胎児が「反屈位」だと、妊婦にどのような負担があるのかご存じですか?【医師監修】

胎児が「反屈位」だと、妊婦にどのような負担があるのかご存じですか?【医師監修】

監修医師:
中里 泉(医師)

2008年宮崎大学卒業後、東京都立大久保病院にて初期研修。東京大学医学部付属病院産婦人科に入局。東京大学医学部付属病院、東京北医療センター、JR東京総合病院などの勤務を経て、現在は生殖医療クリニックに勤務。日本産科婦人科学会専門医。

反屈位の概要

反屈位は、分娩の経過の中で胎児がとる姿勢の一つです。正常な分娩がどのように進行するかとあわせて解説します。

分娩の進行

胎児は通常、最小周囲径、つまり一番小さく通りやすい形で産道を通過し娩出されます。
正常分娩では、胎児は4段階の回旋を経て徐々に産道を降りてきます。
第一回旋
頸部がうなずくような屈位をとる
第二回旋
頭が母体の後ろ側を向くように回旋し、降りてくる
第三回旋
胎児の頭が反屈しながら母体から娩出する
第四回旋
回転して肩を出しながら横を向く

反屈位の定義

分娩の進行過程で、正常な回旋をとらない場合を回旋異常といいます。
回旋異常が起こると、分娩が進みにくくなり時間が長くなったり(遷延)、一定時間進行しなくなったり(停止)が起こります。

回旋異常の種類は以下のとおりです。

第一回旋の異常(反屈位)

第二回旋の異常(後方後頭位)

定位異常

高在縦定位
低在横低位

進入異常

後頭頂骨進入
前頭頂骨進入

過剰回旋

反屈位は、上記のとおり、第一回旋の異常で起こります。分娩第一期の第一回旋で、通常、胎児の頭が前屈し(うなずくような姿勢をとり)、頭が胸に近づきます。反対に胎児の頭が後ろに反り、後頭部が後ろに、あごが胸から離れる姿勢をとることがあります。これが反屈位です。

反屈位の種類

反屈位は程度の軽いものから以下に分類されます。

頭頂位(ごく軽度の反屈)

前頭位(軽度反屈)

額位(中等度反屈)

顔位(高度反屈)

頭頂位は最も軽度の反屈で、頭の前の方にある大泉門と後ろの方にある小泉門の間が一番出口に進んでいる状態で降りてきます。前頭位は、軽度の反屈で、大泉門が一番出口に近い状態で降りてきます。額位は、額から進んで降りていきます。顔位は、反屈の程度が極度に達し、顔面の、特に顎の先が先進します。
特に前頭位、額位、顔位は、通常より大きい断面で骨盤を通過しなければならず、子宮頸管が開き、頭が骨盤を通過するのに通常よりかなり時間がかかります。

反屈位の原因

回旋異常は児の原因、母体の原因、分娩の経過が原因で起こる可能性があります。

児の原因

児の原因として以下のようなものがあります。

巨大児(出生体重が4000g以上)、低体重児(出生体重が2500g未満)など児の大きさに関する要素

水頭症、無脳症など児頭の形態異常

胎児頸部腫瘍なそ頸部の形態異常

母体の原因

母体の原因として以下のようなものがあります。

低置胎盤、辺縁前置胎盤など胎盤の位置の要素

狭骨盤など骨盤の形と大きさ

子宮筋腫、骨盤内腫瘍など骨盤内のスペースの要素

多産婦など腹部の形

分娩経過の原因

分娩の経過の原因として以下のようなものがあります。

臍帯巻絡(へその緒が胎児のどこかに巻き付いている)

羊水過多症

母体の直腸または膀胱が充満している

陣痛の強さ

関連記事: