うつぶせといえば、赤ちゃんの場合は危険な眠り方として有名。多くのママパパも、わが子がうつぶせに寝ていたら、急いでコロンと裏っかえしたことがあるのではないでしょうか。保育施設では、睡眠中の死亡事故が相次いでいて、平成25年度は16名の児童が睡眠中に死亡。そのうち、うつぶせ寝によるものは9名と、うつぶせ寝による睡眠中の事故発生率は高いのです。
しかし、これは子どもの話。大人にとってもうつぶせって危険なのでしょうか?
●うつぶせになることでカラダに起こる変化
うつぶせによってカラダにどんな変化が起きるのか? 調べてみると、うつぶせ(腹臥位)になると、まず腹部の圧迫によって大動脈や下大動脈が圧迫され、静脈内の血流量が減少し、血圧が低下するそう。また、呼吸においては横隔膜が頭部側に移動し、腹部の圧迫とあいまって、肺が拡がりにくくなってしまうとのこと。
兵庫県市立加西病院のウェブサイト上には、寝たきり患者を作らないための腹臥位療法に関するコラムがあり、そこには腹臥位の注意点として以下のような記載があります。
“一番心配なのは、”骨折”と”窒息”です。 長い間寝たきりになっていた人は、骨がもろくなって折れやすくなっています。腹臥位になるときに無理な力をかけないようにしてください。また、頭を自分でもちあげられない人は、窒息の危険があります。腹臥位中は、そばにいて見守ってください。 腹臥位療法を始めるときは、事前に主治医の先生や、訪問の看護師さん等に相談してください。”(引用)
寝たきりの患者さんにとっては、ある一定の効果を期待できるようですが、自力で頭を持ち上げることができない人にとっては、窒息の危険があり無理な力をかけるのは危険ということ。通常、私たちは無意識のなかで呼吸をしていますが、肺のなかの呼気をすべて吐き出しているわけではなく、予備呼気量や残気量というものがあり、これらを合わせて機能的残気量と呼びます。
この機能的残気量、カラダの中でガス交換(取り込んだ酸素と血中の二酸化炭素の交換)に大きく関わるといわれている。しかし、体位によってこの機能的残気量には変化があり、立位や座位に比べ、臥位では15~20%程度減少するといわれているのだといいます。つまり、体位的に見ても、臥位は窒息しやすいということ。
子どもはもちろん、大人でも安易に人の臥位の上に乗っかる行為は、やはり危険。トラブルになったからと、マウンティングポジションでいさめるのではなく、私たちにはもっと別の解決策があるはず。命の尊さを考えることができるのが、私たち人間なのですから…。
(文・団子坂ゆみ/考務店)
※参考 宇都宮明美『体位と呼吸監理』