「深頸部膿瘍」を発症すると起こる症状をご存じですか?【医師監修】

「深頸部膿瘍」を発症すると起こる症状をご存じですか?【医師監修】

監修医師:
長友 孝文(医師)

浜松医科大学卒業。自治医科大学附属病院、東京大学医科学研究所などで勤務の後、2022年に池袋ながとも耳鼻咽喉科を開院。院長となる。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医。

深頸部膿瘍の概要

深頸部膿瘍(しんけいぶのうよう)は、首の奥深いところに位置する「間隙(かんげき)」という空間に膿がたまった状態です。

深頸部膿瘍の主な症状としては、発熱、首や喉の腫れ、痛みなどが挙げられますが、症状が乏しいケースも珍しくありません。

症状が進行すると、口が開きにくくなったり呼吸困難をきたしたりする場合もあります。
小児の場合では、重症度がわかりにくいケースも多く「食事をうまく飲み込めない」「首を動かしづらい」など、通常とは異なる様子が深頸部膿瘍のサインである場合もあります。

深頸部膿瘍の主な原因は、のどの炎症や歯の疾患です。
のどの炎症をきたす風邪やインフルエンザなどの感染症やむし歯、歯周病などの疾患、糖尿病や抗がん剤治療などによって免疫力が低下した状態(易感染状態)では深頸部膿瘍を発症するリスクが高まると言われています。

深頸部膿瘍の予防には、手洗いうがいなどの感染予防をはじめ、口腔ケアによる衛生状態の維持や規則的な生活習慣への取り組みが効果的です。

深頸部膿瘍の主な治療法は、抗菌薬の投与と切開排膿(膿のたまった部位を切開して膿瘍を排出する)です。

膿が広範囲に広がっていたり頸動脈の近くに形成されていたりする場合では、合併症をきたす可能性が高まるため、緊急手術が必要となる場合もあります。

深頸部膿瘍の原因

深頸部膿瘍を発症する主な原因には、咽頭炎(いんとうえん)や喉頭炎(こうとうえん)、唾液腺炎(だえきせんえん)、扁桃炎(へんとうえん)、リンパ節炎、う歯(むし歯)や歯周病などの歯科疾患、異物や外傷による感染、先天性疾患の下咽頭梨状窩瘻(かいんとうりじょうかろう)などが挙げられます。

深頸部膿瘍の主な原因は、大人と子どもで異なります。
小児ではリンパ節炎由来の発症が7割を占めますが、大人では咽頭炎や喉頭炎、う歯が全体の7割を占めるという報告があります。

小児ではリンパ節が大人よりも発達していて膿瘍が作られやすいため、リンパ節炎による発症が多く、大人では炎症が間隙(首の筋肉や血管、神経などを包む膜で囲まれた空間)に直接広がり、深頸部膿瘍を発症するケースが多いと言われています。

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