入れ歯は、失った歯を補うための装置です。保険が適用されて、簡単に作れるため、欠損補綴の選択肢として広く用いられています。ブリッジのように残った歯を大きく削ったり、インプラントのような外科手術を行ったりする必要性がない点は、患者さんにとって大きなメリットと映ることでしょう。その反面、入れ歯は目立ちやすいという大きなデメリットを伴います。そこで多くの人が求めるのが目立たない入れ歯です。ここではそんな目立たない入れ歯の特徴やメリット・デメリットについて詳しく解説します。
目立たない入れ歯について
はじめに、入れ歯の基本事項を確認しておきましょう。
入れ歯とはどのようなものですか?
入れ歯とは、失った歯を補う補綴装置の一種で、着脱式である点がその他の治療法と大きく異なります。人工歯とプレート部分の義歯床(ぎししょう)、残った歯に引っかけるクラスプなどから構成され、昔から広く使用されています。基本的には保険が適用されることから、失った歯の治療法としてまず入れ歯を選択する人が少なくありません。
入れ歯にはどのような種類があるか教えてください
入れ歯は、部分入れ歯と総入れ歯の2つに大きく分けられます。部分入れ歯は、1本から複数本の歯を失った症例に適用される入れ歯で、保険診療では人工歯+義歯床+クラスプで構成されています。すべての歯を失った症例に適用されるのは総入れ歯で、人工歯と義歯床のみで構成されており、部分入れ歯よりはややシンプルな設計となっているといえます。保険診療の入れ歯は、レジンというプラスチックで作られたレジン床義歯が基本となりますが、自費診療ではさまざまな材料を使用できることから、その種類も豊富です。今回のテーマである目立たない入れ歯も自費診療の入れ歯の種類のひとつに挙げられます。
目立たない入れ歯の種類を教えてください
目立たない入れ歯は、金属製のクラスプがないノンクラスプデンチャーを指すのが一般的です。ひと言でノンクラスプデンチャーといっても実はいくつかの種類に分けられ、それぞれで異なる素材を使用し、特徴にも違いが見られます。
◎ナチュラルデンチャーナチュラルデンチャーは、アメリカのデンツプライ社が開発した目立ちにくい入れ歯で、20年以上の臨床実績があります。外科用縫合糸に使われる素材を使用しているため、体に優しく、長期間にわたり快適に使用できることが特徴です。また、透明感があり、見た目にも自然な仕上がりとなっています。
◎スマイルデンチャー
スマイルデンチャーは、透明感に優れ、歯茎と自然に調和するため、口元が美しく見える入れ歯です。素材には強度と柔軟性があり、薄く作ることが可能で、装着時の違和感が少ないことが魅力です。見た目の自然さと快適な使用感を重視する患者さんに適しています。
◎ビューティーデンチャー
ビューティーデンチャーは、低吸水性のレイニング樹脂を使用した入れ歯で、変色しにくく臭いもつきにくい素材です。また、保険の入れ歯と比較して有害な物質が溶出しにくいため、アレルギーや過敏症を持つ患者さんにおすすめです。耐久性にも優れており、長期間使用することができます。
◎バルプラスト
バルプラストはアメリカで50年の歴史を持つ入れ歯で、歯の付け根にしっかりとフィットし、滑らかでやわらかい素材が特徴です。ナイロンに似た素材を使用しているため、割れにくく、快適な装着感を提供します。ただし、口腔内に十分なスペースがない場合は適用できないことがあります。
◎ミラクルフィット
ミラクルフィットは、金属を使用せず、ポリカーボネートという特殊な樹脂で作られた入れ歯です。この樹脂は、透明感がありながら高い耐久性を持ち、見た目が美しいだけでなく、機能性も高いです。軽量で小さく作製でき、24時間装着していても違和感や圧迫感が少なく、快適な入れ歯です。
目立たない入れ歯のメリットとデメリット
続いて、目立たない入れ歯を使うメリットとデメリットについて解説します。
目立たない入れ歯のメリットを教えてください
目立たない入れ歯には、次に挙げるメリットが得られます
◎入れ歯を入れていることに気付かれにくい目立たない入れ歯のメリットは、見た目が自然であるため、周囲の人に入れ歯を装着していることが気付かれにくい点です。歯茎と自然に馴染む素材を使用することで、笑ったときや話しているときの違和感ができる限り抑えられます。
◎装着時の違和感や異物感が少ない
目立たない入れ歯は、柔軟性のある素材を使用しているため、お口のなかでの違和感や異物感が少なく、快適な装着感が期待できます。特に、食事や会話の際に影響を受けにくく、長時間の使用でもストレスを感じにくい点が特徴です。
◎金属アレルギーのリスクをなくせる
目立たない入れ歯は、金属を使用しない設計が多く、金属アレルギーを持つ患者さんでも使用できます。
目立たない入れ歯のデメリットはありますか?
目立たない入れ歯には、次に挙げるデメリットを伴います
◎保険が適用されないため費用が高い目立たない入れ歯は、一般的に保険適用外の素材や技術を使用するため、自費診療となり費用が高くなることがあります。患者さんの希望に応じたカスタマイズが可能ですが、その分コストがかかる点はデメリットです。
◎強い衝撃を受けると割れることがある
目立たない入れ歯は、薄くて柔軟な素材を使用しているため、強度には限界があり、強い衝撃を受けると割れることがあります。
◎壊れたときの修理が難しい
特殊な素材を使用している目立たない入れ歯は、壊れた場合の修理が難しいというデメリットがあります。基本的には修復するのではなく、作り直す必要性が出てきます。
◎安定性がやや低い
目立たない入れ歯は、金属を使用しない設計のため、一般的な入れ歯と比べて安定性がやや低いことがあります。特に、噛み合わせの調整が難しいケースでは、動きやすくなる場合があります。
入れ歯を選ぶときの注意点を教えてください
入れ歯を選ぶ際には、見た目の自然さや装着時の快適さだけでなく、患者さん自身の噛み合わせや口腔内の状態を考慮することが重要です。また、素材によっては費用や耐久性に差があるため、長期的なコストやメンテナンスのしやすさも確認しましょう。特に、金属アレルギーや過敏症がある方は、アレルギー反応のリスクを減らす素材を選ぶことが推奨されます。
配信: Medical DOC