今市事件・無期懲役囚の“弟”はなぜ冤罪を訴えるのか? 突然の兄逮捕から11年、紆余曲折の日々を語る

今市事件・無期懲役囚の“弟”はなぜ冤罪を訴えるのか? 突然の兄逮捕から11年、紆余曲折の日々を語る

●実名、顔を出して兄の冤罪を訴える理由

ただ、高瀬さんはそのような活動を始めた当初、名前も顔も公開していなかった。

名前や顔を公開したきっかけは、有名無名の様々な人にインタビューしているYouTubeの有名チャンネル『街録ch〜あなたの人生、教えて下さい〜』に母のイミコさんを出演させようと応募したことだったという。

「応募後、監督の三谷三四郎さんとビデオ通話で話したところ、日本語で話すのはあまり得意ではない母ではなく、私が出演することになったんです」

こうして高瀬さんが同チャンネルに顔も名前も公開する形で出演し、兄である勝又受刑者の素顔や事件に関することなどを色々と話したところ、2022年9月に配信された約1時間の動画は100万回を超す再生があるなど好評を博したという。

「それからは、SNSのアカウントによくメッセージが届くようになり、応援してくれる人たちとはLINEのグループチャットで交流するようになりました」

●「再審で無罪になるまで冤罪だと言い続けたい」

明るく話す高瀬さんの様子からは、勝又受刑者を取り巻く状況が好転していることが窺える。ただ、高瀬さん自身は現在のような活動をしていて、家族との生活や仕事に支障はないのだろうか。

「私と妻には子供がいないので、こういう活動ができているところもあります。ただ、地元の顔役みたいな人が『あの事件は冤罪だから』とみんなに言ってくれているので、肩身の狭い思いをせずに済んでいます。

仕事は個人でプログラマーをしていますが、仕事関係の人から兄のことで悪く言われることもありません。プログラマーとは別にアルバイトで働いている職場では、兄のことを隠しているので、バレたらどうなるか少し気にはなりますが」

複数ある支援団体も現地調査や学習会を行ったり、街頭で勝又受刑者の無実を訴えるビラ配りをしてくれたりと精力的にサポートしてくれているという。

「裁判中は暗かった兄も服役生活の中で本来の自分を取り戻し、今は明るい感じになっています。まだ公表できませんが、弁護団では再審請求の方針も固まってきています。

私自身、兄が有罪にされたプロセスに納得できないので、再審で無罪になるまで冤罪だと言い続けたいと思っています」

高瀬さんの話を聞いていると、再審請求が行われたら、また注目を集めそうな事件だと思えた。

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「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。
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