眼筋麻痺の前兆や初期症状について
主に眼症状として現れます。
1. 複視
眼球運動の障害により、両眼の視線が一致しなくなることで生じます。
2. 眼瞼下垂(まぶたが垂れ下がる)
動眼神経麻痺やMGにより、まぶたが垂れ下がります。MGには日内変動や日差変動があり、朝方は軽微で夕方に悪化することが多いです。MGの場合、初発症状の71.9%が眼瞼下垂、47.3%が複視であったという報告があります。
3. 眼球運動障害
特定の方向への眼球の動きが制限されます。
4. 目の奥の痛み
神経や筋肉の異常により生じることがあります。
5. まぶたの腫れ
炎症や浮腫により起こる場合があります。
眼筋麻痺の症状は、原因疾患によって異なる場合があるため、早期の専門医による診断が重要です。
眼筋麻痺の病院探し
眼科や脳神経内科(または神経内科)、脳神経外科の診療科がある病院やクリニックを受診して頂きます。
MLF症候群(内側縦束症候群)
脳幹の内側縦束(medial longitudinal fasciculus :MLF)に障害が生じることによって引き起こされる眼球運動の異常です。この症候群は、特に側方注視時に特異な眼球運動障害を示し、以下の三つの主要な症状から成ります。
1. 内転障害
片側の眼球が内転できず、同側に病変があることを示します。
2. 外転眼振
反対側の眼球が外転する際に、単眼性の水平性眼振が見られます。この眼振は外転方向に急速相を持ちます。
3. 正常な輻輳機能
輻輳時には内転が正常に行われるため、他の動きには影響を与えません。
片側性は通常、脳卒中や血管性障害によって引き起こされ、両側性は多発性硬化症が主な原因とされています。治療はその原因基礎疾患に依存します。
眼筋麻痺の検査・診断
症状の詳細な評価と原因疾患の特定を目的として行われます。
(1)問診
症状の経過(発症時期や進行状況など)を詳しく聴取します。
(2)視診
眼瞼や眼球位置の観察
(3)神経学的検査
1. 眼球運動評価
各方向への眼球運動を詳細に観察し、制限の有無や程度を確認します。
2. 対光反射検査
ペンライトなどを使って瞳孔の対光反射を確認し、動眼神経の機能を評価します。
3. 眼瞼下垂の評価
まぶたの下垂の程度と日内変動を観察します。
(4) 画像検査
1. 頭部CT
脳梗塞や腫瘍などの構造的異常を迅速に評価します。
2. 頭部MRI
脳幹部や眼窩周囲の詳細な構造を観察し、多発性硬化症などの炎症性疾患も評価可能です。
(5)電気生理学的検査
1. 反復刺激試験
短い間隔で電気刺激を繰り返し与え、筋肉の電気的反応を測定します。MG患者さんでは刺激を繰り返すと反応が徐々に小さくなります(漸減現象:Waning)。
2. 単線維筋電図(Single-fiber electromyography:SFEMG)
同一運動単位に属する1〜2個の筋活動電位を記録し、神経筋伝達の機能を評価します。MG患者さんでは、終板電位の発生からシナプス後膜の活動電位発生までの時間的揺らぎ(jitter値)が異常高値となります。
(6)血液検査
1. 自己抗体検査
アセチルコリン受容体(AChR)に対する自己抗体や筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体を測定し、重症筋無力症の診断に役立ちます。
2. 甲状腺機能検査
甲状腺眼症の可能性を評価します。
3. 血糖値検査
糖尿病性眼筋麻痺の可能性を確認します。
(7)特殊検査
1. 複像検査
両眼の視線のずれを定量的に評価します。
2. 塩酸エドロホウム(テンシロン)試験
コリンエステラーゼ(ChE)阻害薬である塩酸エドロホニウムを静脈内投与し、症状の改善を観察します。短時間作用性のため、急速に症状が改善し、その後再び悪化する様子を確認できます。重症筋無力症の診断に用いられます。
これらの検査結果を総合的に判断し、眼筋麻痺の原因疾患を特定します。適切な診断のためには、神経内科医や眼科医による専門的な評価が重要です。
配信: Medical DOC