強膜炎とは、眼球を強固にする役割を持つ強膜が炎症を起こし、目が充血したり強い痛みが生じたりする病気です。
症例はそれほど多くありませんが、他の目の炎症に比べて症状が強く出る傾向があります。
特に目の痛みは日常生活に支障が出るほど悩まされるケースが多く、最悪の場合は失明する可能性もあるため、早めに病院を受診し治療することが大切です。
今回は、強膜炎の症状や原因・初期症状などについて詳しく解説します。大切な目を守るためにも、ぜひ参考にしてみてください。
※この記事はMedical DOCにて『「強膜炎」を発症すると現れる初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。
強膜炎の症状と原因
強膜炎はどのような病気でしょうか?
強膜炎は、眼を覆っている強膜に炎症が生じる病気です。
強膜は白目の部分にある厚さ0.4~1mmの強固な線維性の組織で、表層の部分を指す上強膜とその下にある強膜があります。そのため病気も上強膜炎と強膜炎に分類されており、一般的に強膜炎の方が症状が強く出る傾向です。
また、強膜炎は形状によって下記のようにも分類されます。
壊死性強膜炎
結節性強膜炎
びまん性強膜炎
重症度はびまん性強膜炎が最も低く、壊死性強膜炎が最も高くなります。中でも壊死性強膜炎は強膜の組織が壊死してしまう特徴があり、失明のリスクは他の強膜炎に比べて高いです。
発症する原因は何でしょうか?
強膜炎の原因としては、関節リウマチなどの自己免疫疾患・全身性疾患に関連して発症するケースが多くみられます。全身性エリテマトーデス(SLE)との関連も比較的多いです。
その他原因となりうる病気としてあげられるのは、結合組織疾患(膠原病)・結核・梅毒・ヘルペス・痛風などです。強膜はコラーゲン・結合組織を豊富に含んでいることから、コラーゲンに関連する合併症が起こりやすいのではと考えられています。しかし発症者全体の約半数は原因がわかっていません。
合併した症例が比較的多くみられることから、さまざまな物質が原因で起きるアレルギー反応として発症しているのではないかといわれています。
症状を教えてください。
症状として多くみられるのは、強い目の痛みです。
目の奥深くで刺すような痛みや圧迫されているような痛みが生じ、日常生活や睡眠にも影響が出ます。特に夜に悪化する傾向があり、ときには顔から顎にかけて広範囲に痛みが広がるケースもみられます。また、眼球の充血や涙の量の増加、さらに明るい光に対して過敏になる羞明(しゅうめい)という症状も出る可能性が高いです。
充血する範囲は眼の全体だけではなく、上方部分のみ、あるいは鼻の近くの内側部分のみに発症することもあるでしょう。なお、多くの場合強膜炎は眼の前側で発症しますが眼の後ろ側で発症するケースもあり、この場合は視界の霞みや視力低下といった症状が出やすいです。
後ろ側での発症は後部強膜炎と呼ばれ、一般的な前部強膜炎とは区別していますが、両方発症するケースもあります。また、強膜炎は場合によって強膜の一部が溶け、強膜の内側にあるぶどう膜が透けることで白目が青紫調に見えることがあります。
症状が進行すると眼球の強度がもろくなり、眼球に穴があく眼球穿孔が生じ、失明や眼球摘出となるため非常に危険です。その他、網膜剥離・ぶどう膜炎・続発性緑内障などが合併する可能性もあります。
どのような初期症状がみられますか?
初期にみられる症状としては、やはり目の痛みから異常を感じるケースが多いです。また、充血や羞明もよくみられます。視力が大きく低下することも少なくありません。
なお、症状は約3分の1の人が両目で発症しています。30~50代の女性に多くみられることも特徴のひとつです。
編集部まとめ
強膜炎は失明する可能性もある危険な病気ですが、早期に治療を開始することでリスクは回避できる可能性が高いです。
目に痛みが出た場合は我慢せず、できるだけ早く病院を受診しましょう。上強膜炎であれば自然治癒する可能性もありますが、自己判断するのはほぼ不可能です。
医師のアドバイスを受けながら、治療方針に沿って通院を続けることが再発予防に繋がります。
大切な視力を失わないためにも、早めの行動と継続的な治療を心がけましょう。
参考文献
強膜炎・上強膜炎(池袋サンシャイン通り眼科診療所)
配信: Medical DOC
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