むし歯は初期段階では自覚症状が乏しく、気付いたときには進行していることが多いです。そのため、治療期間が長くなることが少なくありません。
むし歯治療の期間が長引くと、なぜそこまで時間がかかるのか気になったこともあるでしょう。
この記事ではむし歯の治療期間を進行度合い別に解説します。さらに治療が長くなる理由や治療期間を短くする方法についてもあわせて解説しますのでぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
むし歯の治療期間の目安
むし歯の治療期間の目安はむし歯の進行度で1日〜1ヶ月程度と大きく変わってきます。むし歯の段階は以下のとおりです。
初期むし歯
エナメル質まで達した場合
象牙質まで達した場合
神経まで進行した場合
根管まで進行した場合
治療期間の目安のほかになぜその期間が必要なのかを説明し、段階ごとのむし歯治療の方法を解説します。
初期むし歯
初期むし歯の治療期間は1日です。
初期むし歯はまだ歯に穴が開いていない場合や、歯の表面が白くなったような状態のむし歯です。
治療方法はプラークを溜めないようにお掃除して、フッ化物などを活用して再石灰化させるために有効な薬剤を塗ることを行います。
薬剤を機能させるためには毎日の歯のお手入れが重要です。歯に穴が開く前にむし歯治療ができるため、歯を失うことはありません。
定期的な検診を受けていれば、初期段階で治療ができることが少なくないでしょう。
エナメル質に達した場合
エナメル質に達した場合のむし歯の場合も、治療は1日で終わることも少なくありません。
エナメル質まで達したときは歯が黒っぽくなってきますが自覚症状がまだない状態です。
治療方法は薬剤を使用しての自然治癒の可能性はないため、歯を削る必要が出てきます。
削る範囲は、エナメル質が歯の外側の組織のため、削る範囲もごくわずかな範囲で済みます。
削った部分にレジンと呼ばれる合成樹脂を詰めて治療の終了です。
象牙質に達した場合
象牙質に達した場合のむし歯治療の期間の目安は被せ物を作る場合は2回の通院が必要になりますが、レジンで詰めて終了することもあるので、この場合は1日で終わります。
象牙質まで達したむし歯のインレー修復の場合、CADやセラミックは口腔内スキャナーとミリングマシンを使用して作製する場合は1日で治療を終えることが可能です。
症状は痛みと甘いもの・冷たいものがしみること、また、むし歯の穴に食べ物が詰まりやすくなることもあります。
被せものを作る場合の治療方法は、まず細菌の入っている部分を削って除去し、被せ物の型を取ります。
金属やセラミックなどで作られた被せ物を詰めて治療完了です。
神経まで進行した場合
むし歯が神経まで進行した場合の治療期間の目安は1ヶ月〜2ヶ月です。
治療方法はむし歯によって神経が細菌に感染することや、壊死することがあったときに行う根管治療が適用されます。
根管治療とは歯の神経を抜く治療のことです。歯髄だけではなく歯髄の周りにある感染した象牙質も含めて削り取ります。
このとき、削り取った穴のなかに残っている細菌をできるだけ消毒し、新しく細菌が入らないようにすることが大切です。
根管治療では、歯にゴムのマスクを装着して治療を行います。
ゴムのマスクをした状態で根管の拡大・清掃・洗浄を行い、ガッタパーチャと呼ばれる詰め物で根管内を封鎖して細菌が入らないようにします。
治療にかかる通院の回数の目安は根管治療に3〜5回、被せ物などの調整に2〜3回の通院が必要なため治療期間が長くなる傾向です。
根管まで進行した場合
むし歯が根管まで進行した場合の治療期間の目安は1ヶ月〜半年です。治療方法は根管治療か抜歯の2種類あります。
根管まで進行した場合、歯髄が死んでいるため痛みはなく、歯そのものがほとんど死んでいる状態です。
さらに、骨まで炎症が進行すると歯茎から膿が出たり、強い痛みを感じたりすることがある根尖性歯周炎になっている場合もあります。
根管や骨まで進行したむし歯でも根管治療が可能な場合があります。
それは歯の一部でも残せると医師が判断したときのみです。
歯を残せないと判断したときは抜歯になります。抜歯は表面と歯の周りに麻酔をして痛みを感じないようにしてから行います。
抜歯後は入れ歯やブリッジ、インプラントの治療が必要です。
抜歯したまま歯がない状態にしておくと全体の噛み合わせが崩れ、顎の骨も痩せることがあるので、早めに次の治療を行いましょう。
むし歯の治療期間が長くなる理由
むし歯の治療期間が長くなる理由は以下の3つです。
進行状況で治療内容が変わるため
段階的に治療を進めるため
全体のバランスを考えながら治療するため
治療期間が長くなる理由を理解して治療に臨ましょう。
進行状況で治療内容が変わるため
治療期間はむし歯の進行状態で大きく変わります。削る必要がない、または削る範囲が少ない初期段階のむし歯治療は1日で完了することが多いでしょう。
この場合は、削らず経過観察や薬剤を塗り再石灰化を促すこともあります。
象牙質まで進行したむし歯の治療には、2回の通院が必要です。歯を削って型を取り、完成した型を詰めて治療が終了します。
神経まで進行したむし歯の治療には5〜8回の通院が必要です。まずむし歯となった部分を削り歯髄を取り出していきます。
その後、消毒をして仮の詰め物を入れる工程を2〜3回行い、細菌の量を少しずつ減らしていくために定期的に通うことが必要です。
根管に詰め物を入れて被せもので細菌が侵入しないようにするため治療期間が長くなります。
根管まで進行したむし歯で抜歯する場合は、少なくとも抜歯の前後ケアを含めて3回の通院が必要です。
抜歯後の治療である入れ歯や、ブリッジ・インプラントの治療を行う必要があるので期間が特に長くなります。
このように、むし歯が進行している程治療の手順が多くなるので治療期間が長くなる傾向です。
段階的に治療を進めるため
むし歯治療は段階的に治療を進めます。
例えば、神経までむし歯が進行した場合は細菌に侵された歯と神経を取り除き消毒して仮の詰め物を詰めるので1回、その後根管のなかの洗浄と消毒を数回繰り返し細菌を取り除いていきます。
最後に詰め物と被せものを装着して治療は終了です。
このように、むし歯の治療はむし歯の除去・清掃・消毒など段階ごとに治療日をわけて行うため、治療期間が長くなります。
保険治療による制約があるため
むし歯の保険治療にはいくつかの制約があります。治療法や薬剤・材料については厳密に規定されていますが、1回あたりの治療時間は保険によって決まっているわけではありません。そのため、治療にかける時間については、各歯科医院の経営方針により異なる場合があります。
保険治療の制約はたくさんの人に平等に医療を提供するためです。
保険治療では、診断の根拠や治療の経過が見えるように記録することが義務付けられています。
そのため治療の段階ごとに経過観察の期間を設ける必要があります。経過観察がひとつの治療ごとに必要になってくるために、むし歯の治療期間が長くなる傾向です。
全体のバランスを考えながら治療するため
口腔内のバランスは、上下の噛み合わせや隣り合った歯の状態によって保たれています。
むし歯が見つかった場合には、全体のバランスを崩さないように治療を進めなければなりません。
1度に複数のむし歯の治療を行うと全体のバランスが変化してしまい噛み合わせが悪くなる可能性があります。
噛み合わせが悪くなると、上下の歯の接触点が減少するので、咀嚼の効率が低下して一部の歯に負担が集中します。
リスクを回避するために1本ずつ治療して経過観察を行い問題がないか確認が必要です。
配信: Medical DOC