不倫騒動で女性が批判されがちな理由とは?

第3回 いつまでも“女”でいることは悪なのか?
昨今、世間を騒がせている著名人の“不倫騒動”。最近は元SPEEDの今井絵理子さんや上原多香子さんの不倫が話題となりました。

ところで、こういった不倫騒動の場合、女性の場合「分別がない」など、大きな批判を受けやすい印象があります。一体なぜなのか、精神科医・作家の春日武彦先生に聞きました。

●不倫は女性次第!? 男が責められない理由とは…

まず、春日医師は前提として「そもそも“女性が拒否すれば不倫は成立しない”という暗黙の了解があるように思います」と、社会にある共通意識を指摘します

「これは決して良いことだとは思いませんが、『据え膳食わぬは男の恥』という言葉もあり、社会の根底に“不倫は女性の気持ち次第…”という考えがあるのではないでしょうか。それゆえに、不倫において女性の方が批判されがちなのでしょう」(春日先生、以下同)

あくまでも女性は、男性の気持ちを“受け取る側”。女性側に批判が集中しがちな背景には、どうやらそんな考え方があるようです。

「逆に、女性が男性にアタックしたとしたら、それは女性らしからぬ“はしたない”行為として映ってしまう。“受け取る側”になっても“攻める側”になっても、やはり女が悪いという考えになりがちなのだと思います」

不倫騒動で女性が批判されがちな理由とは?

●“平等”だからこそ踏み外すと批判を浴びる

不倫女性に対しては特に「同性からの批判」の方が厳しい印象を受けます。一体なぜなのでしょうか?

「芸能人が不倫をしたからといって自分に直接的な害をなすわけではありませんよね。しかし、それでも不倫女性に対しては『自分が憧れる男性を奪い取りかねない危険人物』という印象を抱いてしまうものです。そこに、得体のしれない恐怖を感じてしまうのでしょう」

また、不倫という安易な道に走り欲望を満たすことへの嫌悪感も、同性から批判される大きな要因だといいます。

「そもそも、恋愛の原点は“自分が承認されたい”ということ。しかし、既婚者である以上、基本的に不倫は許されません。ですから多くの人は、恋愛以外の何かを努力して承認欲求を満たしているわけです。それゆえ、自分の心を満たすために恋愛という一番手っ取り早い手段に走っている人に対して不快感を覚えてしまうのでしょう。」

本来、不倫は両成敗であるべきにも拘わらず、女性側が“集中砲火”を浴びやすい社会は平等とはいえません。しかし、その裏には長い時間をかけて醸成された社会の空気、人間の心理があり、一筋縄で変えられるものでもないようです。

(文=周東淑子/やじろべえ)

お話をお聞きした人

春日武彦
医学博士、精神科専門医
1951年京都府出身。日本医科大学卒。産婦人科医として6年間勤務した後、精神科へ移り現在も臨床に携わる。『鬱屈精神科医、お祓いを試みる』(太田出版)、『無意味なものと不気味なもの』(文藝春秋)、『幸福論』(講談社現代新書)、『精神科医は腹の底で何を考えているか』(幻冬舎新書)、『臨床の詩学』(医学書院)等著書多数。
1951年京都府出身。日本医科大学卒。産婦人科医として6年間勤務した後、精神科へ移り現在も臨床に携わる。『鬱屈精神科医、お祓いを試みる』(太田出版)、『無意味なものと不気味なもの』(文藝春秋)、『幸福論』(講談社現代新書)、『精神科医は腹の底で何を考えているか』(幻冬舎新書)、『臨床の詩学』(医学書院)等著書多数。