放射線性腸炎の治療
治療は症状の重症度や患者さんの全身状態によって異なります。治療は急性放射線性腸炎と慢性放射線性腸炎で異なりますが、主な治療法は以下のとおりです。
急性放射線性腸炎の場合
生活指導
低脂肪、高タンパクの消化に良い食事(お粥、豆腐、野菜スープなど脂肪分を控えた消化の良い食事)を推奨するといった食事の工夫や下痢がある場合、脱水を防ぐため十分な水分補給が必要です。
薬物療法
一般的には整腸剤やプロバイオティクスを用いて腸内環境を整えることを試みます。軽症の場合はこれだけで治療後1ヶ月程度で軽快することが多いですが、子宮頸がんなどで強力な治療を行っており、症状が強く出ている場合は止瀉薬を用いて下痢の回数や程度を軽減させます。炎症が強い場合など腸の炎症を抑える薬を使う場合があります。例えばメサラジンやアスピリン、漢方薬を使うことがあります。
慢性放射線性腸炎の場合
内視鏡治療
アルゴンプラズマ療法といって、出血部位を焼灼することで出血を抑える治療を行う場合があります。
高気圧酸素療法
特殊な器械に入って体の中に高気圧酸素を送り込み、傷の治りを促進する治療を行う場合があります。
外科的治療
稀ですが慢性化している腸炎で重症の場合、腸の狭窄や瘻孔を治療するための手術が必要になることがあります。
放射線性腸炎になりやすい人・予防の方法
放射線治療を行う際は放射線の照射範囲や線量を調整して腸管への影響を最小限に抑えてはいますが、病気がある場所や種類、大きさやサイズなどで放射線が腸に当たることは避けられないことが多いのも事実です。
骨盤内や腹部に放射線治療を受けることで放射線腸炎になりますが、放射線性腸炎の発症リスクや重症化するリスクを高める要因として、次のことが知られています。糖尿病や動脈硬化などの血管障害を有する方では腸管壁の炎症が生じやすく、発症時に長期化する傾向が指摘されています。また、喫煙やアルコールの摂取はさまざまながんの原因になるほか、腸炎を長期化させる可能性があります。放射線治療を受けている間は抗がん剤治療を受けるなどで食欲が低下し、栄養状態が悪化しやすいですが、主治医とも相談し、栄養補給の方法を検討することが重要です。
がんの予防には子宮頸がんワクチンの接種を受けたり、早期に発見できるよう上部・下部内視鏡検査、婦人科がん検診、前立腺がんの検診など定期的に受けることが重要です。必要な健康診断をかかりつけ医と日頃から話しておくことをおすすめします。
バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけることで、免疫力を高め、がんのリスクを下げることができます。これは仮に放射線性腸炎になった後もとても重要なことです。
関連する病気
消化器系疾患
血管疾患
神経障害
腸閉塞(イレウス)
参考文献
がん・放射線療法改訂第8版 (2023年)(書籍)
がん情報サービス下痢:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
https://ganjoho.jp/public/support/condition/diarrhea/index.html
配信: Medical DOC
