日弁連が選択的夫婦別姓制度をテーマにシンポ 経済界や法曹界から早期導入求める声、国会の議論に期待

日弁連が選択的夫婦別姓制度をテーマにシンポ 経済界や法曹界から早期導入求める声、国会の議論に期待

日本弁護士連合会(日弁連)は2月6日、東京・永田町の衆議院第一議員会館で「選択的夫婦別姓制度」をテーマにシンポジウムを開催した。法曹界や経済界の識者らが登壇し、与野党の国会議員も交えて、選択的夫婦別姓制度のあり方や今後について議論を交わした。

冒頭、日弁連の渕上玲子会長は日弁連が選択的夫婦別姓制度導入に向けて、様々な取り組みをおこなってきたことを説明、実現に向けての協力を呼びかけた。選択的夫婦別姓制度をめぐっては、1996年に法制審議会で導入に向けての答申が出されてから約30年になるが、いまだ実現していない。

この間、何度も選択的夫婦別姓制度を求める人たちによる裁判が起こされてきたが、いずれも最高裁は現行法を「合憲」と判断してきた。現在は第3次選択的夫婦別姓訴訟が東京地裁と札幌地裁で進められている。

そうした中、現在国会で議論が活発化しており、シンポジウムでは法改正の実現を求める声が上がった。

●「令和にあった仕組みづくりを」

昨年3月、政府に対して選択的夫婦別姓制度の実現を求める政策提言をおこなった経済同友会の新浪剛史・代表幹事は「夫婦同姓」による経済社会の影響について、次のように述べた。

「働く女性の不利益、行政や金融機関の変更手続きを伴う負担があります。旧姓に対応した仕組み、システムへの変更にもコストを要しております。

そうした中で、個人を尊重し、多様な家族形態を認める社会を実現する、まさに令和の時代にあった仕組み作りをしなければいけないと思っています。経済同友会のみならず、経団連とともに選択的夫婦別姓制度を早期に導入することを求めます」

また、選択夫婦別姓訴訟弁護団の寺原真希子弁護士は、訴訟の中で国会における議論を精査したという。

「この制度の問題点については、国会においても数えきれないほどの問題提起がなされてきました。つまり、この制度は人権を侵害するものであるということが認識されながら、放置をされ続けてきたということになります。

そうした状況を打破すべく訴訟をおこなっていますが、原告の方々には負担がともないます。法改正がなされれば、本来は必要のない訴訟です。国会で1日も早く実現していただきたいです」

●未来に向けた最高裁判事の反対意見

元最高裁判事の宮崎裕子弁護士は、自身の経験を踏まえ、女性が旧姓を使用し続ける困難について語った。

また、これまでの選択的夫婦別姓訴訟において、最高裁判決で「夫婦同姓」が合憲とされてきたことに触れ、第2次訴訟において自ら「反対意見」を書いた経緯について述べた。

「今の制度は、別氏婚を希望する者の自由かつ平等な婚姻の意思決定を不当に侵害するものであり、別氏婚を希望する者について、夫婦同氏の例外を設けていない点において、個人の尊重と両性の本質的平等という立法裁量の限界を逸脱しているから、その限度で違憲であるという意見を書いています。

最高裁の多数意見は判例になりますが、反対意見は判例ではありません。では、何のために反対意見を書くか。

米国連邦最高裁判事であったルース・ベイダー・ギンズバーグさんという非常に高名な女性裁判官の『反対意見は未来の時代に向かって語りかけるものです。優れた反対意見は未来の判決になることもあります』という名言がありまして、その言葉に励まされながら書きました」

東京大学大学院法学政治学研究科の宍戸常寿教授も、選択的夫婦別姓訴訟について、「憲法学の分野でも大きな考え方の変化をもたらしました」と指摘。

「憲法14条、法の下の平等だけでなく、個人の尊厳、幸福追求権とは何か、家族制度、婚姻制度とは何か、そして何よりも、そのような制度を定める国会と最高裁判所を頂点とする司法の役割というのはどういうものであるのかということについて、非常に大きな議論を巻き起こしました」と述べた。

「女性がかわいそうだからとかいう問題ではなくて、その女性と結婚する男性の問題でもあります。つまり、一般的な個人の尊厳、それから人格の尊重、万人の問題であるはずです。

婚姻制度あるいは家族制度という憲法に定められた制度を大事にする、なればこそ、これが使いやすく、みんながユニバーサルなサービスとして利用できる制度に改革していくということは、社会全体、そして国民代表である国会議員の先生方の責務でもあるだろうと思っています」

関連記事: