親指の付け根に痛みを感じたとき、それがどういった疾患によるものかを自分で判断するのは難しいものです。腱鞘炎やリウマチも考えられますが、「母指CM関節症」の可能性もあります。そこで、母指CM関節症の初期症状や診断方法、ほかの疾患との違いについて、片岡利行先生(かたおか整形外科手の外科クリニック)に話を聞きました。
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監修医師:
片岡 利行(かたおか整形外科手の外科クリニック)
大阪大学医学部医学科卒業。その後、大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター、大阪大学整形外科、JCHO星ヶ丘医療センター整形外科、堺市立総合医療センター整形外科などで経験を積み、中でも手の外科の治療に深く携わる。2024年、大阪府摂津市に「かたおか整形外科 手の外科クリニック」を開院、院長となる。 大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学医学博士、日本整形外科学会整形外科専門医、日本手外科学会手外科専門医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本整形外科学会認定スポーツ医。
親指の付け根が痛い… どんな原因が考えられる?
編集部
親指の付け根が痛みます。
片岡先生
親指はほかの指と異なり、さまざまな方向に動かせることや、ほかの指よりも大きな力がかかることが多かったり、スマートフォン操作などで長時間細かな動きを続けたりすることが多いため、痛みを訴える方が少なくないのです。
編集部
どんな原因が考えられますか?
片岡先生
「強くぶつけた」「突き指をした」など、明らかな怪我や外傷でない場合、腱鞘炎やリウマチなどの原因が考えられます。それ以外でよくみられる疾患としては、「母指CM関節症」があります。
編集部
母指CM関節症とはなんですか?
片岡先生
親指の付け根の関節を「母指CM関節」と呼ぶのですが、この関節の表面にある関節軟骨がすり減ってしまうと、母指CM関節症が起こります。骨と骨の滑りが悪くなるため、関節の炎症や腫れ、痛みを引き起こすのです。
母指CM関節症、腱鞘炎やリウマチとの違いは?
編集部
違いを明らかにするために、まず「腱鞘炎」とはどういう状態か教えてください。
片岡先生
「腱鞘」とは、腱が通るトンネルのようなものです。手首や手指を使いすぎると、腱や腱鞘に炎症が生じ、腱鞘炎となります。手首の親指側にある腱鞘に起こる腱鞘炎を「ドケルバン病」、親指の根元の手のひら側にある腱鞘に起こる腱鞘炎を「母指ばね指」と呼ぶこともあります。
編集部
では、リウマチとはどんな疾患ですか?
片岡先生
関節リウマチは、関節にある「滑膜」と呼ばれる部分が何らかのきっかけで異常に増えてしまい、炎症を引き起こす疾患です。多様な症状を引き起こしますが、指のこわばりや痛みから発症するケースが多く見られます。
編集部
母指CM関節症になりやすい人はどういう人ですか?
片岡先生
親指をよく使う人はなりやすいですし、普通の生活を送っていても、年齢を重ねると関節軟骨が減少するため、加齢も母指CM関節症の要因のひとつです。また、女性ホルモンの「エストロゲン」は関節の軟骨の状態を良好に保つ役割があるので、更年期などでホルモンバランスが急激に変化した人も母指CM関節症になりやすいと言えます。
編集部
そういった特徴があるのですね。
片岡先生
ただ、例えば腱鞘炎の原因も使い過ぎですし、リウマチも中年以降の女性に発症しやすいため、「上記に当てはまるから母指CM関節症」と自己判断せず、痛みを感じたら医療機関に相談しましょう。
配信: Medical DOC