近年、ヴィーガンが日本でも注目を集めていますが、「どんなメリットがあるのか」「栄養状態に問題はないのか」といった疑問を感じている方も多いのではないでしょうか? ヘルシーで健康に良いとされる一方、ヴィーガンの食事には少し難しいイメージがあるかもしれません。 そこで、今回はヴィーガンの食事に関するメリットや注意点について、本人もヴィーガンである「SUGAR」の佐藤先生に解説していただきました。
≫ 【イラスト解説】老化を早める食べ物3選! 老化しないために今食べるべきものとは…?
監修医師:
佐藤 将人(SUGAR LLC)
「健康的に豊かに生きる」を理念に人的資本経営コンサルティングを手がける企業SUGAR代表医師。宮城県仙台市を拠点に、社員の心身のメンテナンスや企業の組織運営などの経営を支援する事業を展開。医学の知見を生かし肉体改造してシックスパックを達成したり、精神心理的知見からメタ認知的活動に従事。東北大学医学部医学科卒業、日本医師会認定産業医、中小企業診断士、労働衛生コンサルタント(保健衛生)臨床心理士、JSPO公認スポーツドクター、日本肝臓学会専門医、日本外科学会専門医、元仙台市食育推進会議委員、ヴィーガン。
ヴィーガンとは? 食べられない食品と健康効果
編集部
はじめにヴィーガンについて教えてください。
佐藤先生
ヴィーガンとは、「完全菜食主義者」と呼ばれる人たちのことで、動物性食品を一切摂取しないライフスタイルを指します。食事内容としては、赤身肉や白身肉・魚介・乳製品・卵・蜂蜜・ゼラチンなどを避け、野菜や果物・豆類・穀物・ナッツなど植物由来の食品が中心となります。ヴィーガンの考え方の一つには、「動物を苦しめない」という倫理的な側面も含まれており、食品に限らず、皮製品やシルク、ウールなどの動物由来の製品も使用しないことが特徴です。ヴィーガンの本筋からは離れるかもしれないですが、環境や動物愛護の側面以上に、私のように健康の最適化の方法としてヴィーガンのスタイルをとっている人もいます。
編集部
食事内容が限られると思うのですが、ヴィーガンのメリットってどのような点にあるのですか?
佐藤先生
ヴィーガンの食事は、動物性脂肪やコレステロールが少なく、植物性の食物繊維や葉酸、カルシウム・マグネシウム・ビタミンCが豊富です。そのため、虚血性心疾患やがんの発症リスクが非菜食者に比べて少ないとの報告があります(1)。カロリーも抑えられるため、肥満や高血圧の予防など健康寿命を長くすることも期待できます。また、食物繊維を摂ることで腸内環境が整い、お通じが良くなる人もいます。
編集部
野菜を食べるから生活習慣病の予防になるのですね! 反対に、ヴィーガンで気を付けるポイントがあれば教えてください。
佐藤先生
はい。ヴィーガンの食事では、一般的にビタミンB12やビタミンD、カルシウム、鉄などの栄養素が不足しやすくなっています(2)。特にビタミンB12とビタミンDは、動物性食品からしか摂取できないため、サプリメントや健康食品から補う必要があります。また、n-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)も魚介類を食べないことで不十分になりがちです。
編集部
ヴィーガンの食事を始める場合、知っておくべきことはありますか?
佐藤先生
ヴィーガンの食事は動物性食品を完全に排除するため、栄養バランスを取るのがやや難しくなっています。たとえば、植物由来の非ヘム鉄は動物由来のヘム鉄より吸収率が低いため、鉄分不足のリスクが高まります。そのため、妊娠中の女性や成長期の0~12歳の子ども、病気療養中の方などは、特定の栄養素が不足しやすいため、十分に対策したうえでヴィーガンを開始する必要があります。
「ヴィーガンで老ける」は嘘? ホント? 美容には〇〇が重要
編集部
ヴィーガンを続けていると見た目が老けると聞いたことがあります。本当でしょうか?
佐藤先生
一部のヴィーガンが栄養不足により痩せすぎたり、顔色が悪くなったりすることがあり、それが「老けた」と感じられることもあります。一方で、果物や野菜に含まれるビタミンCを積極的に摂取することで、動物性食品の約64倍の抗酸化物資が得られます(3)。そのため、植物ベースの食事に切り替えると、3週間で全身の炎症の指標が29%減少するという報告もあり(4)、老化の原因である全身の炎症を減らして若く保つ可能性を秘めています。
編集部
必ずしもヴィーガンで見た目が衰えるわけではないのですね。ヴィーガンのように「何を」食べるかと同じように、「どのように」食べるかも大切ですか?
佐藤先生
そうですね。「どのように」食べるかも大切です。重要なことの一つは「食事の摂り方」です。現在では多くの人が知っていて、注意が必要なことの一つは、「炭水化物の食べ過ぎによる急激な血糖値の上昇」です。食後高血糖は、体内のたんぱく質と結びついて終末糖化産物(AGEs)を作り出します。AGEsは肌のハリを失わせ、シワやくすみの原因となるため、老化を加速させる要因となります(5)。
編集部
炭水化物の食べ過ぎによる急激な血糖値の上昇以外でも、「どのように」食べるか大切なことはありますか?
佐藤先生
はい。それは「脂質のとり方」です。炭水化物の食べ過ぎがよくないことは多くの人が知るようになりましたが、逆に現在でも多くの人が知らず、同じように注意が必要なことの一つは、高脂質食による急激な血中の中性脂肪やコレステロール値の上昇です。食後高脂質は、酸化ストレスや腸内細菌から出る炎症物質のエンドトキシンが増加し、動脈硬化がより進行しやすくなって老化を早めます (6,7)。
配信: Medical DOC