「変形性股関節症」の治し方はご存じですか? 幹細胞治療の効果・リスクを医師が解説!

「変形性股関節症」の治し方はご存じですか? 幹細胞治療の効果・リスクを医師が解説!

変形性股関節症をはじめとして、股関節の痛みを引き起こす疾患は様々あります。特に加齢とともに発症することが多く、「薬を飲んでも良くならない」「手術しかないのでは?」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。そんなときに検討したいのが「幹細胞治療」。股関節の痛みに対して、幹細胞治療はどのような効果を発揮するのか、「リペアセルクリニック大阪院」の岩井先生に教えていただきました。

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監修医師:
岩井 俊賢(リペアセルクリニック大阪院)

京都府立医科大学 医学部医学科卒業。その後、京都府立医科大学附属病院、京都きづ川病院、山科病院などで整形外科医として経験を積む。2024年、大阪府大阪市福島区に位置する「リペアセルクリニック大阪院」の院長に就任。日本整形外科学会専門医。日本内科学会、日本脳神経外科学会、日本脊髄外科学会、日本再生医療学会、日本糖尿病協会、中部日本整形外科災害外科学会の各会員。

幹細胞治療とは?

編集部

まず、幹細胞治療について教えてください。

岩井先生

幹細胞とは、色々な組織や臓器になれる未分化の細胞を指します。体内に存在している「体性幹細胞」、受精卵から培養してつくられる「ES細胞」、人工的に作製される「iPS細胞」の3種類があります。なかでも、骨髄や脂肪から採り出すことができる体性幹細胞を利用した再生医療は、整形外科の分野でも注目を集めています。

編集部

幹細胞を利用した再生医療では、どのような効果が期待できるのですか?

岩井先生

幹細胞には弱った細胞を補ったり、修復したりする働きがあります。こうした働きを活用し、主に炎症を抑制したり、鎮痛を促したりする治療に用いられます。

編集部

股関節の痛みにも効果があると聞きます。

岩井先生

はい。特に、何らかの原因で股関節の軟骨がすり減ることで炎症が起きる変形性股関節症には、幹細胞治療が適しています。発症すると歩くときや立ち上がるときなどに脚の付け根や太ももの前側、お尻などに痛みが出現し、進行すると安静にしていても痛みが出たり、歩行が困難になったりすることがあります。

編集部

変形性股関節症が、幹細胞治療で改善するのですか?

岩井先生

幹細胞を股関節に注射することにより、すり減った軟骨が修復されて痛みが軽減します。その結果、従来であれば人工股関節に置換しなければならなかった患者さんでも、手術をしなくて済む可能性が高くなるのです。

変形性股関節症に対する幹細胞治療の効果

編集部

なぜ、幹細胞を股関節に注射することですり減った軟骨が修復されるのですか?

岩井先生

幹細胞には傷ついたり、弱ったりした細胞を修復する働きがあります。幹細胞治療は、この幹細胞の働きを高めたものを股関節に注射します。そうすることで軟骨の修復が促され、痛みの緩和を期待することができるのです。

編集部

幹細胞治療のリスクやデメリットはありますか?

岩井先生

副作用が少なく安全な治療法ですが、その一方で再生医療は一部を除き、健康保険が適用されません。そのため、従来の治療と比べて高額になる点がデメリットとして挙げられます。また、比較的新しい治療法であるため、長期間にわたって患者を観察した治療データが乏しいということもデメリットと言えるかもしれません。

編集部

そのほかにも注意点はありますか?

岩井先生

幹細胞に反応するかどうかが症例によって異なるため、治療成績に個人差があることにも注意する必要があります。例えば、変形性膝関節症であれば、どれくらい症状が進行しているかによって、治療成績は変わります。また、半月板損傷であれば、どの部位がどれくらい損傷しているかなどによって治療の成績が異なります。

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