こくみん共済 coop〈全労済〉が防災・災害に関する意識調査を実施

早いもので、今年の元日に発生した能登半島地震からまもなくちょうど一年が経とうとしています。そんな中、古くから防災・減災活動に取り組んでいるこくみん共済 coop〈全労済〉(全国労働者共済生活協同組合連合会)では今年11月、防災・災害に関する全国都道府県別意識調査を実施しました。阪神・淡路大震災、東日本大震災と、言わずと知れた日本は地震大国。これまでに直面してきたこれらの災害を教訓として、我々日本人は防災・災害に対してどのように考え、備えているのでしょうか。

災害に関する意識

『あなたは災害に対して不安を感じていますか』と聞いたところ、全体で74.4%が「感じている」と回答。性別で見ると男性が67.9%、女性が80.1%と女性の方が不安を感じているとの回答が多い傾向がみられました。

次に『あなたが一番不安に感じている災害は何ですか』という問いには、「地震」が68.8%と一番多く、続く「洪水や豪雨等の水災」(8.8%)、「台風や竜巻等の風災」(7.9%)と比べると、予測が難しい「地震」が圧倒的に高い結果に。また一方で、沖縄では「地震」(33.3%)を超えて37.1%が「台風」と、地震より台風の方が不安に感じる人が多い結果になりました。

『どのようなタイミングで在宅時の災害に対する備えを意識しますか』という質問に、一番多かった回答が「災害発生の報道を見て」(41%)。次いで「身の回りでの災害発生時」(18.3%)、「平時から」(14.6%)。都道府県別で「平時から」意識していると回答が多かったのは、静岡・和歌山が22.9%、次いで東京が21.9%、新潟・大分が20%という結果になりました。

また『直近1年以内に、「在宅時」と「外出時」に災害が発生したことを想定した防災対策を行いましたか』と聞いたところ、在宅時の防災対策を「行った」が20.3%、「行っていない」が79.7%。外出時の防災対策を「行った」が11.4%、「行っていない」が88.6%と、いずれも半数以上が「行っていない」と回答。なお「行った」と回答が多かった上位の都道府県は以下の通り。

『「自助」「共助」「公助」のうち、あなたが災害時に一番重要だと思うもの』を聞いたところ、「自助(自分の身を自身で守る)」が46.7%、「共助(周りの人と協力し合う)」が39.4%、「公助(国や自治体による公的支援)」が13.9%という結果に。年代別にみると60代の53.8%が「自助(自分の身を自身で守る)」と回答し、自助意識が高い傾向にあることがわかりました。

災害への対策

災害が発生した際の防災対策について項目別に聞いたところ、「平時に備える(災害前に事前に備えたり防災に関する知識の習得や対策を行う)」に対しては全体の27.8%が「できている」と回答。「発災時に守る(災害場所において命を守るべき行動や、避難時に活用できる知識を把握できている)」についても、ほぼ同率の28.8%が「できている」と回答。一方で、「災害後に再建する(災害後、元の生活に再建するために必要な情報を把握できている)」に対して「できている」と回答したのはわずか14.2%と、他の項目に比べて対策が不足していることがわかりました。

『現在、在宅時の災害に対して備えができていると思いますか』と聞いたところ「できている」と回答したのは全体の26.6%。都道府県別にみると高い順に和歌山が40%、東京・愛知が39%、次いで熊本が36.2%でした。一方で、「できていない」と回答が多かったのは、長崎が68.6%、秋田が65.7%、次いで広島が61.9%という結果でした。

続いて『在宅時の災害の備えについて最も大切だと思うもの』については「水や食料の備蓄」が突出して多く44.4%。次いで「家族との連絡手段の確認」が20.8%。以降は「室内での安全確保」12.7%、「防災グッズの用意」9.8%と続く結果に。全国的に見てもほぼ同様の結果がみられ、すべての都道府県で「水や食料の備蓄」が最も多く選ばれました。

『万が一、在宅時に災害が発生したときの備え』について項目別に聞いたところ、「できている」と回答した人の割合が最も多かったのは「懐中電灯やLEDランタンなどの備え」で51.7%。最も少なかったのは「遠隔地避難に関する情報収集」の14.9%、次いで「トイレの備え」の18.5%でした。また、これを年代別で見ると「ラジオの備え」が20代の17.7%に対して60代では49.4%、「ハザードマップの確認」が20代の22.8%に対して60代では42.6%となるなど、「できている」と回答する割合が年代に比例して高くなる傾向がみられました。

『災害後について、保険や共済などによる生活(被災した住宅・家財・車などの資産)再建のための備えをしていますか』との質問に対しては、全体の46.0%が「できていない」と回答。特に20代は55.4%が「できていない」と回答しました。

「できている」と回答した理由(複数回答)で最も多かったのは「災害後の生活が不安だから」で49.0%、次いで「国や自治体からの支援では不十分だと思うから」が29.9%。一方「できていない/どちらともいえない」と回答した理由(複数回答)で最も多かったのは「お金がかかるから」が46.0%と、経済的な負担を理由にする人が半数近くに。また「特に理由はない」は40.9%という結果になりました。

コミュニケーションと防災訓練の現状

『近所の人々(同じ避難所エリア)と災害時の対応についてコミュニケーションができていますか』と聞いたところ「できている」と回答したのは全体の14.1%で、年代別でみると60代が18.3%と一番高い結果に。また都道府県別でみると「できていない」と回答した人が70%以上だった地域は多い順に、長崎(79%)、群馬(75.2%)、広島(73.3%)、鳥取(71.4%)となり、全体的にコミュニケーション不足の傾向がみられました。

『あなたはご自宅の地域やマンション等で実施される防災訓練に参加したことはありますか』と聞いたところ、「ほぼ毎回参加する」と回答した人は全体のわずか4.4%で、全体の64.5%が「一度も参加したことがない」と回答。特に賃貸マンションに住む人の77.2%が「一度も参加したことがない」と答えるなど、多くの人が防災訓練に参加していない現状が浮き彫りになりました。

『災害が発生した時に、周囲の人を手助けする(できる)と思いますか』と聞いたところ「率先して行うと思う」が全体の8.3%、「余裕があれば行うと思う」が69.0%、「行えないと思う」が22.6%という結果に。また逆に、『災害が発生した時に、周囲の人から助けてもらえると思いますか』と聞いたところ「助けてもらえると思う」が全体の3.4%、「余裕があれば助けてもらえると思う」が60.2%、「助けてもらえないと思う」が36.5%でした。災害時の「たすけあい」を実現するためには、各自が“余裕”を持つことが重要だと言えそうです。

ハザードマップと情報収集

『直近1年以内に、あなたはハザードマップを見ましたか』と聞いたところ、全体の47.0%が「見た」と回答。居住地別でみると、愛知が61.9%と最も高く、次いで岡山60.0%、石川59.0%、福岡58.1%、大分57.1%と、直近で自然災害に見舞われた地域が上位に並びました。一方、「見た」割合が最も低かったのは神奈川の36.2%でした。

「見た」と回答した人に『ハザードマップをどのような媒体で見ましたか』と聞いたところ(複数回答)、全体の57.8%が「自治体からの配布物」と回答。次いで多かったのが「自治体サイト」38.2%と、多くの人が自治体からの情報でハザードマップを把握していたことがわかりました。

また『発災時、ハザードマップに記載のある避難行動ができると思いますか』と聞いたところ、全体の42.5%が「できると思う」と回答。「直近1年以内に、外出時に災害が発生したことを想定した防災対策をした」人に限れば、64.7%が「できると思う」と回答しており、事前に防災対策を行うことが自信につながる傾向がうかがえます。

『万が一お住まいのエリアで発災した場合、あなたが情報収集に最も使用すると思う媒体はどれですか』と聞いたところ、「TVのニュース番組」が多かったのが60代の29.4%で、50代は28.3%、40代は25.8%と続きました。また一方で、20代では「SNS(LINEやX、Facebookなど)」が26.3%と最も多く、30代は「TVのニュース番組」と「SNS」がいずれも20.1%と、情報収集の媒体に年代別の違いがあることがわかりました。

避難所での生活について

『災害時、あなたはどこへ避難をする予定ですか?』と聞いたところ、「地域指定の避難所」の44.8%、「在宅避難(自宅)」の39.7%が大半を占めました。また「在宅避難(自宅)」では、20代が29.4%、30代が38.1%、40代が42.1%、50代が43.4%、60代が45.3%と、年代が上がるにつれて割合が増える結果に。そのほか、「車中」の割合が熊本は18.1%、新潟や茨城は17.1%。「親戚や知人宅」との回答は全体では4.4%でしたが、多かったのは熊本で11.4%、広島で9.5%。東京では1.9%と低い結果になりました。

「地域指定の避難所」と「在宅避難(自宅)」のどちらの割合が高いかの都道府県別比較では、「地域指定の避難所」が高い地域が多く見られましたが、首都圏や東北の太平洋側、九州南部では「在宅避難(自宅)」の割合が高くなりました。

『あなたは避難(在宅避難含む)生活をイメージできていますか』と聞いたところ、「できていない」が55.4%と、「できている」の20.1%を大きく上回りました。都道府県別にみると、東日本大震災や熊本地震など過去の大規模被災地域では「できている」の割合が高く、熊本では40.0%、宮城では38.1%でした。

『あなたが避難所での生活において特に重要だと思うこと(3つまで)』を聞いたところ、「トイレ」が54.9%、「水や食料の確保」が49.4%、「プライバシーの確保」が39.1%となり、「暑さ寒さ対策」が34.1%、「睡眠」が27.3%と続きました。その上で、『避難所での生活において、あなたが一番不安に感じること(ひとつだけ)』を聞いたところ、こちらも「トイレ」が24.4%、「プライバシーの確保」が23.3%、「水や食料の確保」が17.0%となり、次いで「防犯」が8.9%となりました。

『避難生活(在宅避難含む)において、あなたは十分な支援を受けられると思うか』と聞いたところ、「十分とはいえないが必要最低限の支援が受けられる」が最も多くて70.5%、「必要最低限の支援も受けることができない」は27.3%となりました。『災害時、「ペットと避難所で過ごす」ということについて、あなたの気持ちに近いものをお答えください』という問いに対しては、「避難所に連れてくることはよいが、ペットは屋外で過ごしてほしい」が44.5%と一番多く、次いで「避難所に連れてきて一緒に過ごした方がよい」が36.8%となり、ペットを避難所に連れてくることについて多くの人が一定の理解を示していることがわかりました。

生活の再建について

『災害後も現在住んでいる場所で生活(被災した住宅・家財・車などの資産)再建をしたいと思うか』と聞いたところ、全体で43.9%が「そう思う」と回答し、「そう思わない」は19.4%でした。年代別では、20代は38.9%、60代は52.0%が「そう思う」と回答。また、都道府県別で「そう思う」という回答が多かったのは、愛知で59.0%、奈良で55.2%、福島・山口で53.3%でした。

また『災害後、国や自治体から生活再建に必要な支援が受けられると思うか』と質問したところ、全体では「十分とはいえないが必要最低限の支援が受けられる」が最も多く44.2%でした。特に、熊本は56.2%、愛知は53.3%、宮城と兵庫は51.4%と、災害の被害に遭った地域では高くなる傾向がみられました。

保険に関する正しい知識について

『地震で火災が発生した場合、火災保険の対象になると思いますか』と聞いたところ、全体では「対象になると思う」が53.3%、「対象にならないと思う」が46.7%でした。地震が原因による火災は火災保険の対象ではなく、地震保険での対象となるため、半数以上が正しい知識を知らないという結果となりました。

また『地震保険について、正しいものはどれだと思いますか』という問いでは、「地震保険単体でも加入できる」「持家しか加入することができない」「地震保険や共済に加入すれば被害が100%カバーできる」「どれも正しくない」「わからない」の5つの選択肢から1つを選ぶ方式で、以下のような結果となりました。


■地震保険単体でも加入できる → ×
一般的に、地震保険は火災保険に付帯する方式の契約となるため単体では加入できない。

■持家しか加入することができない → ×
地震保険は賃貸物件でも加入可能。

■地震保険や共済に加入すれば被害が100%カバーできる → ×
地震保険や共済に加入するだけでは被害を100%カバーすることはできない。
※地震保険は火災保険の50%まで補償。特約で上乗せすることで100%カバーすることは可能。

よって正しい回答は「どれも正しくない」となり、全体では22.3%でした。一方、「わからない」は41.8%で、地震保険についての理解度が低い傾向がみられました。年代別では、「どれも正しくない」を選んだ割合は20代が13.5%と一番低く、60代が32.6%と一番高い結果となりました。

南海トラフ地震について

『あなたは2024年の夏に南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されたことを知っているか』と聞いたところ、全体では「知っている」が82.1%、「知らない」が17.9%となりました。

上記の質問で「知っている」と回答した人に『南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の発表後、家族や職場での防災意識や行動に変化はありましたか』と質問したところ、家族については全体の35.6%、職場については若干下がって全体の25.7%が「変化があった」という回答がありました。そしていずれも、世代が若くなるにつれて「変化があった」の割合が増加する傾向がみられました。

『あなたがお住まいの地域の、南海トラフ地震が発生した際の災害予想規模(危険度)を知っていますか』と聞いたところ、「知っている」と回答したのは全体の45.2%で、「知っている」の割合が高かった都道府県は、和歌山・愛媛が64.8%、高知が62.9%、大分が61.0%でした。

続いて『南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の発表に際して、南海トラフ地震を想定した防災対策を家族や職場で議論したことはありますか』と聞いたところ、家族との議論については、全体の21.0%が「発表前から議論していた」、28.4%が「発表前は議論していなかったが、発表後に議論をした」、50.7%が「一度も議論していない」と回答。職場での議論は全体の13.7%が「発表前から議論していた」、18.8%が「発表前は議論していなかったが、発表後に議論をした」、67.4%が「一度も議論していない」という結果になりました。こちらも南海トラフに近い地域では議論をしている割合が高く、北海道や東北、関東地方では低い傾向がみられました。

『南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の発表後、新たな防災対策として行ったこと』を聞いたところ、多かったのは「水や食料の備蓄(3日分以上)」で26.7%、次いで「懐中電灯やLEDランタンなどの備え」が15.7%、「ハザードマップの確認」が15.5%、「家族との連絡手段の確認」が15.4%となりました。特に「水や食料の備蓄(3日分以上)」は四国地方(34.7%)と近畿地方(33.5%)で回答が多く、中でも四国地方はその他の項目でも他の地域より高い割合を示しました。

【調査概要】
調査期間:2024年10月31日〜11月3日
調査対象:全国の20〜69歳
調査方法:インターネットリサーチ
有効回答数:4,935サンプル ※性年代別/各都道府県100名

2011年3月の東日本大震災発生時、記者はたまたま訪れていた東京・大田区の印刷会社にいました。そこは古い建物で、天井から吊り下げられた大きな空調機器が大きく揺れて、今にも頭の上に落ちてきそうで怖かったことを今でも鮮明に覚えています。ただ普段から工場見学が多い会社で、震災時における来客の誘導などがしっかりと社員に教育できていたこともあり、いつの間にか安全な場所へと連れて行かれたので難を逃れることができました。この時ほど、「平時に備える(災害前に事前に備えたり防災に関する知識の習得や対策を行う)」ことの重要さを痛烈に感じたことはありません。

また2016年4月の熊本地震では、記者の地元・大分県別府市も大きな被害を受けました。地震から数日後、地元に住む弟から受けた報告では、ちょっとやそっとじゃ動かないはずの重い墓石が土台の端まで移動し、駐車場のブロック塀はすべて倒れたとのことでした。そんな大地震を経験した大分県が、今回の調査での知識や備え、情報収集のいずれも上位に来ていることにホッと胸を撫で下ろしました。でも、それはすでに一度でも災害を体験しているからこそのこと。災害体験の有無に関わらず、誰もが普段から防災意識を高くしていれば、命を落とす確率は大きく減るのではないでしょうか。そのためにも、まずは各自治体が用意したハザードマップに早く目を通し、万が一から身を守る術を家族で共有して有事に備えてほしいと思います。