重度自閉症の姉をもつ小児科医。自身の経験から、発達特性のある子どもと親に寄り添う医師をめざした【ママ友ドクター・西村佑美】

重度自閉症の姉をもつ小児科医。自身の経験から、発達特性のある子どもと親に寄り添う医師をめざした【ママ友ドクター・西村佑美】

12歳、8歳、4歳の3児のママであり、発達専門の小児科医でもある西村佑美先生。医師をめざしたきっかけは姉が重度自閉症だったことだそうです。現在、“ママ友ドクター”としてSNSやオンラインスクール、コミュニティで、子どもの発達に悩む親をサポートするサービスを提供している西村先生に、小児科医になった経緯や“ママ友ドクター”の活動を始めた理由、活動に寄せられる声などについて聞きました。

自閉症の姉と母の姿を見て、医師を志した

――医師をめざしたきっかけについて教えてください。

西村先生(以下敬称略) 私の3歳年上の姉は約40年前に最重度の知的障害を合併した自閉症と診断されました。姉は一語文を話しますが、会話での長いやりとりはできませんし常に多動で走り回っていました。でも私にとっては、生まれた瞬間からそういう姉がいることが当たり前でしたし、物おじせず感情豊かなあこがれのお姉ちゃんでした。しかし当時は、自閉症は症状が重いほど、親の育て方のせいだとか、愛情不足などと言われていたような時代です。母もまわりに理解されず責められたことがあったそうです。当時の私から見ても母は大変そうでした。

姉が思春期に入ってからは多動やかんしゃくなどの問題行動を抑えるために、医師から抗精神病薬や鎮静剤などたくさんの薬を処方されていました。母は、薬の作用で姉の眠けが強いとさらに問題行動につながってよくないと気づき、薬を減らしてほしいと医師や支援者に訴えていましたが、全然聞き入れてもらえず、落ち込んで悔しそうにしていました。そんな姉や母の姿を見て、障害のある子どもと家族に寄り添う医師になりたい、と思うように。医師をめざそうと思ったのは高校2年生のころでした。

障害のある子やその家族に寄り添う医師に

――その後、発達専門の小児科医になるまでの道のりを教えてください。

西村 大学の医学部を卒業し2年の初期研修医期間を経て、4月から小児科医として大学病院に勤務するという時期に、若手のドクターを集めた懇親会がありました。私は上司に「自閉症や心のケアが必要な子どもや親に寄り添う医師になりたいです!」と伝えたのですが、上司からは「それは、医師の仕事じゃない」と言われてしまいました。重度自閉症の姉を持つ私は、その言葉に大きなショックを受けました。

医療現場では、医師は客観的に診断をしたり、必要な検査など指示を出す役割であって、子どもや家族の直接のケアは心理士などチームでやるべきだという考え方があるのはわかります。だけど私は、当事者家族である自分の経験をいかして、患者さんや家族のためにできることがあるはずだと、その思いをあきらめたくありませんでした。

そこで、自分で発達特性についての勉強をするため、休日に学会や勉強会に参加するように。そのころ発達障害診療の名医である恩師に出会い、長男の育休中にはその先生の元に通って学びました。育休復帰後には地方に出張して新しい小児科病棟の立ち上げに携わり、そこで発達専門外来をスタートさせました。2016年に長女を出産したあとには都内の大学病院に戻って2カ所目の発達専門外来を立ち上げました。

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