妻と夫の関係に何が!? 産後クライシス対策【関係向上編】

妻と夫の関係に何が!? 産後クライシス対策【関係向上編】

第13回 注目の「妻のお悩み」をまとめてチェック!
出産を機に、良好だった夫婦仲が急に悪化してしまう「産後クライシス」に陥っていませんか? 今回は出産を境に関係が良好になったカップルについて、コミュニケーションの特徴をみていきましょう。心理カウンセラー、キャリアコンサルタントの筆者が解説します。

親・夫婦になっていく時期の「3つのよろこび」

子どもが生まれて親に移行する期間は、ただの通過儀礼ではなく、夫婦が「私たち」家族になっていく大きなチャレンジ期間といえます。子どもが生まれ、関係が向上したという2割のカップル(※1)には、男女で内容に差はありましたが、以下の「3つのよろこび」の気持ちが生まれていました。

1. 子ども自身の存在が素晴らしい恵みである実感

多くの女性は、子どもを言葉で言い表せないほど愛しい存在として、すべてを受け入れて包み込むような愛情を感じているようです。

一方、多くの男性は、子どもを家族への気持ちを強めてくれる素晴らしい存在として、新たな絆と考えていることが多いようです。子どもをテレビより面白い、新たな楽しい友だちとして見る傾向もあります。

2. 自分自身の感情の変化や成長

子どもができたこと、親になったことで、自分がより成熟し大人になったと感じているようです。多くの男性は、仕事を単なる収入源でなく、より大きな人生の計画の一部として見るようになります。なぜなら、子どもは大きくなるにつれてお金が必要になるからです。出世や確実な収入源、仕事の安定性など、さまざまなことを考えるようになります。

一方、多くの女性は、親としての責任、新しい生命をつくり育てていくという責任を感じています。安全面の注意や環境への関心などに対する価値観が劇的に変わる人もいるようです。

3. 子どもによって強まる家族意識

おたがいをパートナーとしてだけではなく、「自分の子どものお母さん」「自分の子どものお父さん」として考えるようになります。

さらに、自分たちの親への共感が生まれ、より身近に考えることができるようになります。過去の祖先、子どもの将来など、自分自身が長い家族の鎖でつながれた一部である事実に感銘をうけることもあります。

夫と妻との間には子どもが作り出す新たな「生物的なつながり」があり、力をあわせて子どもを育てることによって新しい一体感、家族意識を体験します。同じ方向に成長しているという満足感が生まれます。

<出典>
※1 Belsky, J., Kelly, J. (1994) The Transition to Parenthood. New York, Delacorte Press.(ジェイ・ベルスキー, ジョン・ケリー(1995)子供を持つと夫婦に何が起こるか,草思社)

よろこびを感じるためのコミュニケーションとは

以上に挙げたよろこびを味わうには、まず「親になる」という移行期間におけるさまざまな違いや不一致に対し、どのように対処するかを学ばなければなりません。子どもの存在がどんなによろこびであっても、コミュニケーションの90%をおむつ替えの番や保育園への迎えの番などでの争いに費やしている限り、結婚の満足感は訪れないでしょう。

ここで重要になるのが、「コミュニケーション」と「摩擦管理スキル」です。

嵐の中で乗組員とともに船が沈むのを防ぐには、高度なチームワークが必要になります。困難な状況の中で力を合わせるには、自分たちの複雑な状況や考え、感情、知識を簡潔かつ明快に伝える方法を知らないといけません。これには平常時からのコミュニケーションの質と量も重要な役割を果たします。

移行期のコミュニケーションにおける断絶や混乱は、嵐を乗り切るだけのコミュニケーション技術をつけないまま移行期に突入してしまった状況から起きているともいえます。つまり、子どもが生まれる前に、2人の関係を確立するためにどれほどの時間とエネルギーをあてていたのかという結果でもあります。

多くのコミュニケーションを必要とせず、おたがいに独立した感情生活を送ることでよしとしていたカップルは、嵐に圧倒されて沈黙してしまうこともあるでしょう。「私たち」夫婦の関係を作り出すためには、まずは平穏時におけるコミュニケーションの質と量が必要です。
 
収入を得るための仕事は、給料や出世という見える形で対価や報酬が支払われ、達成感や成長感があります。ですが一方で、1日の大半を家の外環境で、外向きの自分で人間関係をうまく築き、なんとか毎日を切り抜けています。

家事や育児・ご近所づきあいといった仕事は、よろこびや楽しみもあり自分らしさが生かすことはできます。ですが一方で、報酬や対価は目に見えづらく、オンオフや納期といった時間の区切りもつけづらい仕事です。

以上の差を踏まえて、おたがいに「ありがとう」「助かったよ」「これ大変だったんじゃない?」といった感謝の表情や言葉は、支えであり男女ともに一番言われたい言葉です。この時、男性は自身のスキルや能力について、女性はコミュニティへの影響力や印象について、評価されたり感謝されたりすると、よろこびを感じるといわれています。

あなたが言われたいうれしい言葉、相手に言っていますか? 平穏時のコミュニケーションは、こんなことから増やしていきましょう。

また、出産を機に、2人の時間が減っていることも、そもそもの大きな要因です。コミュニケーションが自然と生まれやすいような外出や趣味などの行事、環境など、少し意識して時間を作り出すように考えてみるのもいいですね。

次回は、嵐といった非常事態のコミュニケーション「摩擦管理スキル」について説明します。

■この記事は編集部&ライターの経験や知識に基づいた情報です。個人によりその効果は異なります。ご自身の責任においてご利用・ご判断ください。

この記事を執筆・監修した人

石橋 麻衣子(筆名:やまもとこも)
<公認心理師・臨床心理士・キャリアコンサルタント> 10代の子の母。一般企業で20年勤務後キャリアチェンジし、現在は公的機関での教育相談、スクールカウンセラー、精神科クリニックで心理検査やカウンセリングに従事しています。自身の心身の状態が子どもや家族の成長にとても大事だと強く実感しています。自分も他人も大事にするコミュニケーションでよりよい関係や笑顔が生まれますように。
<公認心理師・臨床心理士・キャリアコンサルタント> 10代の子の母。一般企業で20年勤務後キャリアチェンジし、現在は公的機関での教育相談、スクールカウンセラー、精神科クリニックで心理検査やカウンセリングに従事しています。自身の心身の状態が子どもや家族の成長にとても大事だと強く実感しています。自分も他人も大事にするコミュニケーションでよりよい関係や笑顔が生まれますように。