「インフルエンザの後遺症」となる症状はご存知ですか?【医師監修】

「インフルエンザの後遺症」となる症状はご存知ですか?【医師監修】

インフルエンザは回復したと思っても、倦怠感や咳、頭痛が続くことがあり、「なかなか治らない…」と不安になる方もいるのではないでしょうか。
こうした症状は後遺症の可能性がありますが、合併症との違いと併せて正しく理解することが大切です。
本記事ではインフルエンザの後遺症について以下の点を中心にご紹介します。

インフルエンザ後遺症とは

インフルエンザの合併症・コロナの後遺症との違い

インフルエンザ後遺症の治療

インフルエンザの後遺症について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

≫「インフルエンザの感染力」はどのくらい?感染力が強い期間も解説!【医師監修】

監修医師:
吉川 博昭(医師)

医学博士。日本ペインクリニック学会専門医、日本麻酔科学会専門医・指導医。研究分野は、整形外科疾患の痛みに関する予防器具の開発・監修、産業医学とメンタルヘルス、痛みに関する診療全般。

インフルエンザ後遺症とは

インフルエンザの後遺症とは何ですか?

インフルエンザは約1〜2週間で回復するとされる感染症ですが、一部の患者さんでは治癒後もさまざまな不調が続くことがあります。これらはインフルエンザ後遺症と呼ばれ、身体的・精神的な症状として現れます。

インフルエンザ後遺症の原因は完全には解明されていませんが、ウイルス感染による免疫系の異常な反応や炎症が関与していると考えられています。
また、感染によって体内のエネルギーや栄養バランスが乱れることも影響するとされています。

インフルエンザ後の不調が続く場合、適切な休養と栄養管理が重要です。症状が長引く際は早めに医療機関を受診し、必要な治療を受けることが推奨されます。

インフルエンザ後遺症の原因を教えてください

インフルエンザ後遺症の原因にはいくつかの要因が関与していると考えられています。

一つ目は免疫系の異常反応です。インフルエンザウイルスに対する免疫反応が過剰に働くことで、炎症が長引き、身体の各組織に影響を及ぼすことがあります。なかでも肺や神経系への影響が指摘されています。

二つ目は神経系への影響です。ウイルス感染が中枢神経に影響を与えることで、神経痛や感覚異常が残る場合があります。
また、脳への影響が集中力の低下や倦怠感につながることもあります。

さらに、エネルギー代謝の低下や栄養バランスの乱れも後遺症を引き起こす要因となります。感染中に体力が消耗され、回復が遅れることで、慢性的な疲労感が続くことがあります。
長引く症状も精神的ストレスとなり、不安感や気分の落ち込みを引き起こすことがあります。
これらの要因が複合的に関与し、インフルエンザ後遺症が発生すると考えられています。

インフルエンザ後遺症の症状を教えてください

インフルエンザ後遺症の症状は人によって異なりますが、身体的なものから精神的なものまで多岐にわたります。
代表的な症状として、全身の倦怠感や慢性的な疲労、頭痛、関節痛、筋肉痛が挙げられます。
咳や痰が長引き、息苦しさを感じる方も多く、気管支炎や肺炎へと進行することもあります。

また、味覚や嗅覚に異常を感じることがあり、鼻水や副鼻腔炎の症状が残る場合もあります。
一部の患者さんでは、集中力や記憶力の低下、めまい、不眠などの神経系の不調が現れることがあります。
精神的な影響として、不安感や気分の落ち込み、軽度のうつ症状を訴えるケースも報告されています。

これらの症状は免疫系の過剰反応や神経系への影響、体力や栄養バランスの乱れによって引き起こされると考えられています。長引く症状は日常生活に支障をきたすため、適切な休養と医療機関での診察が重要です。
なかでも呼吸困難や強い倦怠感が続く場合は、早めに医師に相談することをおすすめします。

インフルエンザの合併症・コロナの後遺症との違い

インフルエンザの後遺症と合併症の違いを教えてください

インフルエンザの後遺症と合併症は、どちらも病気に関連して発生しますが、その発生時期や原因に違いがあります。

合併症とは、インフルエンザに罹患したことが原因で新たに発生する疾患や症状を指します。代表的なものには、ウイルス性肺炎や細菌性肺炎、中耳炎、心筋炎、インフルエンザ脳症などがあります。これらはインフルエンザの感染中に起こり、病状を悪化させる要因となります。

一方、後遺症とは、インフルエンザの急性期が過ぎた後も症状が長期間続く状態を指します。具体的には、倦怠感、関節痛、頭痛、集中力の低下、嗅覚や味覚の異常、咳や息苦しさなどが挙げられます。これは免疫系の過剰反応や神経系への影響が関与していると考えられています。

合併症は病気の進行中に発生し、治療が必要となるのに対し、後遺症は回復後に残る症状で、長期間のケアが必要となることがあります。どちらも重症化を防ぐため、早めの対応が重要です。

インフルエンザの合併症にはどのような病気がありますか?

インフルエンザの合併症には、さまざまな疾患があり、特に乳幼児や高齢者、持病を持つ方は注意が必要です。

代表的な合併症の一つに、インフルエンザ脳症があります。これはウイルス感染による免疫異常が原因で、意識障害、けいれん、異常行動などの症状を引き起こします。主に5歳以下の子どもに発症しやすいとされ、重症化すると後遺症が残ることもあります。

肺炎も重要な合併症で、インフルエンザにより肺炎球菌などの細菌が増殖し、重症化するケースがあります。

さらに、心筋炎はインフルエンザが引き金となり、心臓の筋肉に炎症が起こる疾患です。初期症状が風邪に似ており、重症化すると急性心不全を引き起こすことがあります。

インフルエンザの合併症を防ぐには、ワクチン接種や早期の医療対応が重要です。また、日頃から健康管理に努めることが大切です。

インフルエンザ後遺症とコロナの後遺症の違いについて教えてください

インフルエンザ後遺症と新型コロナウイルス後遺症にはいくつかの違いがあります。

インフルエンザ後遺症では、倦怠感、頭痛、咳、関節痛、集中力の低下などが主な症状として報告されています。
症状は数週間~数ヵ月以内に改善するとされています。

一方、新型コロナウイルスはロングコロナとも呼ばれ、後遺症は長期間続く傾向があり、さまざまな症状がみられます。咳や呼吸困難、強い倦怠感、味覚・嗅覚障害、認知機能の低下、不眠症、動悸など多岐にわたる症状が長期間続くケースが多いようです。
新型コロナウイルス感染後は、インフルエンザ感染者よりも咳や倦怠感で受診する可能性が数倍高いとされています。

このように、両者の後遺症には症状の持続期間や影響の強さに違いがあります。
どちらの場合も、長引く症状がある際は、早めに医療機関を受診することが重要です。

インフルエンザやコロナの後遺症になる割合はどのくらいですか?

インフルエンザや新型コロナウイルスの後遺症になる割合は、それぞれ異なります。
研究によると、新型コロナウイルス感染者の方が後遺症のリスクが高いとされています。

名古屋工業大学の調査では、インフルエンザに感染した患者さんが2ヵ月以内に咳や頭痛で受診するリスクは、感染していない人に比べて約1.8倍でした。
一方、新型コロナウイルス感染者は、咳で受診するリスクが約8.2倍、呼吸困難が約7.92倍、倦怠感が約3.64倍と、高い数値が示されています。

また、子どもは免疫が未発達なため、大人よりもインフルエンザ後遺症のリスクが高く、特にインフルエンザ脳症に注意が必要です。

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