妊娠中の食欲と眠りについて、NTT東日本関東病院の産婦人科で主任医長を務める杉田匡聡先生に聞いた。
●食欲を呼び起こす「お助け食材」を用意しよう
暑さで食欲が減退してしまう夏。とくにつわりのある妊娠初期は、食べものを受け付けなくなってしまうことも多い。
「つわりは血糖値が下がるとひどくなるので、朝やお仕事の帰りに気分が悪くなることが多いです。食欲がなく、アイスクリームやジュースしか口にできないようでしたら、それでもいいと思います」(杉田先生、以下同)
体重管理が気がかりな妊娠中。アイスクリームばかり食べるのは、体調面でも問題ないのだろうか。
「つわりのときは体重も減っていることが多いので、1日に3個も4個も食べるのではなければ、問題ありません。例えば、アイスクリームを食べて気分が落ち着いたら、みそ汁だけ飲んでみるのもいいかもしれない。血糖値があげられて、次の食事につなげられれば、妊娠中に食べてはいけないものは特別にないんです」
アイスクリームに限らず、チョコレートや果物など、自分が口にしやすいものを用意しておくのがいいそう。外出時にはキャラメルや飴などを持ち歩き、お腹がすく前に食べれば、血糖値が下がるのを防げるようだ。
「血糖値が上がって気持ち悪さが落ち着いても、匂いが気になって温かいごはんが食べられないときもあります。コンビニエンスストアの冷えたおにぎりやサンドイッチなどをうまく活用して、食べやすいものを見つけるといいでしょう」
●「だるさ」は脱水症状が原因の場合も
妊娠中にだるさや気分の悪さで感じるとき、つわりなどのホルモンによる影響を疑ってしまうこともあるだろう。しかし、原因はそれだけはないそうだ。
「脱水症状によって栄養がとれなくなり、だるさや眠気を感じているのかもしれません。これは、熱中症の一歩手前の状態です。つわりで食事がとれていないときはビタミンが不足している可能性もあるため、点滴で補給することもあります。場合によっては、入院していただくこともあります」
病院で尿検査を受ければ、脱水症状かどうかの判断ができるそう。不安を感じたら、自己判断せずに受診するのが得策のようだ。
●眠れないときは、無理に寝ようと思わなくてOK
妊娠中は通常よりも体温が高いこともあり、とくに寝苦しく感じる夏の夜。「眠れない」には、2種類あると杉田先生は言う。
「眠りに入るまでに時間がかかるタイプと、眠っても夜中に目が覚めてしまうタイプです。前者の場合は、就寝時間の前からエアコンや扇風機などを使って室温調整をするといいでしょう。ご本人が快適だと感じる温度に設定してもらえればいいですが、おなかにはタオルケットをかけて冷やさないように気をつけてください」
さらに、杉田先生は「妊娠後期はおなかの重さも5Kgほどになり、寝付けない方も増えてきます。母体にかかる重さを軽くできるよう、横向きに寝るなどご自身で工夫してみるといいですね」とも話します。
後者の「夜中に目が覚めてしまう」ことも、妊娠中はあまり特別なことではないという。
「お腹が大きくなると膀胱が圧迫されて、尿が少したまっただけでトイレに行きたくなります。夜中にトイレに起きることもあるでしょう。一度目が覚めると、なかなか寝付けない人は、無理に眠る必要はありません。寝ないといけないとストレスをためるよりも、本を読むなどして眠気が訪れるまでリラックスして過ごすといいですよ」
睡眠不足でだるくなったり、日中に眠くなったりした場合は、昼寝がおすすめだそう。
「あまり寝すぎると昼夜逆転してしまうので、15分~20分くらいを目安に考えてください。会社勤めをされている方は、デスクでウトウトするくらいでいいと思います」
妊娠中はおなかの赤ちゃんが気になって、ちょっとしたことで不安を抱えてしまうこともある。しかし、「こうしないといけない」という考えに縛られすぎるとストレスもたまってしまうもの。お母さんが心地よく過ごせる方法を選んで、だるさを解消するのがよさそうだ。
(取材・文:畑菜穂子 編集:ノオト)