根管治療で膿が再発する理由
根管治療ではしばしば膿が再発します。膿が再発することでガスが産生され、再びガス抜きが必要となることも珍しくありません。そんな根管治療における膿の再発は、以下の4つの理由で起こりやすいです。
根管内に細菌が残っている
根管治療で膿が再発する場合は、細菌の取り残しが考えられます。
膿というのは、免疫細胞と細菌が戦うことで生じる液体であり、増え続けているということは、どこかに細菌が残存していることを意味します。
◎細菌が残存するのは根管治療が難しい理由
根管治療は、通常のむし歯治療よりも難易度が高いとされています。
根管は細くて暗く入り組んだ構造をしている
保険診療では使用できる機器や薬剤に限りがある
根管内の清掃は盲目的に行わなければならない
これらの要因が根管治療を難しくさせています。 保険診療では歯科用CTによる精密検査が行えないことから、根管の本数を見誤ることさえあります。未処置の根管が存在していれば、当然ですが細菌が残存し、膿やガスも発生し続けてしまいます。
根管の封鎖が完全ではない
根管の封鎖が不完全だと膿の再発が起こります。ガッタパーチャやシーラという器具を用いて根管充填を適切に行っていても、細菌が入り込むすき間が生じて、膿が再発する場合があります。
保険診療で使用するガッタパーチャポイントは、丸い針のような形をしていて、それを1本1本詰めていくことから、根管内を完全に封鎖することは難しいとされています。
しかも、ガッタパーチャポイントは生体親和性が高いゴムでしかなく、殺菌作用や抗菌作用は期待できません。シーラーの殺菌作用にも限界はあります。
一方で、自費診療の根管治療では、封鎖性が高くて殺菌作用があるMTAセメントなどを使えるため、細菌が再び入りこみにくくできます。米国ではMTAセメントなどを活用した精密根管治療が主流となっているのです。
新しい細菌感染が根管内で発生した
根管治療が適切に行われたとしても、新しい細菌感染が発生した場合は、膿の再発も起こり得ます。新しい細菌感染に対しては、あらためて根管治療を行う必要があります。
根管治療後のメンテナンス不足によるもの
根管治療後のセルフケアやメンテナンスが不十分だと、膿の再発が起こりやすいです。
歯の周りに歯垢や歯石が堆積し、細菌が繁殖すれば、その一部が根管内に侵入しても何ら不思議ではありません。特に根管治療を行った歯は、神経が抜かれており、異常に気付きにくくなっている点に注意しなければなりません。
セルフケアが不十分でメンテナンスの通院を怠っていると、膿が再発するまで異常を自覚できないケースも珍しくないのです。
根管治療で膿が溜まったときの応急処置
根管治療で膿やガスが溜まったときの応急処置について解説します。以下の4つを試してみましょう。
殺菌効果のあるうがい薬を使用する
根管治療で膿が溜まっている場合は、お口の中が不潔になっていることが少なくありません。殺菌効果のあるうがい薬を使って、口内細菌の数を減らすことから始めましょう。
リステリンやモンダミンといった市販のうがい薬でも問題ありません。殺菌効果が期待できる製品にて用法用量どおり、適切な方法でうがいをしてください。うがい薬に期待できる殺菌効果は高くはありませんが、応急的に実施するのは問題ありません。
ただし、アルコール入りのうがい薬は揮発性が高くて、唾液の作用や分泌量を低下させ、口腔乾燥を引き起こすことがあります。乾燥すると細菌が活性化してしまうため、早めに歯科医院に受診するようにしましょう。
患部を冷やす
根管治療で膿やガスが生じているケースでは、細菌の活動が活発化していることから、患部に炎症反応も起こっています。炎症反応は、歯は歯茎に痛みをもたらす原因にもなるため、冷やすことでその症状を軽減できる場合もあります。
根管治療を行っている歯や周りの歯茎を氷などで冷やすと患部の血流が悪くなり、より深刻な症状を引き起こしかねないので、冷やすときは直接は冷やさないようにしましょう。
具体的には、保冷材や冷たい水で濡らしたタオルを顎にあてて、患部を間接的に冷やします。長時間冷やし続けることはよくないため、1回あたり15分程度にとどめ、冷やしても効果が見られない場合は自己流の冷却は控えて、歯科医院に相談しましょう。
痛み止めを飲む
通常のむし歯よりも強い痛みに悩まされやすいです。そのため、応急的に痛み止めを服用するのも有効な対処法です。風邪や生理のときに服用している痛み止めがあれば、それでも問題はありません。
日常的に服用している痛み止めがない場合は、アセトアミノフェンなどから試してみるとよいでしょう。アセトアミノフェンでも鎮痛できない強い痛みに対しては、ロキソプロフェンナトリウムの方が効果的ですが、その分だけ胃痛や血圧低下、浮腫などの副作用が起こりやすくなる点に注意が必要です。
痛み止めは対症療法なので、薬剤の効果が切れたら再び症状も戻ってくることを忘れてはいけません。痛み止めは、根管内にある問題を解決するためのつなぎでしかないのです。痛み止めで病気をごまかしている間も根管のむし歯は進行しますので、早めに歯科医院に受診をしてください。
症状が続くなら歯科医院を受診する
根管の膿やガスの滞留によって痛みが続くようであれば、応急処置だけに頼らず、できるだけ早く歯科医院を受診するようにしてください。
むし歯は自然になおりません。根管の中や根っこの先に存在している細菌は、自然免疫で排除することができないため、根管治療をやり遂げるしかないのです。根管治療の期間中にこうした痛みが発作的に強まった場合も主治医に相談することで、目下の痛みの原因を適切な方法で緩和してくれます。
配信: Medical DOC