「認知症」リスクはコレステロール値が関連、“激しい変動”が認知機能を低下させる 調査で判明

「認知症」リスクはコレステロール値が関連、“激しい変動”が認知機能を低下させる 調査で判明

オーストラリアのモナッシュ大学公衆衛生・予防医学部の研究員らは、高齢者における脂質変動と認知機能低下および認知症リスクの関連性について調査しました。その結果、総コレステロールや低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールの変動が大きい高齢者ほど、認知症のリスクが高まると示唆されました。この内容について五藤医師に伺いました。

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監修医師:
五藤 良将(医師)

防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

研究グループが発表した認知症に関する研究内容とは?

オーストラリアのモナッシュ大学公衆衛生・予防医学部の研究員らが発表した内容を教えてください。

五藤先生

今回紹介する研究報告は、オーストラリアのモナッシュ大学公衆衛生・予防医学部の研究員らによるもので、その内容はアメリカ神経学会が発行する学術誌「Neurology」に掲載されています。

研究員らは、高齢者における脂質変動と認知機能低下および認知症リスクとの関連性を調査しました。認知症や重度の認知障害がない65歳以上の1万9114名を対象として、最大11年間の追跡調査がおこなわれました。結果として、総コレステロールおよび低密度リポタンパク質コレステロールの変動が大きい人ほど、認知症や認知機能低下のリスクが高まり、特に変動が最も大きい群では認知症リスクが最大で60%増加することが分かりました。一方で、高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールやトリグリセリドの変動性と認知機能の変化との間には、明確な関連は認められていません。

この結果から、コレステロールの変動が認知症リスクの新たなバイオマーカーとなる可能性が示唆されます。しかし、脂質の変動が直接認知機能低下を引き起こすのか、それとも全身の健康状態の変化による影響なのかは明確ではありません。また、本研究では、食事や生活習慣の影響について十分な考慮がなされておらず、脂質変動の原因が特定されていない点も懸念されます。さらに、研究対象者は比較的健康な高齢者が多く、より虚弱な高齢者への適用性には慎重な検討が必要です。今後、より多様な対象者を含めた長期的な研究が求められるでしょう。

研究テーマになった認知症とは?

今回の研究テーマに関連する認知症について教えてください。

五藤先生

認知症は、脳の働きが低下することで判断力の低下やもの忘れなどが起こり、日常生活に支障をきたす病気です。高齢になるほど発症しやすく、日本では65歳以上の約5人に1人が認知症になると予測されています。

最も多いのが「アルツハイマー型認知症」で、記憶力の低下から始まり、徐々に進行することが特徴です。ほかにも、脳の血管が詰まったり出血したりすることで起こる「血管性認知症」、幻覚や手足の震えを伴う「レビー小体型認知症」、性格や行動に変化が表れる「前頭側頭型認知症」など、認知症には様々な種類があります。

認知症を完全に治す治療法は現時点で確立されていませんが、薬で進行を遅らせたり、生活習慣を整えることで症状を軽減したりできます。特に、運動を習慣化したり、栄養バランスの取れた食事を心がけたりすることが、認知機能の低下を防ぐ助けになります。また、家族や周囲の人との交流を大切にし、趣味を楽しむことも有効です。少しでも気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。認知症になっても早期に対処すれば、適切な支援を受けながら自分らしい生活を続けることができます。

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