胃腸の弱い人は「胃がん」や「大腸がん」になる確率が高くなるのか 胃がん・大腸がんの発症リスクを医師が解説

胃腸の弱い人は「胃がん」や「大腸がん」になる確率が高くなるのか 胃がん・大腸がんの発症リスクを医師が解説

「自分は胃腸が弱い」と感じている人は少なくありません。胃痛や胃もたれ、下痢や腹痛に悩まされることも多いですが、そもそも「胃腸が弱い」とはどのような状態を指すのでしょうか。その裏には、別の疾患が隠されている可能性もあるようです。そこで今回は、胃腸が弱いとは何なのか、がんとの関連性、日常生活での対策などについて、池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院 院長の柏木先生に詳しく解説していただきました。

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監修医師:
柏木 宏幸(池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院)

2010年埼玉医科大学卒業後、沖縄にて初期臨床研修をおこない、東京女子医科大学病院消化器病センター内科へ入局。女子医科大学病院消化器内科助教となり複数の出向病院で勤務し、2023年4月に池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック開業。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、一般社団法人日本病院総合診療医学会認定病院総合診療医、難病指定医。

「胃腸が弱い」とは?

編集部

「胃腸が弱い」と訴える人は、一般的にどのような症状で困っていることが多いのでしょうか?

柏木先生

外来でお越しになる患者さんの中には、「昔から胃腸が弱いんです」と話される方が少なくありません。その場合、胃が痛くなりやすい、胃もたれしやすい、下痢しやすい、腹痛が起こりやすいといった症状に悩まされていることが多いですね。特に、ストレスや刺激物を摂取すると胃痛や下痢をしやすい、腹痛が起こる、普段から下痢や痛みがあるといった方が多い印象です。

編集部

「胃腸が弱い」背景には、どのような原因が考えられるのでしょうか?

柏木先生

胃の症状の原因としては、胃の運動異常や胃酸過多、胃の知覚過敏、粘膜の異常が多く挙げられます。胃の症状が長期にわたって見られる場合は、ストレスなどの生活習慣により症状が起こりやすい「機能性ディスペプシア(FD)」、ピロリ菌感染による「ピロリ菌感染胃炎」といった疾患が代表的です。機能性ディスペプシアとは、胃の動きの異常や知覚過敏で生じる胃もたれや胃痛などの症状を起こす疾患です。腸の疾患には、腹痛や下痢を伴う過敏性腸症候群や、腸内細菌の異常が関与するものがあります。よく過敏性腸炎と間違えて覚えられますが、正式名称は過敏性腸症候群です。

編集部

胃腸の強さについて、何か基準のようなものはありますか?

柏木先生

胃が弱いと思われる「機能性ディスペプシア」では、胃の痛みまたは灼熱感、もたれ感(食後膨満感)、早期満腹感(食べてすぐにおなかがいっぱいに感じること)の症状のいずれかが6カ月以上前からあり、直近の3カ月間に症状がある場合とされています。実際には、さらに短い期間でもこの症状に悩まされる方が多くいらっしゃいます。この疾患は日本人の10人に1〜2人程度の割合でみられ、珍しい疾患ではありません。腸が弱いと思われる過敏性腸症候群は、直近3カ月間で、週1日程度の腹痛や腹部の不快感などがあった場合、過敏性腸症候群と診断されます。

「胃腸が弱いとがんになりやすい」は本当なのか?

編集部

胃腸が強い人と弱い人では、胃がんや大腸がんのリスクに差はありますか?

柏木先生

胃腸が弱いと表現される「機能性ディスペプシア」と「過敏性腸症候群」に共通する考えとして、器質的な疾患は除外されており、機能性疾患という機能(胃や腸の動き)の疾患であることが挙げられます。つまり、胃がんや大腸がん、胃潰瘍や腸炎などといった悪性腫瘍や炎症に伴う症状ではないということです。機能性ディスペプシアは胃がんのリスクにはなりませんし、過敏性腸症候群が大腸がんのリスクになるということはありません。しかし、胃腸が弱いと思っている方の中には、ピロリ菌感染胃炎や潰瘍性大腸炎などが含まれており、それらは胃がんや大腸がんのリスクになります。

編集部

胃がんのリスクを高める要因については、どのようなものが考えられますか?

柏木先生

胃がんの原因の多くはピロリ菌感染だといわれています。ピロリ菌は幼少期に感染しますので、ピロリ菌感染が原因で胃の症状がある方は、胃がんのリスクになります。

編集部

大腸がんのリスクを高める要因についても教えてください。

柏木先生

大腸がんに関していえば、ほとんどの大腸がんは大腸ポリープ(主に腺腫)が大腸がんの原因となりますが、この大腸ポリープに関しては環境や生活習慣が主な原因となります。大腸ポリープは症状も少なく、腸が弱いと思われていて実は潰瘍性大腸炎やクローン病という炎症性腸疾患だったというケースもあります。炎症性腸疾患は大腸がんのリスクにもなるため、予防のためにも炎症の治療が必要です。

編集部

胃腸の弱い人が、がん以外にも注意すべき病気はありますか?

柏木先生

ピロリ菌に感染していた場合、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍、胃がんや血液の悪性腫瘍、血小板減少症など、ほかの疾患との関連が報告されていますので、早期の除菌療法が勧められます。また、ピロリ菌を除菌した場合にも胃がんのリスクは3分の1に軽減されますが、除菌した場合でも胃がんのリスクは残るため、1〜2年に1度の定期的な胃内視鏡検査は必要です。腸が弱いと思っている人の中には、炎症性腸疾患といった若い頃から発症する病気があります。この病気は早い段階で治療や検査が必要なので、普段と異なる症状(粘液や血便、下痢回数の増加)や下痢症状が改善しない場合には医療機関への受診をおすすめします。

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