避妊の方法には様々なものがありますが、そのなかで男性がおこなう避妊法の1つが「パイプカット」です。一度手術をすればほぼ100%の避妊効果があり、しかもその効果の持続期間は永久的という特徴があるそうです。しかし、その一方でリスクはないのか気になるところです。今回は、パイプカットの利点とリスクについて、「木戸クリニック」の木戸先生に解説していただきました。
監修医師:
木戸 雅人(木戸クリニック)
東京慈恵会医科大学卒業、獨協医科大学大学院医学研究科修了。その後、東京慈恵会医科大学、東急病院などで泌尿器科医として経験を積む。2018年、埼玉県所沢市に位置する「木戸クリニック」の院長に就任。 医学博士。日本泌尿器科学会専門医。
パイプカットとは?
編集部
まず、パイプカットについて教えてください。
木戸先生
簡単に言えば、男性がおこなう避妊治療の1つで、精子の通り道である「精管」を切断することで、二度と精子が出てこない状態にする手術です。
編集部
パイプカットは、どんなときにおこなわれるのでしょうか?
木戸先生
例えば、夫婦やパートナーの間で、年齢的あるいは経済的などの理由から「これ以上子どもを望まない」という判断をしたときにおこなわれることが多いですね。また、前回の出産の際、母体に負担が大きく、医師から「次に妊娠すると命に関わることがある」などと言われた場合、女性に身体的負担を与えないようにパイプカットをおこなう男性もいます。
編集部
なるほど、そういう男性もいるのですね。パイプカットをおこなうことで、どのようなメリットがあるのですか?
木戸先生
まずは、コンドームなどの避妊具が不要で、確実に避妊ができるということです。パイプカットをすると、精子が二度と出てこないようになるので、ほぼ100%の確率で避妊効果があります。コンドームをしても避妊に失敗する可能性はあるため、高い避妊効果はパイプカットのメリットと言えるでしょう。
編集部
避妊効果が高いということが、一番のメリットなのですね。
木戸先生
そうですね。女性がおこなう避妊方法は色々ありますが、いずれも多かれ少なかれ身体的な負担を伴います。「奥さんやパートナーに負担を与えたくない」という男性が、マナーやエチケットとしてパイプカットをおこなうケースも見受けられます。
編集部
一度手術をしたら、効果はずっと続くのですか?
木戸先生
基本的に手術を一度すれば、効果は永久的に持続します。そのため、手術前には夫婦間やパートナー間で意思を一致させる必要があります。よく話し合い、お互いの意思を確認した上でパイプカットという選択をしていただきます。
編集部
ほかにも、パイプカットのメリットはありますか?
木戸先生
男性側の心理的な要素として、「コンドームを装着する鬱陶しさから解放される」というメリットがあります。場合によっては、コンドームをつけるという動作がEDにつながることもあるため、そうした不安から解放されるのは大きなメリットと言えるでしょう。また、子どもを望まない場合には、「妊娠したら・させたらどうしよう」という不安も解消できます。
パイプカットをしたら何が変わる?
編集部
パイプカットをすることで、精力が下がるといったデメリットはあるのでしょうか?
木戸先生
パイプカットをすることで精力が下がることはありません。また、見た目や量の変化も特になく、ただ精子が含まれなくなるだけです。
編集部
男性ホルモンの値が下がるといった影響はありますか?
木戸先生
男性ホルモンも精子も精巣で作られて分泌されますが、男性ホルモンは血管を通して運ばれるので精管を結紮(けっさつ)しても影響はありません。
編集部
パイプカットをしたら、すぐにコンドームが不要になるのですか?
木戸先生
パイプカット手術を受けても、しばらくの間はまだ精子が残っていることがあります。そのため、例えば当院では手術終了後2カ月が過ぎてから精子の検査をおすすめしています。そこで精子が出てこないことを確認したら、避妊をする必要がなくなります。
編集部
パイプカットの手術は自由診療ですか? 費用面が気になります。
木戸先生
はい、保険は適用にならないので自由診療になります。手術費は医療機関によって異なりますが、当院の場合は8万円程度です。なお、術後の精子の検査は3000円が別途でかかります。
配信: Medical DOC