●「通称使用は応急措置」
シンポジウムのパネルディスカッションでは、選択的夫婦別姓制度導入に反対する意見として、通称(旧姓)使用の法制度化についても議論された。
寺原弁護士は、「重要な場面、公的な場面であればあるほど通称を使用することはできません」と説明。
「通称使用の拡大で不利益が解消されているとおっしゃる方々がよく例に出される運転免許証や、マイナンバーカードの旧姓の記載というのは、実は戸籍名の後にカッコ書きで旧姓が併記されている、あるいは裏面に記載をされているにとどまります。
ですので、例えば病院で診察を受けるとか、役所で手続きをするとか、そういうことは一切できません。こういった通称使用の限界や弊害というのがあるのに、それでも通称使用がここまで浸透してきたというのは、旧姓を使い続ける必要性の大きさを表していると思います。
通称使用というのは、婚姻するために改姓せざるを得ない状況に陥った当事者が長年かけて勝ち取ってきた応急措置です。国がこの応急措置に甘んじて夫婦別姓を認めない根拠とすることは許されないと思います」
新浪代表幹事も経済界の立場から、「通称使用よりも別姓を認める方が、実は働く現場としては生産性が高いです。2つのシステムがあるということは、不便が生じてしまいます。自ら姓を選べる権利を持つことと、どちらが便利か明確です」と述べた。
シンポジウムには、国会議員も多数参加し、それぞれの立場から意見を述べた。自民党、公明党、立憲民主党の議員らは党内での議論の進展に触れ、導入に向けた動きが加速していることなどを語った。
同時に、登壇者からは国会にボールが投げられていると指摘。今後、国会での法制度化が進むことを求める声が寄せられた。
配信: 弁護士ドットコム