奥平大兼インタビュー「現実世界で起こっている問題が、ドラマをきっかけに良い方向へ変わってくれたら」<御上先生>

奥平大兼インタビュー「現実世界で起こっている問題が、ドラマをきっかけに良い方向へ変わってくれたら」<御上先生>


日曜劇場「御上先生」で神崎拓斗役を演じる奥平大兼 / (C)TBS
1月19日(日)よりスタートする、松坂桃李主演の日曜劇場「御上先生」(毎週日曜夜9:00-9:54、TBS系)。このほど、本作で“官僚教師”御上孝(松坂)が担任を務める隣徳学院3年2組の生徒・神崎拓斗役を演じる奥平大兼にインタビューを敢行。自身の役どころや作品に対する印象、さらには共演者や現場でのエピソードなどについて幅広く語ってもらった。

■「御上先生に会ったら逃げ出しちゃうような気がします」

――日曜劇場のドラマへのご出演は今回が初めてかと思いますが、本作への出演についての思いなどをお聞かせください。

日曜劇場にはたくさんの名作がありますし、そういった枠に出させていただくのはとても光栄だなと思うのですが、正直決まった時はそこまで意識をしていませんでした。「日曜劇場か、すごいな」くらいにしか思っていなかったんですが、 日曜劇場特有の、顔の前までカメラが寄るカットがあるじゃないですか。その形で撮影をしてみて、「うわ、日曜劇場だ!」と初めて感じました。

実際に自分がそういった撮影をやってから、これまでの日曜劇場に出てきたシーンが頭の中にパッと出てきて、「すごいチームでやらせていただいてるんだな」ということを、クランクインしてからやっと実感し始めました。

2023年に学園モノをやらせていただいて、(生徒役が)クラス全員キャスティングされている作品は2回目なんです。やっぱり大人数でお芝居するってすごく大変ですし時間もかかるものだという思いはあったんですが、楽しみがとても多くて。

はじめましての方もたくさんいますし、その一方で何人か共演したことのあるキャストがいるっていう楽しみはありました。あとは前の学園モノとは役も全然違いますし、「あとどのくらい学園モノができるんだろう」っていうちょっとした寂しさもあったり(笑)、いろんな気持ちを抱きながらクランクインしました。

――「御上先生のような先生がいたら自分はどうしただろう」など、台本を読んで御上先生に抱いた印象や、実際にドラマの現場で感じたことを教えてください。

大前提として、この作品に出てくるキャラクターたちはみんな本当に強い人ばかりで。神崎もそうですし先生も他の役の人たちもみんな、何かの問題に対してまっすぐにぶつかっていくことがとても強いなって、演じていてすごく思います。

現実世界で自分が同じ立場に立たされた時、同じような行動はなかなかできないですし、そう考えると僕が御上先生に会ったら、正直「なんだこの先生」と思って逃げ出しちゃうような気がします。いろんな問題に対して正面からぶつかる勇気も覚悟もないので。

■「神崎拓斗」を演じる上での難しさ

――今回演じられる神崎拓斗という役どころをどのように演じていきたいですか。

(隣徳学院3年2組の)生徒紹介の中で「クラスのカリスマ」と書いてあったんですが、自分ではあんまりその自覚はなくて。言葉は合っているかわからないですが、子供が大人ぶって背伸びしているような感じで。

神崎はいい家庭で育って、自分なりにやりたいことをやってきたような子で、今まで(同級生などに)打ち負かされることも多分なかったと思うんですが、御上先生が来て初めて家族以外で打ち負かされたような気持ちになっていくんです。

台本はあるので先の展開はわかるんですが、最終的に神崎がどういう風に変わっていくのかというのは僕も全くわかっていなくて。今3話ぐらいまで撮影しているんですが、その段階では自分をエリートというか「完璧な人間」のように思ってた神崎がこんなに打ち負かされて、どうしようもない気持ちというか。

自分がどうしたらいいのか全くわからないし、でもクラスの子たちにはちょっと堂々としていたいし…という神崎の姿を毎シーンどう表現すればいいのか、僕自身も結構難しくて。そこは監督とかとよく話し合っています。

――台本を拝見しても、神崎は迷うことが多い役だなと思いました。

そもそもストーリー上で神崎が悩むことが多すぎますし、当たり前ですが簡単な役ではないと思うので。自分が神崎を演じる上で「こうしたい」っていう部分はもちろんありますが、カメラを通して物語に乗せて最終的にドラマを見てくださる方に届くものなので、どうするべきか日々悩んでいます。

やっぱり僕は客観的に見れないので、そういう時に監督とかスタッフさんの意見を聞くととても参考になります。「今こう見えてるんだ」とか、「本当はそういう風にしたかったつもりはないけど、そう見えてる時があったんだ」みたいなことがあるので、結構話し合っている時間は長いと思います。

■「松坂さんと一対一でお芝居している時は本当に楽しい」

――御上先生と神崎は1話からバチバチにやり合っていますが、松坂桃李さんの印象はいかがですか。演技を通して感じられたことなどを教えてください。

松坂さん自身はものすごくラフな方で。神崎とは1話からバチバチなので、ある程度距離を置くのかなと思っていたんですが全然そんなこともなく、すごく気さくに話しかけてくれました。お芝居する上で緊張感はもちろんあるんですが、ガッチガチに緊張しないで済んでいるのは、本当に松坂さんのお人柄のおかげかなって思います。

一緒にお芝居していてすごいなと思うのは、松坂さんは難しいことを長ぜりふで淡々と喋っているんですが、せりふを全然噛まないんです。僕はめちゃくちゃせりふを噛むので(笑)、「ヤバっ!」と思いながら見ていますし、一対一でお芝居している時は本当に楽しいです。

僕が感じただけなので、実際松坂さんがどう思われているかはわからないですが、(松坂さんは御上先生として)神崎がいろんなことを受け止められるようにお芝居してくださっている感じがして。僕もそのおかげでお芝居が変化することもあるので、一緒にやっていてリアルタイムでそういうことを感じられるのはとても楽しいなって思います。

――撮影現場で生徒役の皆さんがワーッと盛り上がっている空間を、松坂さんはどういう目で見ていらっしゃるのでしょうか。

ニコニコしてますね。本当に先生みたいな目線で、ニコニコしながら見ていて。たまに生徒の子たちの会話に混ざる時もありますし、結構達観して見てる時も多いですね。

――松坂さんに対しては、これまでどのような印象をお持ちでしたか。印象に残っている作品などあれば教えてください。

やっぱり「新聞記者」(2019年)ですね。「新聞記者」の藤井道人監督とは僕もご一緒させていただいたこともあるので、一番印象残っています。ただ、僕は基本的に役者さんのイメージみたいなものはあんまりなくて。

作品として見ているのはいろんなところを切り取って編集されたものですし、実際にどういうお芝居するかは生でやってみないと僕はわからないので、会う前のイメージみたいのは全くなかったです。本当にどういう方なんだろうということぐらいしか。

――では、会ってから「イメージが変わった」ということもなかったでしょうか。

強いて言えば、こんなにラフに話してくださるんだっていうことですかね。ちょっと失礼な表現になってしまうかもしれませんが、本当に近所の人と話しているような感覚で。それくらいラフに話せる方です。

■親交のある蒔田彩珠との共演で感じた“不思議な感覚”

――撮影をしていて感じる学園ドラマならではの面白さや難しさはどんなところでしょうか。

やっぱりみんな同世代なので、シンプルに(現場が)うるさいですね(笑)。本当に学校にいるような感覚になれるというか。ある程度の年齢差はあるとは言え、みんなタメ口になってきてるくらいで。自分が高校生に戻ったかのようなくだらない話もしますし、「ああ、学園モノやってるな~」ってどこでも感じられるので、それはすごくいいなと思います。

大変なことは、やっぱり教室でのシーンですね。生徒はもちろん全員教室にいますが、シーンによっては当然せりふがないこともあるので、そういう時に集中力がどうしても続かなかったりすることもあります。

とは言え、自分が話すシーンじゃなくてもリアクションなどをしなきゃいけない瞬間もあるので、いかに集中力を温存しておくかというのは、僕自身以前の学園ドラマでものすごく勉強になった部分でした。そこはみんな苦労しているのかなと思います。

――同世代の俳優さんたちがたくさんいると、刺激を受けることも多いのでしょうか。

刺激というのかわからないですが、みんなそれぞれに色があってすごい面白くて。それこそ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」(2023年、日本テレビ系)というドラマで窪塚愛流くんと一緒だったんですが、僕は愛流の芝居がすごく好きで。

本当に彼にしかできないようなお芝居をするんですが、今回はその時とまた違った感覚を覚えました。もちろん役柄は違いますが、共演してから1年経った間にみんないろんな現場を経験しているので。他の共演が2回目の子とかもお芝居を見ていて楽しいですし。

はじめましての子も「あ、こういうお芝居をする子がいるんだ」と知るきっかけにもなりましたし、そういう部分は学園ドラマをやってないと見れないと思うので、とても面白い経験です。

――同世代の俳優さんが多い中で、共演を楽しみにしていた人や、実際に共演してみて感じたことを教えてください。

これは蒔田彩珠さんですね。蒔田さんと共演するのは初めてなんですが、プライベートで親交があって。僕がデビ ューして1年目の時に、いろんな映画賞にお邪魔させていただいたんですが、その時にちょうど蒔田さんも「朝が来る」(2020年)という映画で新人賞や助演女優賞などを獲得していて。

その時はまだ全然お話もしたことなかったんですが、頭の中には「同世代ですごくいいお芝居する子がいるんだな」というのが残っていて。いつか共演してみたいなと思っていたらうちの事務所に来て、そしたら今回ドラマも一緒になって、結構会う機会が多くなっています。

今回のドラマで、蒔田さんは富永っていう役なんですが、富永は神崎の幼なじみで。神崎も富永に対してはちょっと接し方が変わるような、そういう役柄をやってるので、富永とのシーンは面白いですし、 蒔田さんと実際にお芝居するのも、クランクインする前からすごく楽しみでした。

――蒔田さんとはお互い出演が決まってから何かお話しされましたか。

「次(のドラマ)一緒じゃん!」くらいしか話していないんです。普通は仕事で出会ってすごく仲良くなったらプライベートでも遊ぶようになると思うんですが、たまたまプライベートで知り合ってからの共演だったので、一緒にお芝居をするのがちょっと違和感というか、最初気持ち悪くて(笑)。楽しいんですけど慣れないというか、不思議な感覚はありました。

――生徒役の皆さんとは、現場でどのように過ごされていますか。現場で流行ってることなどあれば教えてください。

最近のニュースで言うと、前室にクリスマスツリーが出てきました。すごく雰囲気があっていいなと思います。あと、お菓子の減る量が半端じゃないです(笑)。みんなもうお菓子を食べまくっているので、あっという間になくなるんです。それが見ていて面白いです。みんな楽しそうだなって思いますね。

流行っていることは、みんなめちゃくちゃ写真を撮っています。自前のカメラを持参して撮っている子 もいますし、シンプルにスマートフォンで撮ってる子もいて。みんな撮った写真を共有してくれるんですが、それがものすごい量で。

僕は普段映画の現場が多いんですが、映画も1カ月撮影があったらその期間中みんなでオフショットとかを撮っていて。それも結構な量になるんですが、その1カ月分と同じぐらいの量の写真をみんなが1日で撮ってます(笑)。

もちろん自分が写っていない写真もたくさんあるんで、まずは自分が写っている写真を探すのが大変ですし、その中で使えそうな写真を探すのも大変です。でも、僕はなかなか自分でオフショットを撮ることがないので、皆さんが撮ってくれるからすごくありがたいですし、いつか各個人のSNSとかに上がると思うので、どんどん見せていけたらなって思います。


神崎(奥平大兼)は気になる事柄について自らの足で取材を行っていく / (C)TBS
■「動物のニュースとか幸せな話題ばっかり見ていたい」

――神崎における御上先生のように、奥平さんにとって衝撃的だった出会いはありますか。

福井雄太プロデューサーです。「最高の教師―」のプロデューサーさんなんですが、会った時に「なんだこの人は」っていうくらい、お芝居に対してものすごく積極的に来てくれる方で。

自分が演じる役に対して、監督とかが演出つけたり、「神崎は今こういう立場だからこういう風に思った方がいいかな」とか「こういう風に見せたい」とかって仰ってくれるのは当たり前ですが、プロデューサーさんがそこまで熱くなって自分が演じている役や作品に対して意見を言ってくれたり、相談に乗ってくれたりするのって僕はすごくうれしくて。

それを最初に感じたのが福井さんで。そういう熱意がある方と一緒にやっているとこっちも本気になれるし、本気でやるといいお芝居もいいドラマもできると思うので、そういう方と出会えたのはうれしいです。今回のドラマの飯田和孝プロデューサーも、そういう風に話し合ってくれるのですごくありがたいですし、ものすごく熱をこめてお芝居できてうれしいですね。

――神崎はジャーナリスト志望の生徒ということですが、奥平さんご自身はニュースやジャーナリストなどに関して、演じる上で研究したことはありますか。

(役柄のバックグラウンドとして)完成しちゃうと面白くないですし、そういったことは特にしていませんでした。神崎のお父さんがそういう仕事をしているのですが、神崎自身はその仕事に対して憧れている部分はもちろんありながらも、反発心のようなものも持っていて。

例えば取材であったりとか、書き方とか、また違ったアプローチをするような子だと思うんです。なので、「一般的にこういう風にする」とかベース的な部分は別としても、あんまり決めすぎちゃうともちろん役はできると思うんですけど、もうちょっと自分の中で楽しみたいな部分があったので、そこまで深く勉強はしてませんでした。

――記者クラブの話なども出てきますが、そういったことはご存知でしたか。

台本見て初めて知りました。それでちょっと調べたりすることはありました。記者クラブに限らず、知らないことも結構たくさんありました。

――奥平さんご自身は、どんなニュースに興味がありますか。

幸せなニュースですね。もちろん世界で何が起こってるとか、日本で何が起きてるとかも見るのは大事だと思うんですけど、僕は動物のニュースとかそういうのを見てる方が(好き)、というか、そういうニュースばっかり見ていたいです(笑)。

■「視聴者の皆さんが知るきっかけになることもたくさんあると思います」

――2025年最初のドラマですが、2025年はどういう年にしたいですか。

このお仕事に対して目標があんまりないので、成長できるならしたいし、現状維持すべきことはすべきだと思うんですけど、今回北村一輝さんとご一緒させていただいて。北村さんとお会いしたのが3年前くらいで共演するのは2回目なんですが、その時に僕の印象の話をしてくださったんです。その中で「自由にお芝居する感じがなくならないでほしいな」って仰ってくださって。

いろんな現場を重ねていくうちに、技術的なこととか、「このタイミングでこの役はこういう風に見られた方がいい」とか、客観的に見たようなことを気にする機会が結構多かったんです。それをちゃんと考えながらお芝居するってすごい大事だと思うんですが、それにとらわれすぎるのも良くないなって思ったので、2025年はそういうことを一回忘れてみようかなと思います。

本当にピュアに、「もうちょっとどうにかならない?」って言われるくらい自由にやってみてもいいのかなって思うので、1回くらい試してみたいなと思ってます。

――本作は学園ドラマになりますが、奥平さんの考える学園ドラマの楽しみ方はどのようなものでしょうか。また、今回は“官僚教師”という特殊な教師が学校にやって来る作品ですが、この作品ならではの楽しみ方を教えてください。

学園ドラマの楽しみ方は、見てくださる視聴者の皆さんの目線では、やっぱりこれからの役者さんをたくさん見れるのが面白いところなのかなと思います。

学園ドラマで素晴らしい作品はこれまでたくさんあるし、そこから売れた方とかすごく注目を集め出した方もたくさんいると思うんですが、学園ドラマってみんな仲は良いけど、少なからず同世代を意識する場でもあるんです。だからこそ役者目線としては頑張ろうと思いますし、これから出てくるような子の出世作になりやすいんだと思うんです。

そういう子を見れることは、見てくださる方にとっては面白いと思いますし、あとはリアル高校生の子もいるので、「今の高校生」を知るきっかけになるというか。大人の方々が過ごしてきた高校時代と僕の世代、今の高校生もみんな時代も感覚も違うと思うので、これから大人になっていく子たちが今何をどういう風に感じているのかを見られることも、学園ドラマならではの楽しめる部分かなと思います。

その中で「御上先生」は、普通に生きていたら触れないような話とか、ちょっと政治的な話とかが出てくるので、そこに対してちゃんと見るきっかけになる作品だと思っていて。僕も台本を読んでいなかったら多分知らなかったことってたくさんありますし、きっとこのドラマを見てくださる方々も「こんなのあるんだ」って知るきっかけになることもたくさんあると思います。

いろんな制度とか、現実世界で問題になっていることって知られにくい部分もたくさんあると思うので、それを知っていただくきっかけになるだけでもとてもいいと思いますし、ドラマを機にいい方向に変わっていったらうれしいですね。

ドラマといういろんな人が見れる作品の中で、こういうちょっとダークなところを見せられるというのも、TBSさんに「ありがとう」という感じです(笑)。キャストだけでなく監督、スタッフさんもみんな熱がこもっているので、それを視聴者の皆さんに届けたらどう感じていただけるのかなっていう。知るきっかけになるというのも含めて、すごく楽しみだなと思っています。

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