九九以外はなんでも出来る!? 松田元太の吹替で初ディズニー映画を観た|藤田香織

九九以外はなんでも出来る!? 松田元太の吹替で初ディズニー映画を観た|藤田香織

「ディズニー映画で何がいちばん好き?」って訊かないで

シニア料金1100円で観たのに可愛いクリアファイルをくれました。さすがディズニー。太っ腹!

とかく映画とドラマを見ない人生を歩んできたので、世の中とのズレを感じることがままあります。

以前、関係性の薄い、ドッグランで飼い犬たちを見守る会繋がりの奥様ズによるその場しのぎ的社交会話で「ねぇねぇ、ジブリ映画のなかで何がいちばん好きー?」と訊かれたことがありました(誰かがジブリパークに行ってきた、と話したのを受けて)。

内心(これは正直に答えると面倒臭いことになるだろうか。適当に答えておいたほうがいいだろうか。ラピュタかな? みたいな。いやでもラピュタってバズーだっけ、パズーだっけ? 同意されてどこが好き? とか掘られたらもっと面倒臭いな、ここは正直に言ったほうがマシな予感……)と、2秒で考え、「観たことないからわからないです」と答えた結果、「ええーー! そんな人いるんだ! 人生損してるから観たほうがいいよ!」「私のおすすめは“紅の豚”かな」「ハウルは? ハウル、キムタクが声やってたんだよ!」と嫌味ではなく本気でアドバイス&おススメを受けました。

何かこう、よくわからない感情が湧き上がってきて、あやうく「じゃあ、みんなシバリョー(司馬遼太郎)の小説のなかで何がいちばん好きー? 私はなんだかんだで“跳ぶが如く”! あの時代、やっぱり面白いよね!」と国民的大衆作家を引き合いに出しそうになったのをイヤイヤイヤとかろうじて呑み込んだのですが、その時、脊髄反射で飛び交いがちな「人生損してる」を、まあでもちょっと本当にそういうとこあるかもな……と思いもしなくもないような気持ちになったのでした。

ジブリと同様に、絵本やテレビアニメで(プラスほんの一時期TDRオタでもあったので)シンデレラや白雪姫、ピノキオやダンボといった話は知っているものの、ディズニー映画もまた、まともに観た記憶はありません。50余年の半生でこれまで映画館に立ち寄ったのは20回程度しかないなのに、子どもの手を引くこともない身でジブリやディズニーの暖簾はなかなかくぐれなかったのです。歩いてきた道の途中にその店はなかった、みたいな。

しかし! このたび! ついに! 初めて! その暖簾(ディズニーだけど暖簾)をくぐることに。私の歩いているヲタ道に、思いがけずできたディズニー店は超実写映画『ライオン・キング ―ムファサ―』。

しかも人生初、日本語吹き替え版! いやー、こんな日が来るなんてなぁ。

九九以外はなんでもできる松田元太演じるタカにボロ泣き

パンフレットも900円(税込990円)だった。激安!びっくり!

『ライオン・キング』を観たこともない身でありながら「ムファサ」に入店したのは、推しグルのTravis Japan(トラジャ)の最年少メンバー松田元太(Travis Japan♪Tomonori Jinnai)が、ムファサの兄弟となるタカ(後のスカー)の日本語吹き替えを担うことになったから、というだけの理由です。

実はトラジャの最年長、川島如恵留は旧ジャニーズ入社以前に、劇団四季のミュージカル『ライオン・キング』でヤングシンバを演じた経験があり、トラジャは2/7がライオンキング関係者といっても過言ではありません。シンバとスカーがいるけどトラ! 熱い!

とはいえ、脇道を歩いてきたオタク(私のことです)は、ライオン王とはまったく関係することなく生きてきたうえ、予習しようにも追い付かず(年末進行真っただ中だったし……)知識ゼロに近い状態で映画館へ。

初日だったこともあり、珍しく(この連載を始めてからいつも平日昼しか行かないので毎回ひと桁観客だった)スクリーン場内には20人ほどの観客が。

というわけで、以下、ディズニー映画、アニメの吹き替え、ライオン・キング初体験という比較対象皆無で観た感想です。

もうほんと「え? そこから?」だと思われますが、意外とそんな人もいるよ、いるんじゃない? ってことで。

★そもそもムファサってつまり誰? あ、ムファサがこの後「ライオン・キング」になるってことなのか!

★ええと、ってことは、これはつまり「ライオン・キング」の前日譚ってことか。オッケー了解&理解。

★タカ=後のスカーである、っていわれても、その「後」を知らないからなー。

★ずっと洋画は吹き替えだと俳優の声色わからないから嫌、ってとこあったけど、アニメ(いえ超実写映画です)だったら別に吹き替えで良い気がしてきた。観てて楽ちんすぎるなこれ。

★そうそうムファサは尾上右近。『十一人の賊軍』女郎役の鞘師里保を観たい一心で『十一人の賊軍』に行ってきた! のとき調べて知ってる! けんけん! 鶴田浩二の孫! いい声してるなぁ。

★おおー元太だ元太! 声が可愛い! タカー、頑張れタカー!

★えっと鳥がザズー? サル(マンドリル)がラフィキ? 覚えられない。っていうか、ムファサとタカの区別もよくわからん。ええっと色の薄いほうがタカ? だよね……?

★いやちょっとムファサいい男すぎない?「サークル・オブ・ライフ」!「命の環」! こんなんそりゃ惚れるわー。心配ないわー!

★噂で聞いたビヨンセが声やってるっていうナラはいつ出てくるの? 出てくるの? あ、出てきてもこれ吹き替えだからビヨンセじゃないんだった。

と、呑気に無邪気に観ていたのですが、しかしまあ途中からは「……!! ううう、ぐう……はあ……あぁぁぁぁぁ……!!」と声にならない気持ちで胸がいっぱいに。しかも「ムファサ」と題された映画ゆえ、ムファサに感情移入して観る人が多いであろう作品なのに、自分はタカに思い入れがあるから、どうも周囲と比較して反応がずれているような。

わかる。タカの気持ちもわかる。大事に守られ生きてきたのに急にこんなことになって、そりゃ辛いよね。女の子の気持ちなんて考えたことなかったんだもんね。兄弟! ぼくが助けてあげて、ぼくの家族に入れてあげたムファサ! ずっとこうして一緒にいたい! って思ってたのにね。

♪兄弟の敵はこのぼくの敵だ♪ って歌ってたのに、自分がその敵になるなんて思ってもいなかったよね(泣)……!!

と、まあ心は千々に乱れまくりでした。

同時に。いやこれさ、こんなに千々に乱れていられるのも、吹替えに違和感がなかったからじゃね? とも気付いたのです。

いうても、私はTravis Japanヲタではあるものの、ファンになってまだたかだか3年。松田元太だけを激推ししているわけではないので、オーディションで勝ち取ったとはいえ、初吹き替えでこんな大作の大役に挑むのは、さすがに多少の心配もありました。実際、配役が発表されたときには、人気作にアイドルあてるのやめて欲しい、とか。はいはい話題作り乙てな声も見聞きしてしまった。

でも、さて、どうでしょう。

この吹き替え実際に観て、「これだからアイドルは……!」などと、言い出す輩はおられるのでしょうか。おられまい!

俄然楽しくなってきて、もうこうなったらこの後日譚である「ライオン・キング」を観ないわけにはいかない! と、スカパーのディズニー+に入り、劇団四季の「ライオンキング」のチケットも確保(有明四季劇場。5月公演)。

よっしゃ、掘っていくぞー! と燃えていたら、今、金曜ロードショーで放映されると知りました。

……うん、あるある。

でっかいパイセン映画告知もあったー!

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