「脂漏性皮膚炎」を発症しやすいのは30代や40代?【医師監修】

「脂漏性皮膚炎」を発症しやすいのは30代や40代?【医師監修】

脂漏性皮膚炎は、皮膚表面に赤みや黄色い瘡蓋(かさぶた)がうろこ状にできる皮膚炎です。症状が顔の目立つ場所にできるため、心理的につらい状態になる方も多くいらっしゃいます。

幼児の場合は自然治癒しますが、成人の場合は生活環境の様々な要因が影響しています。治療が長期化することがあり、この疾患の難しい側面です。

今回は、脂漏性皮膚炎の症状や原因、起こりやすい年齢層などを紹介していきます。

脂漏性皮膚炎の症状や原因、治療方法とは?

※この記事はMedical DOCにて『「脂漏性皮膚炎」を発症すると現れる症状・予防法はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

脂漏性皮膚炎の症状と原因

脂漏性皮膚炎とはどのような病気ですか?

脂漏性皮膚炎は、皮脂の分泌の盛んな脂漏部位(しろうぶい)である、頭皮・眉毛・耳の後ろ・脇などに頭皮や鼻の周りなどにできる病です。
カサカサした赤い炎症が発症したり、ジクジクした黄色い角質が張り付いたりする症状がみられます。鼻唇溝(びしんこう)いわゆる、ほうれい腺に症状が現れることが特徴です。
新生児にみられる「乳児型」と、思春期以降の成人にみられる「成人型」に分けられます。

発症する原因を教えてください。

はっきりとした原因はわかっていません。乳児の場合は、母親の体内にいる間に受けたホルモンの影響によって生じる皮脂の過剰分泌が原因です。生後2~4週間で発症し、生後4〜8ヶ月頃になると、成長と共に自然に治ります。
一方、成人の場合は近年の研究で、真菌であるマセラチア菌が深く関わっているとわかっています。
マセラチア菌は、人の皮脂の成分である、中性脂肪を分解して栄養として生きていて、通常は害を与えることはありません。何らかの要因で皮脂分泌が活発化すると、マセラチア菌が大量に増殖し、結果として皮膚炎を引き起こすのです。
皮脂分泌が活発になる要因として、以下のことがあげられます。

遺伝的要因

私生活の乱れ

ストレス

マセラチア菌

皮脂分泌の多い家系の場合、脂漏性皮膚炎が発症しやすい傾向です。また、睡眠不足・動物性脂肪の多い食事など、私生活の乱れにより、皮脂分泌異常となることで皮膚の炎症を引き起こします。
更に、ストレスが多くなることも、ホルモンバランスの乱れから皮脂分泌過剰を引き起こすため、要因の一つです。この様な環境を取り巻く要因が存在する一方で、マセラチア菌による影響は最も直接的に炎症と関係があります。
マセラチア菌は皮脂の成分であるトリグリセリド(中性脂肪)を分解し、遊離脂肪酸を作り出します。マセラチア菌によって作られた遊離脂肪酸が、皮膚を刺激することにより炎症を引き起こすのです。
環境を取り巻く要因は、皮脂分泌を増加させ、マセラチア菌による皮膚への刺激も強めてしまいます。

どんな症状がおこるのでしょうか。

紅斑(こうはん)といって、血管の拡張により皮膚の表面が赤くなる炎症や、ジクジクした状態で油っぽい質感の鱗屑(りんせつ)が発症します。
鱗屑は角質が皮膚表面に蓄積する症状のことをいいます。そして、鱗屑が脂っぽい状態であっても、皮膚は乾燥してカサカサした状態になるのが特徴です。
初期症状においては、痛みや痒みはあまりなく、あっても軽度です。頭皮に鱗屑ができると、皮膚と共にフケの様に剥がれ落ちていき、抜け毛も起こります。また、ひどくなるにつれて、皮脂の脂肪酸が酸化し、頭皮から油や加齢臭のような臭いがするようになることもあります。

脂漏性皮膚炎は30代や40代の方に多く発症すると聞きましたが。

年代的には30代から40代に多く、特に男性に発症することが多いです。皮脂分泌の量の決定要因は、食生活なども関係していますが、ホルモンバランスも大きな要因の一つです。
男性の場合は、アンドロゲンという男性ホルモンが関与しています。皮脂の発達や合成に関わりがあるホルモンです。アンドロゲンが活発になると皮脂の分泌量も増えていくため、皮脂量は女性よりも男性の方が多い傾向となっています。
また、男性の方が女性よりもこの疾患にかかる人が2~3倍多くなっていることからも、このホルモンが影響していると伺えます。

編集部まとめ

脂漏性皮膚炎はシャンプー荒れや乾燥肌との区別がつかずに、中々気がつかないこともあります。

気がついた場合は早期に対策を取ることが肝心です。

生活リズムや食生活の乱れをみつめ直して改善する、また、ストレスを軽減すること自体が、現実的には大変で難しいことかもしれません。

しかし、中長期的にみて、毎日できることから一つずつやってみることが大切です。

脂漏性皮膚炎の治療は、薬より養生という言葉にもあるように、普段からの予防の心がけこそに、最善の良薬が存在しているといえます。

毎日の予防策に費やす努力は、薬の効果よりも絶大な効果が得られるのです。

参考文献

脂漏性皮膚炎-臨床症状と各種外用剤の治療効果-

脂漏性皮膚炎を繰り返す患者のケアを試みて

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