社会の高齢化とともに増加し続けている前立腺がん患者数。近年では前立腺がんに対する治療法も進化しており、早期に発見すれば治ることも多いとされています。前立腺がんの代表的な治療法に放射線治療がありますが、放射線治療はどれぐらいの頻度で受けるのか、仕事との両立は可能かなどあらい泌尿器科の新井先生にMedical DOC編集部が聞きました。
編集部
前立腺がんの放射線治療は、どのようにして行われるのですか?
新井先生
体の外から放射線を照射する「外照射療法」と体の内部から放射線を当てる「内照射療法」があり、それぞれ治療法が異なります。現在行われている放射線療法は、ほとんどが外照射療法です。
編集部
それぞれどのようにして行われるのですか?
新井先生
外照射療法には照射方法の違いによって、三次元原体照射治療(3D-CRT)、強度変調放射線治療(IMRT)、定位放射線治療、粒子線治療(陽子線、重粒子線)などがありますが、いずれも専用の機械のなかで横たわり、患部に放射線を照射します。一方、内照射療法は主に放射線物質を小型の容器に密封してがん組織やその周囲組織に直接挿入し、体内から放射線を照射する方法です。
編集部
外照射療法の場合には入院が必要ですか? どれくらいの頻度で治療すればいいのですか?
新井先生
入院の必要はなく、外来で治療を受けることができます。照射頻度は治療法の種類によっても異なりますが、基本的には土日と祝日を除き、週5回連日で行います。また、1日おきに照射する治療法もあります。また、治療期間も6週間程度から8週間程度までさまざまです。
編集部
どの治療法を選択するかによって頻度や期間が異なるのですね。
新井先生
はい。たとえばサイバーナイフという名称で知られる定位放射線治療は、比較的短期間で終了します。治療の回数もトータルで5~6回くらいです。
編集部
照射時間はどれくらいですか?
新井先生
だいたい10分程度でしょう。ただし、機械によっては1時間程度必要なものもあります。
編集部
それくらい短時間で済むなら、仕事との両立も可能ですね。
新井先生
はい、問題ありません。実際、お仕事と両立しながら治療を続けている方も少なくありません。
編集部
一方、内照射療法は入院が必要ですか?
新井先生
放射線線源を麻酔下で体内に埋め込むため2〜3泊の入院が必要になります。一度埋め込まれた放射性物質は、時間が経過するにつれて放射線エネルギーが低下していき、約1年後にはほとんど消滅し、一部制限されていた行動も解除されます。
監修医師:
新井 学(あらい泌尿器科)
1991年3月東京医科歯科大学医学部 卒業、東京医科歯科大学医学部附属病院(現・東京医科歯科大学病院)泌尿器科入局。藤沢市民病院泌尿器科、春日部市立病院(現・春日部市立医療センター)泌尿器科、東京都多摩老人医療センター(現・東京都立多摩北部医療センター)泌尿器科、中野総合病院泌尿器科、獨協医科大学越谷病院(現・獨協医科大学埼玉医療センター)泌尿器科准教授、獨協医科大学埼玉医療センター前立腺センター 教授、獨協医科大学埼玉医療センター総合がん診療センター センター長などを経て2023年4月あらい泌尿器科開院。日本泌尿器科学会専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。
※この記事はMedical DOCにて<「前立腺がん」の放射線治療にリスクはない? 手術とどっちが良い?【医師解説】>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
配信: Medical DOC
