「ダブルケアラー(ダブルケア当事者)さんは、育児支援と介護支援を組み合わせて利用しています。まずは地域の支援センターに相談しましょう」(植木さん 以下同)
介護支援には、次のようなサービスがある。
デイケア:在宅介護サービスや施設に通って介護やリハビリテーションを行う
短期入所(ショートステイ):数日間施設に入所する
入所:介護老人保健施設や特別養護老人ホーム、グループホームに入所する
身体的な障害のケアや認知症の症状のケア、症状の進行状態などによって受けるサービスが変わってくる。親に介護が必要になった場合、ケアマネージャーに適切なケアプランや介護保険の利用について相談しよう。
●身近な人が助けになることも
自治体や地域の支援サービスはもちろん、身近な人からも協力を得るようにしたい。例えば、在宅介護を行っていた義父の認知症が進行し徘徊の症状が出てきた時、近所の住民に事情を説明し、もし見かけた場合は教えてほしいと頼むのもひとつの手だ。
「もし介護をしている方に徘徊する症状が見られるようになったら、警察や地域の関係機関と連携して捜索してくれる『徘徊高齢者SOSネットワーク』の登録も合わせて利用するといいでしょう」
また、パパからの理解を得ることも、ダブルケアを行うママにとって重要だ。
「ダブルケアを行うママは、自分の時間がとても少ない。自分のペースが乱されると、かえって負担に感じる場合もあります。パパに優先して頼みたいことは、ママの愚痴を聞くこと、掃除や料理ができなくても文句を言わないこと。大変な状況だとわかってくれていることが一番の助けになると思います」
●ダブルケアラーさんに大切なのは、共感
ストレスを抱えやすいダブルケアラーさんにとって、家族からの理解だけでなく、同じ状況の人に共感してもらう場があることは大切。当事者が集まる交流イベントなどを活用してほしいという。植木さんが運営する団体「芹が谷コミュニティてとてと」では、ダブルケアラーさん同士で話したり、悩みを打ち明け合ったりする「お喋りカフェ」という場を設けている。また、ダブルケアサポートと情報交換しながら他の地域では当事者が開催する会も始まっている。
「境遇が同じ人と話すだけで、ずいぶんと気持ちが楽になります。『認知症の症状のあるおじいちゃんが子どもの歯固めをかじってしまった』といったトラブルが起きても、冗談交じりに明るく話すことで、必要以上に深刻なことと受け止めずに済みます」
また経験者しか気付かない知恵や裏技を情報交換できるメリットもあるとか。
「例えば、薬局で処方された薬を1回分ごとにまとめてもらうことを『一包化』というのですが、頼まないと薬剤師さんはやってくれません。高齢者は複数の薬を処方されることが多く、朝昼晩に飲む薬が違うこともあるため、だいぶ楽になるんです」
長期間続くことが予想される、ダブルケア。ストレスをため込まないことがポイントのようだ。もし始めることになったら、自分の身体を壊さないように利用できる支援や交流の場を活用しよう!
(ノオト+石水典子)