「フレイル」という言葉をご存じですか? 高齢者における虚弱状態を指し、糖尿病や高血圧といった生活習慣病と深い関係があります。フレイルは糖尿病やサルコペニア(筋肉量・筋力の低下)を引き起こしやすく、一方で生活習慣病がフレイルを進行させる悪循環に陥る可能性もあるのです。今回、「フレイルと生活習慣病の関係性」について、牧迫飛雄馬さんに詳しく解説してもらいました。
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監修理学療法士:
牧迫 飛雄馬(理学療法士)
2001年国際医療福祉大学理学療法学科卒業、2009年早稲田大学スポーツ科学学術院博士後期課程修了。国際医療福祉大学病院、リハビリ推進センター株式会社、札幌医科大学特任助教、日本学術振興会特別研究員(PD)、ブリティッシュコロンビア大学(Research Fellow)、国立長寿医療研究センター予防老年学研究部健康増進室長を経て、2017年より現職。日本老年療法学会副理事長、日本転倒予防学会理事など。
編集部
糖尿病とフレイルの関係について教えてください。
牧迫さん
糖尿病とフレイルは相互に関係します。つまり、糖尿病を有する高齢者ではフレイルになりやすく、フレイルの高齢者では糖尿病の発症リスクが高まります。血糖値とフレイルの発症リスクはU字型の関連性があるとされています。高血糖だけでなく、低血糖の状態も身体機能の低下や転倒の危険を高めることとなり、フレイルのリスクを増大させることにつながります。
編集部
糖尿病患者はサルコペニアにも関係しているのでしょうか?
牧迫さん
そうですね。糖尿病の患者さんはサルコペニアになりやすいと言われています。糖尿病の患者さんがサルコペニアに陥る要因のひとつには、糖の代謝を調節して血糖値を一定に保つ働きを持つインスリンが関係します。糖尿病の患者さんは、血糖を下げるインスリンの作用が不足し、筋肉量・筋力が低下しやすいことが知られています。筋肉量が減少して筋力が低下すると、さらに活動量が減少してしまい、インスリン抵抗性が進みやすくなり、糖尿病が悪化する危険も高くなるという悪循環に陥ります。
編集部
その他、生活習慣病もフレイルと関係するのでしょうか?
牧迫さん
多くの生活習慣病がフレイルと関係します。例えば、高血圧はフレイルや脳梗塞のリスクとなる脳内の白質病変と関連する可能性が示唆されており、高血圧による臓器障害の進展にフレイルが影響する可能性があります。その他、慢性腎臓病を有する高齢者では多くがフレイルに陥っていることが懸念されます。腎臓病が進行している場合、タンパク質の量を抑えた食事が必要となり、筋肉が減りやすい状態であることなどが原因のひとつに考えられます。
※この記事はMedical DOCにて【「糖尿病患者」はフレイルに要注意! その理由と対策を理学療法士が解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
配信: Medical DOC
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