子どもの膀胱炎は別の病気の可能性アリ!

第2回 注意したい幼児の夏の膀胱炎
膀胱炎というと、女性に多い病気とされている。これは、男性より尿道の長さが短く細菌が膀胱に侵入しやすいから。では、体が発達途中で男女ともに尿道が短い子どもについてはどうなるの?

泌尿器科専門医の松下千枝先生によれば、「子どもの膀胱炎は大人とはケースが違う」という。具体的にどういうことなのか、話を聞いた。

●子どもに見られる膀胱炎の特徴は?

「膀胱炎は大人の女性の場合、細菌に感染して起こる『細菌性膀胱炎』が多く見られます。通常は排尿することで膀胱内から細菌が出るために防ぐことができていますが、膀胱内からおしっこを出し切れずに残尿がある人に注意が必要です。なので、残尿のない膀胱を持つ子どもが膀胱炎になることは、あまり多くありません」(松下千枝先生 以下同)

大人の女性がなりやすいことを考えると、子どもも男の子より女の子のほうが膀胱炎になりやすいの?

「新生児・乳児では免疫機構が未熟なために細菌感染をおこしやすく、男児のほうが女児よりもその傾向が強いといわれています。子どもでは男女比は逆転し、女の子の方が尿路感染症は多く発症します。女の子のほうが男の子より2~9倍の発症頻度でみられるといわれています」

ただし、単純な細菌性膀胱炎の発症例はそう多くはないよう。そのため子どもが膀胱炎を起こしていたら、それは別の疾患の可能性を疑う必要があるのだとか。

「膀胱炎から疑う基礎疾患としてもっとも多いのは膀胱尿管逆流症です。そのほかにも水腎症、尿道狭窄などがあります。いずれも放置していると腎臓の機能が低下してしまうこともあり、注意が必要です」

子どもが頻尿や排尿痛などの膀胱炎とみられる症状をうったえるようなら、まずは小児科や小児泌尿器科のある総合病院で受診し検査を受けよう。

おまるにまたがる子

●膀胱炎のなかには食べ物などが原因のものも

また、子どもに膀胱炎の症状がみられる場合は、アレルギー性の膀胱炎であることも考えられるそうだ。これは比較的最近になって発見された疾患なのだとか。

「一般的には『間質性膀胱炎』や『骨盤痛症候群』と呼ばれており、原因はまだはっきりと解明されていません。ただし傾向として、からいものや酸っぱい食べ物など、子どもの身体には合わないとされる食品を摂取して症状が現れる方がいます。小さいお子さんの場合、生活習慣や食事を改善することで、膀胱炎症状が治ることもあります」

子どもは膀胱炎になっても言ってくれないことも多く、足を交差してもじもじする、うずくまるなどのサインを見逃さないことがポイントだ。放っておくと腎臓など、別の部位にも影響が及ぶことがある。トイレに行く様子がいつもと違うようであれば、早めに専門医に受診することが早期発見につながる。

(ノオト+石水典子)

お話をお聞きした人

松下千枝
社会福祉法人 大阪暁明館病院
日本泌尿器科学会指導医・専門医。社会福祉法人 大阪暁明館病院 泌尿器科医長。専門は泌尿器科一般疾患の他、排尿障害や女性泌尿器疾患。
日本泌尿器科学会指導医・専門医。社会福祉法人 大阪暁明館病院 泌尿器科医長。専門は泌尿器科一般疾患の他、排尿障害や女性泌尿器疾患。