現在、6歳の女の子と4歳の男の子のきょうだい育児に奮闘中のフリーアナウンサーの吉田明世さん。今月は保育園のお遊戯会での出来事。育児エッセイ第55回です。
保育園のお遊戯会。気合の入っていた娘でしたが…
先日、娘と息子が通っている保育園でお遊戯会がありました。子どもたちにとって、1年に1度の大舞台!わが家の子どもたちも毎年とっても楽しみにさせてもらっているイベントの1つです。
とくに今年年長さんで最後のお遊戯会でもあった娘の気合の入れようは、相当なもの。わが家がお世話になっている保育園では、年齢が上がるにつれて歌に加えて踊りや劇、合奏といった形で少しずつ難易度が上がっていくため、0歳から通っている娘は、毎年憧れのお兄さんお姉さんのお遊戯会での姿に目を輝かせ、いつか私も劇に出られるんだ…!と心待ちにしていたのでした。
そんな娘ですが、待ちに待ったお遊戯会で思わぬ壁にぶつかるのでありました…
今年の秋は娘が何日か保育園をお休みしていた時期があったのですが、そのタイミングとお遊戯会の役決めがちょうど重なってしまったようなのです。子どもの人数も多く、役にもいくつか種類があるため、みんながみんなやりたい役をやるというわけにはいきません。そこで先生方は機転を利かせてくださり、事前に子どもたちから、自分がやりたい役を3つ選ばせてくれました。
そして、久しぶりに保育園に行ったときのこと。お友だちが「◯◯ちゃん(娘)はお母さん役に決まったよ!私ともう1人のお友だちがプリンセス役になったんだよ!」
…そうなのです。プリンセスをこよなく愛する娘は、3つの役を選んだものの、やりたい役は「絶対にプリンセス」だったのです。突然知った事実に、戸惑いの表情を見せながらもその場ではなんとか笑顔を作り、「そうなんだぁ…!!」と声を絞り出す娘。そうして家に帰ると、一気に思いが溢(あふ)れてしまったようで、「本当はプリンセスをやりたかった」と大号泣。役決めをするときにそこにいられなかったこと、プリンセス役のお友だちからの情報だったこと(もちろんその子はまったく悪気はなく、ただただ知らない娘のために、という気持ちで教えてくれました)など、自分の中で気持ちを整理するためには、たくさんの涙が必要だったようです。
願いは叶わなかったけれど、それも貴重な経験
娘にとっては、とても悔しく、苦しい出来事だったと思います。でも、私は今回のことは、娘にとってとても大切な経験になったなぁと思うのです。自分の願いがかなうときって、うれしい気持ちでいっぱいですよね。でも、自分の願いがかなったということは、同じことを望んでいたほかの誰かに悔しくて悲しくて苦しい気持ちをさせてしまっているということかもしれない。そして今回のお母さん役というのは自分が本当にやりたい役ではなかったかもしれないけれど、今の悔しい気持ちを乗り越えて、与えてもらった役を一生懸命頑張った先に、得られる感情や経験って絶対にあるはず。こういった「うまくいかなかった経験」が他者への思いやりにつながると思っているからです。
大声で泣く娘を抱きしめながら、娘とたくさん会話をし、時間はかかったものの、お遊戯会の本番が近づくにつれて娘の中でも気持ちの整理がついたようです。そのあとは家でも何度も何度もお母さん役のセリフ、歌、踊りを練習していました。
そうして迎えた本番当日。「やっぱりプリンセスやりたかったけどねぇ」とニヤニヤしながらも、本番では堂々とお母さん役をやり切った娘を見て、また1つ、子どもの成長を感じた母なのでした。
そして改めて、お遊戯会という子どもにとっても親にとっても特別な行事で、子どもたちの「これをやりたい!」という思いと向き合いながら、練習や衣装の準備など、たくさんの労力と時間を費やしてくださった保育園の先生方に、感謝の気持ちでいっぱいです。
娘にとっての最後のお遊戯会。思わぬ涙もありながら、母子ともにとても大切なことを教えていただけるきっかけとなったのでした。
一方で…わが家のわんぱくボーイ、息子はというと、
終始ニマニマしながら、歌ったり、歌わなかったり、舞台から降りるときに私に話しかけたり…お遊戯会に対するモチベーションがきょうだいでこうも違うか、と感じながらも、彼は彼なりに去年よりも大きく成長したなぁと感じました。
文・写真/吉田明世 構成/たまひよONLINE編集部
●記事の内容は2024年12月の情報で、現在と異なる場合があります。
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