「白内障手術」の費用や術後にやってはいけないことはご存知ですか?【医師監修】

「白内障手術」の費用や術後にやってはいけないことはご存知ですか?【医師監修】

白内障は、カメラのレンズの役割をする眼の水晶体が、濁って見えにくくなる病気です。ほとんどが加齢に伴って発症するため、誰にでも起こる可能性があります。

しかし、短時間の手術で改善できるため、手術を受ける方が増えている病気です。本記事では白内障の手術に関して、手術の手順や使用するレンズの種類・費用・術後の注意点を解説します。

何となく視界がぼやけると感じる方は、白内障の可能性があります。白内障が心配な方は、参考にしていただければ幸いです。

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監修医師:
柳 靖雄(医師)

東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

白内障手術の流れとレンズの選び方

白内障手術の方法にはどのようなものがありますか?

白内障手術は大まかにいえば、濁った水晶体を取り出し、水晶体の代わりとなるアクリルなどでできたレンズを入れる治療法です。
取り出し方にいくつかの種類があり、通常は水晶体を超音波で細かく砕いて吸い出す超音波乳化吸引術で行われます。切開創が2~3mmと小さく、縫合せずに自然に癒着する治療方法です。
加齢の影響で水晶体が硬い場合や、水晶体の支持組織が弱い場合は、大きく切開して水晶体を丸ごと取り出します。水晶体を包む膜を残して、核と皮質を摘出する手術が水晶体嚢外摘出術で、膜も含めて全部摘出するのが水晶体嚢内摘出術です。手術方法は通常、事前に決めますが、手術中に変更することもあります。

白内障手術の流れを教えてください。

白内障手術を日帰りで行う場合で解説します。手術が決まったら、おおむね1~2週間前までに術前検査や説明を受け、当日は指定された時間までに受診します。通常は手術後は翌日まで眼帯が外せないため、手術当日は(タクシーか家族の)送迎が必要になることが多いです。手術の流れは以下のとおりです。

洗顔と消毒

麻酔

切開

水晶体を破砕して吸引

眼内レンズを挿入

眼帯で覆って終了

このような流れで、手術自体は15分前後で終わります。手術室に入ってから出てくるまでは30〜40分程度で、院内での滞在は2~3時間でしょう。翌日は経過観察で通院し、その後は医師の指示どおりの通院です。化粧・洗顔・洗髪・入浴は医師の許可が出るまで控えます。点眼・眼帯も医師の指示に従います。

眼内レンズはどのように選ぶのがよいですか?

水晶体を除去した後に、やわらかいアクリルやシリコン素材の眼内レンズ(人工水晶体)を入れます。眼内レンズは、ピントが合う焦点の数によって種類があり、標準的なものは焦点が一つの単焦点レンズです。読書など近くを見る機会が多い方は近焦点レンズを、運転などが多い方は遠焦点レンズを選び、ピントが合わない部分はメガネやコンタクトレンズで補います。
メガネを使用したくない方は、広範囲にピントが合う多焦点レンズを選ぶとよいでしょう。このレンズだと遠くも近くもピントが合いやすいため、メガネをかける頻度が低くなります。ただし、メガネが不要になる一方で、見え方の鮮明さが低下する可能性があります。レンズを選ぶ際には事前に医師の説明を聞いて相談のうえ決めます。また、周囲に経験者がいれば感想を聞くのも有益でしょう。

白内障手術に痛みはありますか?

白内障の手術では、痛みはほとんど感じなかったと答える患者さんが大半です。事前に点眼による局所麻酔をかけて手術するので、意識は正常でも痛みの神経は麻痺しています。
術中の痛みはほとんど感じませんが、終わった後に痛みを感じる場合はあります。そのときのために痛み止めが処方されるので、痛くて眠れないようなことはまずないでしょう。翌日以降に痛みが出ることはほとんどありません。ただし、数日間はゴロゴロ・チクチクとした異物感を覚えることがありますが、自然に収まります。

白内障手術には入院が必要ですか?

入院は必須ではありません。一般的には日帰りで行われる手術ですが、総合病院などでは日帰りと入院のどちらかを選べる場合があります。基本的に健康な方であれば、日帰りで問題のない手術です。
ただ基礎疾患があって合併症リスクが高い方や、高齢で単独行動が不安な方、ご自身が不安で入院を希望する方などは入院した方が安心できます。入院するかどうかは手術前に医師と相談して決めます。入院設備がないクリニックであれば、総合病院を紹介してもらえるでしょう。

合併症のリスクについて教えてください。

白内障手術によっておこる合併症にはさまざまな症状があります。主なものは以下のとおりです。

感染性術後眼内炎

前囊収縮

眼内レンズの偏位・脱臼

眼内レンズ混濁

後発白内障

感染性術後眼内炎は、手術部位が細菌に感染して組織が壊れる症状で、対応が遅れると失明のリスクがあります。感染予防が大切で、注意事項を守り異常を感じたらすぐに手術を受けた医療機関を受診しましょう。
前嚢収縮は手術時に切開した前嚢部分が線維化して白濁した症状で、レーザー治療で治せます。眼内レンズ偏位・脱臼は固定がうまくいかずズレが生じた状態で、再手術での対応です。眼内レンズ混濁はカルシウムの沈着などで発生し、レンズ交換で対応します。後発白内障は残った水晶体上皮細胞が増殖して白濁したもので、レーザーで切開します。

白内障手術について

白内障手術の費用はどのくらいですか?

白内障の手術費用は、使用する眼内レンズが単焦点か多焦点かで変わります。また、日帰りと入院でも変わってきます。単焦点レンズの場合の費用は以下のとおりです。

日帰りで単焦点レンズ使用:約150,000~160,000円(税込)

入院で単焦点レンズ使用:約230,000~250,000円(税込)

個人負担額は上記費用に負担割合(1~3割)をかけた金額になります。
多焦点レンズの場合は選定療養が適用され、手術費用は保険適用になり、多焦点レンズにかかる費用は自由診療で自己負担です。金額は単焦点レンズの手術費用に、多焦点レンズ代を足した金額になります。
レンズ代はレンズの種類や各医療機関によって異なりますが、おおむね200,000〜300,000円(税込)です。

白内障手術は健康保険が適用されますか?

単焦点レンズを使った白内障手術は健康保険が適用されます。日帰り手術では費用の約150,000円(税込)の1~3割負担で、約15,000円(税込)から約45,000円(税込)が自己負担額です。多焦点レンズの場合、選定療養となるため、手術費用のみに保険が適用されます。
レンズ代やそれにかかる検査代は自由診療になり、全額が自己負担になります。レンズの費用は種類や医療機関によってまちまちです。

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