友人や知人が統合失調症を患ったら、何ができる?

第3回 もしものために知っておきたい、統合失調症について
身近な人が統合失調症かもしれない。そんなとき、どんな接し方をするのがよいのか。全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)事務局長の小幡恭弘氏に聞いた。

●関係によってはご家族に相談を

「家族ほど近い距離ではない友人や知人、職場の人の言動に対し『もしかして統合失調症かも』と思った場合、素人判断は危険です。本人が通勤や通学ができている状況であれば、様子をみながら接しましょう」(小幡さん 以下同)

統合失調症を患うと、頭の中で思考がまとまりにくく、順序立てて話すことが難しくなる。そのため、唐突に脈絡のない話に飛んだり、現実的にありえないような話をくり返したりする傾向にある。そういうときは「どうしてそう思うの?」と深く掘り下げず、否定もせず、淡々と話を聞いているのがベスト。

「もしも本人のご家族と交流があるのであれば、状況を説明し、受診を促すことで治療を開始する機会ともなります。一方で、家族と本人の関係性により、本人に問い詰めて家族間の関係性が悪化する場合もあるので、一概にこの方法がよいとはいい切れません」

とはいえ、家族に報告したら「実は前からおかしいと思っていた」と、受診につながるケースもあるので、本人と家族の関係性をみながら、できるようなら受診を勧めよう。近しい相手であれば、あなたの話に耳を傾けてくれる可能性もある。

職場の人の場合、会社内に産業医がいれば相談してみるのも手だ。また、どのように接していいか迷った場合は、保健所や地域にある精神保健福祉センターの窓口でアドバイスをもらうのもいいだろう。

ハート型の雲

●正しい知識で見守っていく

統合失調症は、本人の心のエネルギーが低下しているなかで、言いたいことがうまく伝えられない、表現できない、というストレスがかかり、本人の苦痛は計り知れないものだ。

「よほど関係性が近いものでない限り、統合失調症を発症した知人と、それまでのように良好な関係を続けるのはなかなか難しいのが現状です。悪化している状態の場合、言動についていけなくなり、疎遠になるケースが多いといえます」

悲しい話だが、中途半端な親切心で接し続けると、自らもストレスとなり、統合失調症への偏見を生むきっかけとなってしまうこともある。自分のできる範囲で受診の機会を探りながら、治療が始まったらそっと見守る、という姿勢でいよう。

統合失調症は100人に1人が罹患するといわれ、決して珍しい病気ではない。適切な薬物治療によって症状を抑えられるが、周囲の人間が気づく頃には症状が進行してその分治療にも時間を要する。

もしも周りの誰かが患ったとき、動揺したり、必要以上に怖がったりせず、力になることができるよう、正しい知識と理解をもつことが理想だ。
(ノオト+北東由宇)

話をお聞きした人

小幡恭弘
小幡恭弘
公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)
社会福祉士。日本福祉大学社会福祉学部卒業。精神障害者共同作業所、精密機器製造業、社会福祉法人施設長、部長など経て、平成28年より事務局長を務める。
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統合失調症を正しく理解するために
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精神障がい者と家族に役立つ社会資源ハンドブック(改訂版)
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