「『罪を憎んで人を憎まず』は真理」  波乱万丈、自身も逮捕経験のある女性弁護士がうったえる「加害者」との向き合い方

「『罪を憎んで人を憎まず』は真理」 波乱万丈、自身も逮捕経験のある女性弁護士がうったえる「加害者」との向き合い方

●「厳罰主義を強化しても、良くなるとは思えない」

刑事事件の弁護人を引き受ける小竹さんの根幹にあるのは、学生時代に自身が逮捕されたときの経験だ。

「逮捕時、留置場で同じ房にいたのは自分と変わらない人たちでした。でも、留置担当官は私たちを『自分より一段低い、何をしでかすかわからない別種の人間』という扱いをするし、そうして良いと思っているんです。

そもそも犯罪はなぜ起きるのか。罪を犯した人に突き詰めて話を聞いて感じるのは、人は置かれた状況によって(犯罪に)追い込まれてしまうということです。加害者だけの責任にして厳罰主義を強化しても、良くなるとは思いません」

弁護士になった当初と今で、仕事への意識など変わったと思いますか――。

罪を犯した人が更生できるよう、彼・彼女たちと関わり続けてきた小竹さんにそう尋ねると、少し考えたあとにこんな答えが返ってきた。

「あまり変わっていない気がしますけど…ただ、ずっと、罪を犯した人と向き合い、その人の内面を深く掘り下げることをしてきたので、犯罪についての理解は深まった気がします。

語弊はあるかもしれませんが、そういう人たちを本当に悪い人と思ったことは一度もなく、『罪を憎んで人を憎まず』は真理だと思います。

相談を受けていて感じるのは、被害者だけでなく、加害者もまたトラウマを抱えているということです。再犯を防ぐには、ただ人を裁くだけでなく、犯罪を検証して、次につなげることが必要です。犯罪をどう扱うか。今後、社会も変わるべきだと思います」

【取材協力弁護士】
小竹 広子(こたけ・ひろこ)弁護士
1972年岡山県生まれ。東京都立大法科大学院を経て、2008年弁護士登録。産業カウンセラー、家族相談士、ゲシュタルト療法セラピスト。2016年に保護司登録。犯罪被害者と加害者の双方の支援、更生のための刑事弁護を旨に必要に応じてカウンセリングの手法を用いる。また、第二東京弁護士会で「よりそい弁護士制度」創設に関わり、刑を終えた人の社会復帰支援にも携わっている。
事務所名:東京共同法律事務所
事務所URL:https://www.tokyokyodo-law.com/

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「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。
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