「アスペルガー症候群には、“コミュニケーションの問題”“対人関係の問題”“限定された物事へのこだわり・興味”という特性があるため、家族や友人、職場の人などがコミュニケーションをうまく築けないことにより心身に不調を生じてしまうことがあります。また、アスペルガー症候群は一見わかりにくいために、不平不満を口にしても、多くの人から信じてもらえなかったり孤独感を感じてしまうということもあるのです」
そう話すのは、『立石流 親も子どもも幸せになる発達障害の子どもの育て方』の著者・立石美津子さん。カサンドラ症状は、精神的、肉体的苦痛がおもなものになり、自立神経失調症、偏頭痛、体重の変動、自己喪失感、パニック障害、無気力状態、抑うつ…など、さまざまだという。では、特にどんな人がカサンドラ症候群になりやすいのだろうか?
「全人口の6.5%の割合で存在していると言われている発達障害。その中の“アスペルガー症候群”。男女比率は男性が女性の4倍です。そのため、カサンドラ症候群が起こるのはアスペルガー症候群の男性の妻やパートナーの女性に多いと言われています。しかし、夫婦やパートナー間のみに起こるのではなく、家族や友人、職場の人にも起こる可能性はあるので、決して女性特有の精神疾患とは言えないのです」(立石さん 以下同)
また、アスペルガー症候群の人の特性は、障害によるものなのだが、その人をパートナーに持つ人は、相手との性格の不一致とか価値観の違いと考えてしまい、自分自身を追い込んでしまうという。
「完璧主義だったり、白黒はっきりさせないと気が済まない思考だったり、生真面目、頑固…といった性格の人は、どうしても“こうあるべき”“こうでなくてはならない”という思いが強いため、“察することが苦手”なアスペルガー症候群の人との人間関係にストレスを感じやすく、精神的に追い込まれてしまうケースも少なくありません」
では、カサンドラ症候群の対処法とは?
●互いを理解しようとする思いやり
「アスペルガー症候群の人が“相手の気持ちをおもんばかったり、空気を読んだり察することができない”のは、生まれつきの脳機能の障害であり、本人も直したくても直せず苦しんでいるのです。そこは、しっかり特性を理解して柔軟性を持って対応することがアスペルガー症候群の人と人間関係をうまく築くうえで大事なのです。また、当人が病院を受診して、アスペルガー症候群であることを受け入れ、適切な指導や療育を受けることも、支える家族や身近な人の助けになります。さらに、あえてお互いの“距離を置く”という方法で改善するケースもあります。夫婦や家族の場合は特に、別居というカタチをとることで心身が休まるだけでなく、冷静に状況を見つめ直すことができるからです」
●自助グループの活用やネットでの意見交換
「カサンドラ症候群は、周囲に相談しても理解してもらえず、孤独感を感じてしまうのも原因のひとつ。だからこそ、同じ悩みやつらさを持った人同士で支え合い、励まし合うことで問題解決や克服につながる場合もあります。ネットなどで同じ体験をしている人と意見交換をすることで、向き合い方を参考にすることも心強いものです」
●専門機関、病院を受診して相談する
「体調に異変があったり、ストレスで追い込まれたときは、我慢したり一人で抱え込まず、心療内科や精神科といった医療機関に相談することをおすすめします。薬などで症状を緩和する方法もありますが、カサンドラ症候群は、あくまでも対人関係から起こる疾患なので根本的な解決にはつながるとは言えません」
カサンドラ症候群は、自分を責めても、相手を責めても何も解決はしません。互いを理解し思いやり歩み寄る。そして改善方法をともに模索していくことこそが、これ以上ない対処法のようです。
(構成・文/横田裕美子)