物語の舞台は「弔い所」。“弔う”という言葉には、死者を慰めるために供養を営むという意味があり、この弔い所もそうなのだが、供養するのは“人”ではなく“神”…それも物や道具に宿った神を供養する場所なのであった。
山や海、大地や木々、風や火など自然界のあらゆるものには神々が宿り、人々は古来より神の力を崇め、恐れ、敬った。同じように人の手から作り出された物や道具にも、長い歳月をかけて使い込んでいるうちに神々が宿るという。それが九十九(つくも)神=付喪(つくも)神である。
この漫画の主人公は付喪神を弔う「弔い所」の跡取り息子・宗介。今回弔い所に依頼があって持ち込まれたのは、約百年前の市松人形だった。「まだ生きてるのに」、市松人形と対面した宗介はそう感じていた。果たして約百年前の人形に宿っている神は最期にどんな願いを口にするのだろうか?
本作「つくも神弔い所」を描いた七星(@nanataroo_7) さんに話を聞いてみた。
――本作の見どころや、主要な登場人物について教えてください。
この世に長く存在した物や道具を供養するお話なのですが、供養する前にそれらに宿る付喪神の最期の願いを叶えるお話です。主人公の“宗介”は、物や道具を供養する「弔い所」の当主で、“斎”は「弔い所」を手伝っている神使(しんし=神の使い)です。
――物や道具に宿る神を題材に選ばれた理由は?
元々イラストを描いているときから、物を擬人化することが好きでした。もしもこの物や道具が生きていたらこんな感じかなと考え始めたのがきっかけです。
――本作のなかで「ここを見てほしい」という著者おすすめの場面を教えていただけますか?
基本的に幼く見える人形の付喪神様なのですが、ふとした瞬間に見せる表情に神さまらしさを感じていただけたらと思います。素直じゃないですが、とてもやさしい付喪神様なんです。
――今後の続編のご予定は?
これからも「つくも神弔い所」のお話を更新できたらと思っておりますので、ぜひ読んでみてください。よろしくお願い致します。
付喪神の最期の願いを叶えたあと、弔い所では、その器=つまりは市松人形に火を点ける。人形が燃えているとき、その人形はただの器でそこに魂はないはずなのに、宗介は感じずにはいられなかった…「燃える様はひどく寂しい」と。「この世は神さえも無常」だと…!簡単に物が手に入り、簡単に捨てることもできる裕福な時代、自分は物や道具をちゃんと大切に扱えているか今一度考えてほしい。
取材協力:七星(@nanataroo_7)
配信: Walkerplus
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