肺塞栓症という病名は知らないけれど、「エコノミークラス症候群」なら聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
肺塞栓症はエコノミークラス症候群とも呼ばれることから飛行機の搭乗中に起こるものと認識されがちですが、実は自宅でも起こる可能性があります。
とくに、リモートワークなどで長時間同じ姿勢を続けている方は注意が必要です。
こちらで、肺塞栓症の原因・症状・なりやすい人の特徴などについて詳しく解説していきます。
「血栓症」を発症すると現れる初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
※この記事はMedical DOCにて『「肺塞栓症」の症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
肺塞栓症の症状と原因
肺塞栓症の症状を教えてください。
肺の血管に血栓が詰まることで、突然の胸の痛みや呼吸困難などが起こります。
症状が一度だけ出るケースもありますが、発作のように何度も起こるケースもあるので注意が必要です。
症状の強さは、血栓の大きさによってさまざまです。小さい血栓の場合は症状が出ないケースもありますが、大きな血栓の場合には血流が止まりショック状態に陥ったり、失神発作を起こしたりすることもあります。重度の場合には、死に至ることもある恐ろしい病気です。
発症する原因は何でしょうか?
長時間足を動かさないでいると、血流が悪くなり下肢の静脈深部に血栓ができることがあり、これを深部静脈血栓症と呼びます。
この血栓が血流に乗って流れ、肺動脈に詰まることによって起こるのが肺塞栓症です。
飛行機のエコノミークラスの狭いスペースに長時間座っていることが原因になることも多く、エコノミークラス症候群とも呼ばれます。飛行機の搭乗中に限らず車の運転時なども、足を動かさず血流が悪くなることで太ももやふくらはぎに血栓ができやすくなるため注意が必要です。
さらに、近年増えているリモートワークでも、長時間同じ姿勢でいることで肺塞栓症のリスクが高まります。また、妊娠中の方や病気療養中などで長時間寝たきりの方も、発症するリスクが高いといえるでしょう。
なりやすい人の特徴を教えてください。
手術後などで静脈の壁が傷ついている方は、血栓ができやすくなることがあるため肺塞栓症になりやすいといえるでしょう。
また、妊娠中の方や子宮筋腫のある方も腹部に存在する下大静脈が圧迫されやすく血栓ができやすいため注意が必要です。さらに、悪性腫瘍のある方や体質によって血が固まりやすい方も、肺塞栓症のリスクが高いとされています。
長期間入院して安静生活を送っているような方も、血栓ができやすく肺塞栓症になりやすいといえるでしょう。
前兆はあるのでしょうか?
肺塞栓症の症状である呼吸困難や胸の痛みは、多くの場合突然発症します。そのため、肺動脈に血栓が詰まる前兆は見極めるのが難しいといえるでしょう。
ただし、下肢に血栓ができている場合はふくらはぎや太ももに腫れ・むくみ・痛みなどを感じることがあります。
ふくらはぎや太ももにこれらの症状があり、血栓ができていることが考えられる場合には十分注意する必要があります。
編集部まとめ
肺塞栓症は、発症すると急に呼吸困難や胸の痛みなどの症状が現れる病気です。
エコノミークラス症候群とも呼ばれるように長時間足を動かせない状況などでは誰でも発症する可能性があります。
また、妊娠中の方や血が固まりやすい体質の方も肺塞栓症が起こりやすいので注意が必要です。
飛行機の搭乗中・運転中・デスクワーク中などには足を定期的に動かすようにし、水分もこまめに摂って予防を心掛けてください。
参考文献
エコノミークラス症候群の予防のために(厚生労働省)
配信: Medical DOC
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