インプラント治療で高額療養費制度が使える?保険適用や医療費控除についても紹介!

インプラント治療で高額療養費制度が使える?保険適用や医療費控除についても紹介!

インプラント治療というと、「高額な治療費がかかる」と二の足を踏んでしまう人も多いのではないでしょうか。確かにほかの歯科治療と比べて、インプラントの治療費は高額になってしまうケースが多いようですが、実際にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか? また、その際に高額療養費制度は活用できるのでしょうか?

この記事では、インプラントの治療費と高額療養費制度について、さらには保険適用や医療費控除についても詳しく解説します。インプラント治療の費用について不安に思っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

インプラント治療と高額療養費制度


インプラントの治療は高額になりがちです。奥歯の場合は、1本につき30万~50万程度、前歯の場合は、奥歯と同程度か数万ほど高くなることもあります。これらは1本あたりの相場なので、本数が増えるとその分費用も増加します。上下すべての歯をインプラントにすると、総額は500万円以上かかることもあります。一般的な歯科医療の治療費と比べても、経済的負担が大きいことは否定できません。

なぜ、このようにインプラントの治療費は高額になるのでしょうか? その理由は、大きく分けて2つあります。一つ目は、インプラント本体の費用が高いためです。信頼性の高いメーカーのインプラントは特に高額になります。そしてもう一つの理由は、歯科医院にかかる歯科用CTやインプラント手術専用の機材などへの設備投資のコストです。安全性の高い設備が整っていなければ、安心してインプラント手術を提供することはできません。そのため、どうしても治療費が高額となってしまうのです。そのほかにも、質や耐久性が高い材質を使用したり、特別な手術が必要になったりすると、さらに費用がかかることがあります。

では、インプラント治療に高額療養費制度は利用可能なのでしょうか?

高額療養費制度とは

高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った金額が、ひと月(月の初めから終わりまで)で一定額を超えた場合に、その超えた金額を支給する公的医療保険制度の一つです。年齢や所得に応じて医療費として支払う上限が決められており、例えば69歳以下の年収約370万~約770万円(健保:標報28万~50万円 国保:旧ただし書き所得210万~600万円)の方であれば、ひと月の上限額(世帯ごと)は8万100円+(医療費-26万7000円)×1%となります。高額療養費制度の支給対象となる医療費は、保険適用される診療に対し患者が支払った自己負担額が対象です。「差額ベッド代」や「先進医療にかかる費用」などは支給の対象とはされていません。

インプラント治療は高額療養費制度の対象か

では、インプラント治療でかかった医療費は、高額療養費制度の支給対象となるのでしょうか?

・保険診療と自由診療の違い
結論から言うと、残念ながらインプラントの治療費は高額療養費制度の対象とはなりません。日本では、国民皆保険制度がとられており、保険適用が可能な医療であれば窓口で支払う金額が、総額の1~3割で済みます。これは、加入している保険組合が残りの7~9割を負担してくれるためです。ただし、保険適用となる医療行為は歯科の場合、最低限の治療であることも多く、審美的なメリットの高いインプラントを含めた治療は自由診療となります。この場合、治療費の自己負担が10割(100%)となり、保険組合からの補助はありません。高額療養費制度の対象となるのは、公的医療保険が適用される診療にかかる費用のみのため、自由診療であるインプラントの治療費は対象外となります。

・インプラント治療が高額療養費制度の対象となる場合
ただし、例外的にインプラント治療が保険適用となる場合があります。インプラントが保険適用となるのは、先天的な病気や事故などで顎の骨や多くの歯を失い、正常に噛むことができないようなケースです。このような場合は、インプラントの治療費が高額療養費制度の対象となります。稀なケースではありますが、覚えておくと良いでしょう。

インプラント治療に医療費控除を活用

では、高額療養費制度以外に、インプラントの治療費に活用できる制度はないのでしょうか? 実はインプラント治療の費用でも控除の対象となり得る制度があります。それは、医療費控除です。

医療費控除の基本知識


医療費控除とは、年間の医療費が10万円を超えた場合、または総所得金額の5%を超えている場合に、確定申告によって所得税の一部が戻ってくる制度です。共働きで妻か夫のどちらかが扶養控除から外れている場合や、単身赴任や子どものひとり暮らしなどで住居を別にしている場合でも、生計が同じであれば医療費を合算できます。例えば、その年の1月1日から12月31日までの間に、自分の医療費が8万円で、生計を共にしている家族の医療費が5万円だった場合、合計が10万円を超えているため控除の対象として申告可能となります。もちろん、歯科以外の医療費も合算して計上することができます。

共働きの場合は、所得税率の高い方の家族が申告すると、控除額も高くなるため、節税対策として有利となります。また、医療費控除は5年前までさかのぼって申告できますので、過去の医療費を申告し忘れていた場合でも、翌年度に改めて申告することができます。

インプラント治療が医療費控除の対象になる場合

医療費控除の対象となるインプラント治療でかかる費用は、大きく分けて下記の4つに分けられます。

治療前の精密検査や診断料

上部構造の素材や人工歯を作る費用

上部構造を埋め込む手術費用

治療後のメンテナンス費用

これらに加え、治療のための通院時に必要な電車代やバス代なども医療費控除の対象となります。 ただし、インプラント治療の費用が医療費控除の対象となるのは、やむを得ない事情で歯を失ってしまった場合のみです。美容目的のインプラント治療は医療費控除の対象外となりますので、注意が必要です。また、通院時に自家用車を使用した場合にかかるガソリン代や駐車場代などは対象とはなりません。 なお、控除額はそのままの金額が還付金として戻ってくるわけではなく、その分の所得税が減って、その結果、税金の差額分が戻ってくる形となります。高額療養費制度のようにかかった金額が戻ってくるわけではない点に注意をしましょう。

医療費控除を受けるための手続き

医療費控除の申請は確定申告で行います。会社員の方は、年末調整で医療費控除が行えないため、自ら確定申告を行うようにしましょう。確定申告は基本的に毎年2月16日~3月15日までと期間が決まっています。確定申告の手続きの方法は3つあります。

自宅で書類を作成し、居住地を管轄している税務署に直接提出、または郵送する

必要書類を持参し、所轄税務署で作成する

「e-Tax」(国税電子申告・納税システム)を利用して自宅のパソコンなどからHP経由で申告する(事前登録が必要)

時間や手間をかけたくない場合は、国税庁が運営するWEBサイト「確定申告書等作成コーナー」で画面の案内に従って必要情報を入力していくと、自動的に税額などが計算できる仕組みになっています。この入力内容はプリントアウトをして税務署に郵送や持参できるほか、「e-Tax」経由でオンライン送信することも可能です。また、現在ではスマートフォンから申告することもできるので、興味のある方は国税庁のWEBサイトで確認してみてください。 なお、医療費控除の確定申告の際に必要な書類は以下のものです。

治療を受けた医院でもらった領収書

通院のために使用した公共交通機関の領収書(いつ、どの区間で、いくら利用したかをメモしたものでも可。ICカードの場合は明細書を印刷しておくとよい)

「医療費控除の明細書」(国税庁のWEBサイトからダウンロード可能)

マイナンバーなどの本人確認書類

源泉徴収票(給与所得者の場合)

口座番号がわかる通帳など

このほかに、加入している保険組合から送られてくる「医療費控除のお知らせ」があると便利です。なお、治療費の領収書は「医療費の明細書」を提出することで、提出したり提示する必要はなくなりましたが、不備があった時のためなどに5年間は保管しておくようにしましょう。