吉岡里帆 / ※2024年ザテレビジョン撮影
俳優の吉岡里帆が1月15日に32歳の誕生日を迎えた。2年前にキャリア10周年を迎え、ますますドラマ、映画、舞台と第一線で活躍を続ける吉岡。そんな彼女が演技の仕事で大切にすることとは。(以下、出演作品のネタバレを含みます)
■朝ドラでヒロインの娘の学友を演じて注目される
1993年1月15日、京都府生まれの吉岡。地元にある東映太秦映画村に毎年行っていたそうで、映画やドラマは身近なものであり、大学時代に見た学生演劇にも感銘を受けたという。そんな中で生まれた俳優の夢。小劇場などで演技を経験する。また、メジャー映画「天地明察」(2012年)にエキストラで参加した際に滝田洋二郎監督から勧められたこともあって上京する思いを強くした。アルバイトを掛け持ちして資金を捻出し、東京の養成所へ通う日々。TV番組や雑誌のインタビューで明かしてきたその頑張りから、俳優にかける情熱がどれほどのものだったかが分かる。
20歳で芸能界入り。映画「明烏」(2015年)で“オン眉”の強烈なヘアスタイルにしてキレキレの演技でコメディエンヌの才能を発揮していたが、幅広い世代に注目された作品というと、連続テレビ小説「あさが来た」(2015-2016年、NHK総合ほか)だろう。実はヒロインオーディションで最終選考まで残るも落選。
しかし、制作陣の目に留まり、波瑠演じるヒロイン・あさの娘の学友役でレギュラー出演をつかんだ。吉岡演じる田村宜(のぶ)は丸いメガネをかけたキュートさで人気を博したが、その後の朝ドラでたびたび同じようなメガネっ子を演じた俳優がブレイクしているのも不思議なものだ。
吉岡里帆 / ※2024年ザテレビジョン撮影
■悪女役で鮮烈な印象を放つ
朝ドラ放送後にスタートしたドラマ「ゆとりですがなにか」(2016年、日本テレビ系)で民放連続ドラマ初レギュラーに。そこから「死幣-DEATH CASH-」(2016年、TBS系)、「メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断」(2016年、フジテレビ系)、「カルテット」(2017年、TBS系)と4期続けて連続ドラマに出演した。
その「カルテット」で、また鮮烈な印象を残す。同作は、松たか子演じる主人公ら偶然出会った演奏者の男女4人が弦楽四重奏(カルテット)を組み、紡がれる大人のラブストーリー×ヒューマンサスペンス。吉岡は、ライブレストランのアルバイト店員・来杉有朱を演じた。元地下アイドルの“魔性の女”、主人公たちをひっかきまわす役どころで、最終回ではお金持ちの外国人男性を連れて現れ、指輪を見せつけながら「人生、チョロかった!」と高笑い。それが、うそか本当かも含めて、視聴者はあぜん、騒然とした。
目の奥が笑っていないというキャラクターに見事に応え、物語のスパイスとして見る者を引き付けた。朝ドラの“のぶちゃん”からわずか1年後、表情の表現や長ぜりふもよどみなくこなす力量と共に、演技の幅の広さを見せたのだ。
■俳優として「細やかに真っすぐ誠実に作品に向き合う」思い
ドラマ「カルテット」では、第92回ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演女優賞と、第7回コンフィデンスアワード・ドラマ賞&コンフィデンスアワード・ドラマ賞 年間大賞 2017で共に新人賞となったほか、同作を含む評価で2018年のエランドール賞新人賞・TVガイド賞も受賞した。
賞を一つの目安とするならば、ヒロインを務めた映画「パラレルワールド・ラブストーリー」と視力を失った主人公を熱演した映画「見えない目撃者」(ともに2019年)で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞を、新人アニメ監督のアツい奮闘を丁寧に表現した主演映画「ハケンアニメ!」(2022年)で第45回山路ふみ子映画賞女優賞や第46回日本アカデミー賞優秀主演女優賞などを獲得し、着実に演技派俳優として歩んでいる。
2024年公開の映画「正体」でも、第49回報知映画賞助演女優賞に輝いた。公開後にはSNSで「吉岡里帆の抑えた演技が印象的」「泣いてしまった」「すごく響いた」「あらためて演技のうまさを感じた」などの反響があった作品だ。
同賞の表彰式で吉岡のスピーチは涙にぬれていた。同作に出演したことで役者として「一筋の光が見えるような体験を現場で何度も」したという吉岡。デビューからずっと葛藤の日々だったと明かし、「いつだって心の奥のほうでは『誰かのためになるような仕事がしたい』『主演の人が輝けるように素晴らしい共演者でいたい』『監督にこの子を選んでよかったと思ってもらえるような人でいたい』とか、情熱はあふれているのに、どうしても空回りしてしまう日もたくさんありました」というのが、この賞に選ばれたことでこのスタンスでいいと思えての涙だった。
そして「これからも細やかに真っすぐ誠実に作品に向き合って精進していきたいと思っております」と未来を見据えた。同時に、吉岡がこれまでもどれだけ真摯(しんし)に役に向き合っていたのかが分かる言葉だ。
■2025年も出演作が相次ぐ活躍
コメディエンヌとしての振り切った演技も、心がザワザワする悪女の演技も、映画「正体」などでのシリアスな演技も、カップうどんのCMで見せた、あざとかわいい演技も、すべて吉岡が「向き合って」出来たものだ。それは2025年も続く。
1月19日(日)スタートの日曜劇場「御上先生」(毎週日曜夜9:00-9:54、TBS系※初回は25分拡大)に始まり、2月7日(金)には映画「ファーストキス 1ST KISS」が劇場公開され、水上恒司とW主演する映画「九龍ジェネリックロマンス」も年内に劇場公開予定。
3月は蓮佛美沙子との二人芝居「まつとおね」の公演に挑み、3月19日(水)からはディズニープラスのスターでドラマ「ガンニバル」シーズン2の独占配信がスタートする。ヴィレッジ・サイコスリラー大作となる「ガンニバル」で、吉岡は柳楽優弥演じる主人公の警察官・阿川大悟の妻・有希の役。失語症の娘のことで悩みながら、正義感の強さから暴走してしまうこともある夫を支える優しさと強さを丁寧に見せていた。衝撃の物語の完結編となるシーズン2のティザー予告では有希が男たちに捕らわれるピンチのシーンが。シーズン1の際には地上波では難しい過激な描写も話題となった同作での、吉岡の迫真の演技に期待が高まる。
また2026年には初出演となる大河ドラマの「豊臣兄弟!」(NHK総合ほか)で、仲野太賀が扮(ふん)する主人公・豊臣秀長の正妻となる慶(ちか)役が決定している。
「真っすぐ誠実に」作品を思う吉岡が盛り上げてくれるに違いない。
◆文=ザテレビジョンシネマ部
配信: WEBザテレビジョン
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