場で、狛江事件で使用したバールと宅配用段ボール、結束バンドなどを載せた車に乗り、足立区のEさん宅付近に向けて出発した。
11時20分ごろから35分ごろまでに間、Eさん宅付近で人の出入りを確認した。その後、1時15分ごろから50分ごろまでの間に、Eさん宅の一階食堂の窓をバールで割り、施錠を外した。そして、押し入れを開けるなどの物色をするが、金品を発見できなかった。
足立事件に関して、加藤被告人は「インターフォンを押していない」と主張していた。以下は、被告人質問でのやりとりだ。
弁護人:共犯者の証人尋問では、音が何回も聞こえたと言っていますが…。
加藤被告人:触れてはいるが、インターフォンを押していない。
弁護人:どうして押していない?
加藤被告人:永田は強盗に執着していた。もし、人が中にいなければ事件を起こさないで済む。不在と言えばいい。そのため、(Eさん宅での犯行について)一回目は中止になった。
弁護人:(Eさん宅での犯行について)二回目は?
加藤被告人:このときもインターフォンを押していない。しかし、強盗をやめて、空き巣をすることになった。
弁護人:中に人がいるかもしれないが…。
加藤被告人:そこまで考えていなかった。
●裁判所「自己の利益が大きくなるように共犯者を利用した」
東京地裁は「(共犯者の二人が)それぞれインターフォンの音を聞いたと明確に証言しており、勘違いとは考えにくい」「永田被告人が指示役に対して、加藤被告人がインターフォンを押したことを前提とするメッセージを送信していた」などとして、共犯者の証言は信用できるとした。
また、直前まで、盗品の一部を指示役に知られないように永田被告人と中抜きしようとしていたことなどを踏まえれば、犯行に積極的な態度を見せていたとして、加藤被告人の証言を信用できないと判断した。
最終弁論で、弁護側は、現場リーダーではないこと、一部積極的な関与はあるものの「キム」に脅されるなど、全体としては積極的な関与ではないなどとして、有期懲役刑が相当であると主張していた。
しかし、判決は「深刻な被害結果をもたらした一連の犯行に主体的、積極的に参加し、徹底した役割分担の下で、自己の利益が大きくなるように共犯者を利用、補充した側面もある」「責任は、実行役のリーダーである永田被告人との間に差があっても、これに次ぐもので、それ自体が重大というべき」として、検察側の求刑通り無期懲役とした。
加藤被告人は、判決を不服として東京高裁に控訴した。
配信: 弁護士ドットコム